第7話 お客様?
今日は日曜日。
朝ご飯も食べ終わり、僕とマリアさんは居間でテレビをみながらだらだらしています。
ちなみにレンちゃんとポチさんは、ご飯を食べるとすぐにおじいちゃんと一緒に地下にある研究室へ行ってしまいました。
僕はレンちゃんがおじいちゃんに変なことをされていないか気が気でなりません。
…よし、やっぱり見に行こう。 もし何かあったら大変だ! 僕があの変態をとっちめてやる!
僕は自分に気合いを入れて、研究室に行こうといざ立ち上がると、それと同時に玄関のチャイムが鳴りました。
あれ、お客さんかな?
「はぁ〜い」
僕は目的地を変更し、玄関へむかいます。
ドアを開けると、そこにはクラスメートが二人、立っていました。
「よぉ」
「アキヒトにヒロト!? どーしたの急に?」
「どーしたじゃないだろ。 お前が呼んだんじゃねーか」
「そーだっけ?」
「そーだよ〜。 コウジがおととい学校で、ひまだから遊ぼうってー」
このおっとりした喋り方をするのは、菅間 大翔。 身長が180もある大男で、性格は穏やか。 アキヒトにはよく、とろいって言われている。
二人の印象を一言で言うと、アキヒトがツンツン、ヒロトがおっとり。
僕たちは同じクラスで、よく三人で遊んでいます。
「ってことだから邪魔するぞ」
アキヒトはそう言って家に入ってきます。
僕は体をどけて、二人を招きいれようとして、
「いらっしゃ… ったらだめ!!」
「はぁ?」
すぐに二人の前に体を戻し、とおせんぼをします。
「ちょっと待って! ぇっと… 今部屋に変な人がいて入れないんだよ!」
なんて苦しい言い訳なんだ…!?
でもしかたありません。 今家の中に入られる訳にはいかないのです。 だって僕の家にはマリアさんがいるんだからっ! さいわいにも、レンちゃんとポチさんは研究室に行っていますが、いつ上に上がってくるかわかりません。
「何言ってんだお前?」
「いや、本当なんだよ? 朝起きたらね、部屋の真ん中に半透明のおばぁさんが正座してて、僕が何を言っても聞いてくれないんだよ」
「お前それ、やばくないか?」
「そ、そーなんだよ! めちゃくちゃやばくて…」
ぁあよかった。 まさかこんなのが通用するとは一
「ってんな訳ねぇだろッ!!」
「あッ!?」
気を抜いた瞬間、アキヒトは僕の間をすりぬけ、家へ入って行ってしまいました。
しまった!? 罠だったのか!!
「ま、待ったぁぁ!!」
僕は慌ててあとを追いかけます。
「あ、カギ閉めとくよー」
後ろでヒロトが何か言いましたが、今はそれどころではありません。
「おらぁ!」
アキヒトは勢いよく二階にある僕の部屋のドアを開きます。
「もう! 急に入らないでよ」
僕もすぐに追い付き、部屋に入ります。
よかった。 誰とも会わなかった…
「なんだよ、別になんにもねーじゃん」
つまらなそうに部屋を見回すアキヒトを横目に、僕は今にも破裂してしまいそうなくらいバクバクの心臓をおさえ、おちつくために深呼吸をします。
「ぁ、あれぇ、おばぁさんどこかに行っちゃったのかな〜」
なんとか平静を装います。
「まだ言ってんのかよ」
「まーコウジにだって隠し事の一つや二つくらいあるよー」
そう言って、ヒロトがのしのしと部屋に入って来ました。
しまった!? ヒロトのこと忘れてた!
「ヒ、ヒロト? ここにくるまでに変なものとか見てないよね?」
「変なもの? んー そういえば壁のところに人の顔に見えるシミが一」
「あぁ、もういいよ…」
ふぅ… 体に悪いよこれ…
「ちょっとジュースとってくるから待ってて」
僕はそう言って部屋を出ます。 向かう先はもちろん居間です。
居間のドアを開けると、中ではマリアさんがテレビの真ん前に座り、熱心にドラマを見ているところでした。
「マリアさん」
「あ、コウジさん。どうかしましたか?」
「実は今、僕の部屋に友達が来てるんですけど…」
僕がそこまで言うと、マリアさんはにこっと微笑み、
「ふふ、そーゆーことでしたら大丈夫ですよ。 おとなしくここで待ってますので、コウジさんはお友達と楽しんできてください」
なんてことを言うのです。
僕はその『うふふ、私は全部わかってるのよ?』な、お姉さんオーラに少し圧倒されてしまいます。
「じ、じゃあお願いします!」
僕は〈バタン!〉と勢いよくドアを閉めました。
な、なんなんですかあれは!? あのキラキラの笑顔!! もう核兵器です!! くそぅ! 思春期真っ只中の僕には刺激が強すぎるぅ!!
落ち着けぇぇい!! 落ち着くんだ僕!! こんなにぎらぎらした目を誰かに見られるわけには一
「コウジ〜?」
「一ッ!?」
突然名前を呼ばれ、僕は飛び上がります。
「な、ど、どーしたの!?」
振り返るとヒロトがぼーっと立っていました。
「トイレどこだっけ〜」
「ぁあ、トイレね。 トイレはそこだから。 先に上あがってるからね」
「りょーかい〜」
僕はヒロトに背を向け、階段を上がりながらバクバクしている心臓を落ち着かせます。
ドアを開けると、アキヒトが部屋の真ん中で大の字に寝転んでマンガを読んでいました。
「…なにしてんのアキヒト」
「ジュース」
「へ?」
「ジュースはって? 取りに行ったんじゃなかったのか?」
「ぁ、忘れてた」
「役に立たねぇなぁ」
「ごめんごめん」
僕はかるく頭をかきながら座ります。
「ただいま〜」
「ぁ、おかえりヒロト」
そしてヒロトも帰ってきて、僕たちはだらだらと時間をすごしました。
「あ、そーいえばさー」
テレビを見ていたヒロトが、急に話かけてきます。
「ん?」
「コウジってペット飼ってたんだね〜。 全然知らなかったよ〜」
「…へ?」
ぺっと? なんのはなしだろ。
「ほら、銀色の大型犬〜」
…ギンイロノオオガタケン?
「かっこいいねあれ、なんて犬種なんだろ」
「ヒロト! そ、その犬ってどこで見たの!?」
「え? さっき一階にいたよー」
…ナンテコッタイ