メシアメジャートランクィライザー
短いよ!
クチャクチャクチャクチャクチャクチャクチャクチャ。
「うふふゅ!んん!ひゅひゅひゅ!」
指先を舐め回す舌の音と、繭樹のくぐもった笑い声。
「放せ・・・放せ・・・放して下さい。」
加えて要次の悲鳴が狂気の三重奏を奏でる。
パッと指を放される。
「うぁあ!!」
急いで指を引っ込めて、アルバムを引き抜く。
「びっくりした?ねぇ?気持ち良かったでしょう?」
「帰って下さい。帰って」
「聞いてんの?」
「帰って下さい。帰って下さい。」
繭樹は幾つか言葉を掛けてみたが帰って来る返事は無く、ブツブツと繰り返し何かを呟く声しか聞こえなかった。
「ちょっとおイタが過ぎたかな?ふふ・・・可愛い。」
繭樹はニンマリと笑い、ドアに背を向けて階段を降りて行った。
降り切った後、振り返って二階を見上げながら呟く。
「『次』までには治しといてね」
※
「うぅうううううううう!!」
薬の入った袋を掴み引っ張り出す薬を二錠出して水無しで飲んだ。
双肩を両手で抱き締め、膝に顔を埋める。呼吸を落ち着かせて一度水を飲む。
最低だ。今更過去の因縁が顔を出して来る。
「何でまた・・・こんなのって・・・・」
繭樹という女は彼の部活動の先輩だった。彼女は幽霊部員で滅多に顔を出さず、地味なイメージの人。
だがある日を境に要次をコソコソと尾け回し、部活動にも良く顔を出す様になった。
学校で後ろから視線を感じれば彼女が居て、写真を勝手に撮られて、気持ち悪い内容の手紙を沢山送られて、着替えを覗かれて、それで、それで、それで。
「うっ」
寒気が増す。嫌悪感がする。ゆっくり立ち上がり、水と一緒に薬を呑んで、呑んで。
「足りない」
最初は手を出す事にすら疑問を感じた薬。でも今はコレだけが彼の心が崩れ落ちるのを防いでいる。
要次は布団に潜り込む。虚ろな目が天井を仰ぐ。それから横になって、四肢を縮めて丸まった。
それから目を閉じて、動かなくなった。