第1話 大発明?
〈キーーン〉
ん…なんだ?
夜中の3時。
僕はどこかから聞こえてくる金属音で目を覚ましました。
あぁ、おじいちゃんか。 こんな時間に何してるんだろ。
おじいちゃんは発明家で、いつもくだらない物を作っている。(この前は動けない自称二足歩行ロボットなる物を作ってたな)。
僕はおじいちゃんと2人暮しをしています。
ちなみに両親は、僕が1歳の時に育てるのがめんどくさいとか言って僕をおじいちゃんに預けたまま帰ってこないらしいです。
〈キーン〉
にしてもうるさいな… これじゃ寝れないよ。
僕は金属音のせいで寝れなかったので、地下にある研究室に文句を言いに行くことにしました。
階段を降りて、鉄でできた研究室の扉の前まできた僕はここで一度深呼吸。 …まぁ特に意味はありません。
深呼吸も終わり、扉を開けて研究室に入ると、白衣を着たカッパ、もといおじいちゃんが部屋の真ん中で大きな機械をいじっていました。
ちなみに研究室はそれなりに広いです。 25mプールくらいあるかな?
僕は一生懸命機械をいじってるおじいちゃんの近くまで行き、声をかけました。
「今度は何を作ってるの?」
するとおじいちゃんはこちらに振り向き。
「おおコウジか、見ろ! ワシの最高傑作じゃ! ちょうど今完成した所でな」
そのセリフを聞くのは今のでちょうど47回目だよ? 結局全部くだらない物ばかりだけど。
あ、自己紹介がまだでしたね。
僕の名前は、坂井 光司 16歳で近くの公立の高校に通うぴちぴちの一年生です。
「どうせまた何の役にもたたない機械なんでしょ?」
「何を言うか! ワシが一度でもくだらない発明をした事があったか!?」
うん。 発明の9割がくだらない。
そろそろボケたかな?
「じゃあこの前作った【衣類が透けるメガネ】はくだらなくないの?」
「アレは失敗じゃ、衣類どころか体まで透けてしもぅて何も見えん。」
こんの変態め… 何を自信満々に答えてるんですか!?
これはもう老人ホームに世話を任せるより刑務所に行った方がいいのかな?
警察呼ぶのは110番でよかったっけ?
「じゃが今度の発明はすごいぞ! 異世界とこの世界をつなげる事ができるんじゃ」
「異世界!?」
「そうじゃ、この世には今ワシたちがいるのとは別の世界がいくつも存在していて一」
「わかった! もうわかったから……とりあえず、病院行こ?」
俺はとても優しい目で語りかけます。
夢物語をマジ顔で語っているハゲた老人の姿は、それはもう見ていて辛かったから…
「信じとらんな!?」
「信じれる訳ないじゃないか… まぁ100歩ゆずって異世界ってのがあったとして、その異世界とこの世界をつなげるなんて事ほんとにできるの?」
「うむ。 すごいじゃろ? 見直した?」
これでもかと言わんばかりに自慢げな顔で近寄ってくる変態。
うわ〜 コイツなんか腹たつわぁ〜。
とりあえずうざいじじいは無視して、話を次に進めます。
「それで、これがその機械?」
研究室の真ん中には大きい円形の台があり、そしてその周りにも変な機械がいっぱい置いてあります。
「うむ。明日にでも実験をするつもりじゃ」
「へぇ〜」
円形の台の上にのぼり、上を歩いていると視界の端にチラリとある物が見えてしまいました。
そう、それは丸くて赤くて…押したら核ミサイルでも飛んで行きそうな感じのボタン。
お… 押したい…!
僕はボタンのそばまで行き、震える手でそれを指さしながらおじいちゃんにたずねました。
「こ、このボタン…押していい?」
「何を言っとるんじゃ、まだ調整も出来とらんのに一」
〈ポチ〉
「あぁああぁあ!! 何しとるんじゃぁぁぁ!!!」
気がつくと僕はボタンを押してしまっていました。 まぁ…しかたないですよね、これは。 あんなボタン押すなってほうが無理ですよね…。
〈ブオォォォン〉
すると円形の台の周りに置いてある色んな機械が変な音をだし、台の中心にもやもやしたオーロラみたいなものがあらわれた。
「なんだこれ!?」
「ぉおぉ落ちっ落ち着くんじゃ、危にゃいから早く台からおりなしゃい!」
「お前が落ち着け!」
てかどーなってんのこれ!? すごい恐いんだけど!?
「おじいちゃん! これどーなって一 おじいちゃん? おい! 気絶してる場合じゃないですよ!? 起きろぉぉ!!」
間の悪いことに、おじいちゃんは白目をむいて痙攣しています。 …本気で逝ってしまいそうな勢いです。
そーこーしている間に、台の中心にはどんどん光が集まっていきます。 もうまぶしくて直視できなくなってきました。
「と、とにかく逃げ一」
光から逃げようとした瞬間、〈シュワッ〉っといって光が爆発し、僕は爆風で台から5mくらいのところまで吹き飛ばされてしまいました。
「ぃってぇ…」
いったいなにがどーなったんだ!?
と、とにかくここから脱出しないと!
僕は痛む体でなんとか立ち上がり、研究室の扉に歩きだそうとしたとき、〈シュッ〉っと台の方から何かがすごいスピードでとんできました。
「ぅわ!?」
気付いたころにはもう遅く、その『何か』は視界から消えており、代わりに腹部に激しい衝撃が一
「ガハァッ!」
腹部になにかが直撃し、僕はその勢いでさらに後ろに吹き飛ばされます。
そして台から飛んできた『何か』は、僕をクッションにして、さっきまで僕がいた場所に着地したようです。
僕はまるで人形のように力無く〈ドサッ〉と床にたたき付けられます。
く… 苦しい… 肺がぁ… 息が、できない…
息ができずに苦しんでいると、さっきの台から飛んできた『何か』が、さわぎながら僕のところに駆け寄ってきました。
「す、すいません! 大丈夫ですか!?」
その『何か』は、うつぶせに倒れた僕の横にしゃがみこみ、声をかけてきます。
…声? あれ… 人!?
恐る恐る顔を上げてみると、そこには綺麗な空色の髪を持つ、まるで天使のような… 否! そう、そこには天使がいたのです! だけど羽もなければワッカもない、でもそんなこと関係ありません。 身につけている服は見たこともない変わった衣装ですし、何より美しい! 天使です! とうとう天使が来たのです!!
いや、まってください、天使が来たってことは…
「…お迎え、ですか?」
「へ?」
「僕、死んだんですか!?」
「ぇ? あの一」
「ハハ…死んだのかぁ… 短い人生だったなぁ…」
なぜかどんどん気が遠くなっていきます。
「ち、違いますよ! しっかりしてください!」
テンパりながら僕の肩をもってガクガクする天使。
ガクガク
ガクガク
ガクガク
「…ぉえ」
気持ち悪…
「目が覚めましたか?」
天使が甘い声でささやきます。
あれ、僕はいったい何を…
てゆーか…
「誰!?」
「ぁ、申し遅れました。 私はマリアと申します。 マリアって呼んでください!」
そのまんまじゃん…
なんて心の中でひそかにツッコミつつ、周りを見渡すと研究室の隅の方で見覚えのあるハゲ頭がみえました。
「ぉ、おじいちゃん大丈夫!?」
僕は倒れているおじいちゃんに駆け寄ります。
「ぅぅ…」
よかった、なんとか生きてる。 さすがに今度ばかりは死んだかと思いました。
とりあえずおじいちゃんを起こして事情を説明してもらわないと。
「おじいちゃん、早く起き一」
「危ない!!」
「え?」
後ろからさっきのマリアって人の叫び声が聞こえたのと同時に、僕は何かに持ち上げられました。
「ぅわわっ! なんだ!?」
「気をつけてください!スライムです!!」
スラ…ぇ? ナンダッテ?
もう訳がわからなくなってきました。 爆発する研究室に突然現れた美少女、おまけにスライム? なんですかそれ?
「早く逃げてください!」
逃げろって言われても…
僕は今空中で見えない何かに宙づりにされています。 ここでいくらもがいたところで、どーにもなりません。
「くそ! こいつの姿さえ見えれば…」
「コウジ! これを使え!」
そう言っていつの間にか復活したおじいちゃんは僕にゴーグルのような物を投げました。
「ありがとう! ってぁあ!? これは【衣類が透けるめがね】!?」
なんということでしょう、こんな非常事態にも関わらず、あのクソジジイは僕にこんなにも下品なものを………
衣類が透けるのか… 失敗作って言ってたけど、もしかしたらってのもあったりして…
僕はさっきの天使の居場所を確認し、無言でそれを装着します。
「…チッ」
やっぱりおじいちゃんの言った通り、衣類も肉体も透けていて、天使がいるはずのそこには何も見えません。
「何しとるんじゃ! 後ろじゃ後ろ!」
このめがねのせいで姿は見えませんが、下の方からおじいちゃんの叫び声が聞こえます。
「後ろ?」
恐る恐る後ろを振り向くとそこには一
「ぅわあ!? な、なんだこれ!?」
水色で半透明のぷるぷるした… そう、スライムがいたのです。 しかし僕の知っているスライムとは大きさが違いすぎます! それに形もふにゃふにゃとしていてなんだか気持ち悪いです。
僕はお腹に巻き付いた腕(触角?)のようなものをなんとかほどこうとしましたが、すごい力でしめつけているらしく、全くほどけません。
ちなみに腕もぷるぷるなので力が強くても苦しくはありません。
「くそ、離れない!」
「コウジ! 受け取るんじゃぁぁ!」
ゴーグルをずらし、おじいちゃんの方をみるとおじいちゃんは僕に向かって少し大きめの剣を投げようとしています。
よかった、これで助か一
「らない!? 待って! そんなの受け取れないよ! 死ぬ! 死んじゃう!」
しかし時すでに遅し、僕が叫んだころにはおじいちゃんはもう剣を投げ終わっていました。
「うわぁぁああ!!」
ブンブン回りながら迫ってくる剣から逃れようと、必死に暴れます。
ところが、何があったのか剣は僕から少し軌道をずらし、ちょうど僕をつかんでいるスライムの腕を切り落としたのです。
き、奇跡だ!
「ぅわぁぁ!!」
一瞬の浮遊感、そしてすぐに体中に走る衝撃。 僕は本日二回目となる地面へのダイブをはたしました。
「ってて…」
全身が痛みます。 しかし今はそんなことを気にしている場合ではありません。
僕はすぐに立ち上がり、ダッシュでスライムから離れます。
「ぁ…」
後ろを振り返ると、おじいちゃんが怒ったスライムに飲み込まれようとしているところでした。
「コ、コウジ! 助けてくれ!」
何か聞こえる気がしますが、たぶん気のせいでしょう。
とにかく早くここから出ないと。
「大丈夫ですか!?」
動きだそうとした瞬間、マリアさんが声をかけてきました。
振り向くと、なぜかマリアさんの後ろにはマリアさんと同じ空色の髪でショートカットの女の子が立っていました。
「大丈夫ですけど… その子は?」
「あ、この子は私の妹のレンです。 やっぱりこの子もこっちにきてたみたいですね」
「こっち?」
妹ね〜 それよりこの人はなんでここにいるんだろう? こっちってなんのこと?
ってそんなことを考えてる場合ではありません!
「今のうちに早く逃げましょう!」
「え、でもいいんですか? アレ」
マリアさんはスライムに体の半分を飲み込まれたおじいちゃんを指差します。
確かに少しやば一
「ぉぉおぉお〜 ぷるぷるじゃぁ〜 気持ちええのぉ〜」
くないな。 あの変態め!
「いいんです! さ、行きましょう!」
少しでも心配した僕が愚かでした。
僕たちは変態とスライムを研究室に残し、みごと脱出に成功しました。
研究室の扉の外。
「コウジー! たす、たすけゴボボボ一」
「あの一」
「いいんだ、ほっておいてあげよう」
このとき、僕はまだ大切なことに気付いていなかった一
コウジ「…え? 何!? あの最後の終わり方!?」
作者「まぁ気にするな」
コ「気になるよ! なんなの! 僕はいったい何に気付いてなかったの!?」
作「読者のみなさま、こんな小説を読んでいただいてありがとうございます」
コ「無視!?」
作「次も読んでいただけると嬉しく思います。 ではまた次のあとがきで会いましょう!」
コ「待って! 勝手に終わらないで! 気になるから!」
作「さよ〜なら〜」
コ「話を聞いてくれぇぇぇ!!」