激しく、緩やかにね(笑)
今から二年程前。
とある街の、或る中学校。
何の変哲も無く、ヘラヘラとした心が未熟で軽薄な生徒達が鰯の様に群れ
、群れの仲間外れを作る事に因って「友情」を確かめ合う何処にでもある光景。
飽々するような喧騒、煩い糞男子と糞女子の蛙鳴蝉噪。
そんな中にも必ず変わり者と謂う者は居るものだ。一人の少年がそうだった。
彼が変わり者と言わしめる理由は、何処のグループにもハッキリ入っていなかった所にあった。それだけならその辺の生徒達の中にも当て嵌まる奴は何人も居た。
でもそいつ等は何か意義が有ってそうなった訳では無い。間違った判断でも無い。
彼の場合は、付き合いのある友人達の種類に由るのだろうと思う。何せ彼の友人達は皆、鰯の群れの仲間外れだから。
そして私。私は、彼の事を隅からジッとジックリと見ていただけだ。私は俗に謂う「地味ーズ」。彼をずっと見ていた時、彼の事を、
「まるで漫画の主人公みたい」
って思った。そんな彼にも何か後ろめたい事が有るのでは無いか。とか思って個人的に調べ回った。何も隠してる事は無いと気付いた後、私は初恋のその人で頭が一杯になった。
※
そして時は現在へ。
「ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねェッ!!」
彼女は押し倒した初恋の相手に叫び続ける。
「私だよ!!忘れたの!?繭樹だよ!!君の事がぁ、大好きな!!」 初恋の相手、詰まり神崎要次の恐怖に染まった顔を見て口を裂ける程吊り上げる。
「ちょっと住むトコ変えてたから逃げられると思った!?ねぇ?どうなの?」
彼は空気を読んだのか首を縦にぶんぶんと振る。何て良い顔だ。食い付いて噛み千切ってやりたい。
そして笑顔を真顔に戻し、声を低くして
「残念でした。」
そして又ギリギリと音が鳴りそうな程口を吊り上げ眼をギョロリと開き、
「どんだけ手間掛けさせんの!?ふざけないでよ!!住所もゴミ捨て場もバイト先も全部全部全部調べ上げるの大変だったんだよ!?」
右手を振り上げ、要次の胸へ振り下ろす。
ドッ
「おえっ」
何度も、何度も、何度も。
「大変だったんだよ大変だったんだよ面倒臭かったんだよ!!未だあのノッポと付き合い続けてるし!彼奴どんだけ警戒してんのってレベルで」
「ちょっと・・・まゆきさん・・・何言ってんのか分かんない・・・」
「何でも無い。それ程手間掛けて探す価値が、君にはあるの!!」
ドンドンドンッ
これ以上は危ないと判断したのか、要次がもがき始めるのを見て、繭樹と呼ばれた女は腕を顔に向ける。
腕を突き出した瞬間、彼女の腕に激痛が走った。
ガチャガチャッ
「いぃっ!?」
市販の小型スタンガン。市販のスタンガンは相手を気絶させる程効果は無いが十分痛みは与えられる。
繭樹を突き飛ばし、部屋へ素早く逃げた。施錠もシッカリ。
「はっ、はっ、はっ、はっ、」
恐怖。ゾワリと悪寒が走る。顔も青いだろう。要次はその場にうずくまる。
ドンドンドンドンドンドンドンドン
激しくドアを叩く音。
「逃げたんですか!?逃げたんですね!!折角『食べれそう』だったのにぃ!!まぁ及第点です!」
くぐもった声がドア越しに伝わる。きっと気味の悪い笑みを浮かべたまま喋っているんだろう。
「ね、覚えてる?初めて君が私に気付いた時の事。自分が何も知らずに暮らしてた事を凄く後悔してたね。警戒心無さ過ぎだもんね。壁に押し付けられて、無理矢理キスされて、しかも相手は気にもして無かった地味でクズな先輩」
急に声が艶やかになり始める。
「言わないで・・・」
「私が君を隠し撮りした写真集見た時、泣いて吐いたもんね。もうアレ無くなったけど。」
「今までも君のゴミを漁って色んなモノを再利用させて貰ってた訳だけど。本当に『御世話になって』るよぉ」
気持ち悪い、気持ち悪い。
「うぇぇえ・・・え、え」
「アルバムの予備も残ってるけどね。」
「!?」
気持ち悪さが加速する。そんな物未だ有ったのか。
「アレ返しとく。」
「・・・・え?」
意外な言葉。
「君の残り香を吸って満足できる様になったし、何より」
「君に本格的にストーキング出来る様になった。だから必要無い。」
「うぇっ」
ロクでもない理由。吐きそうになる。て言うかソレを教えちゃって良いんだろうか。
「返し、返して下さいよ!!」
元から要次のモノでも無い。が、渡して貰えれば弱味は減る。
「ハイ」
郵便受けに物が落ちる音。即座に手を突っ込む。
「ッ!?」
その瞬間指先が外に無理矢理引っ張り出される。
ヌチャリ。
舌の感触。口に含んだのだろう。
指を。
「いやだっ!!止めて、止めろ!!」
クチャクチャクチャクチャクチャクチャクチャクチャクチャクチャ。
「止めろ・・・止めろ・・・」
クチャクチャクチャクチャクチャクチャクチャクチャクチャクチャクチャクチャクチャクチャクチャクチャクチャクチャクチャクチャクチャクチャ。
「ううう・・・うぅ」
うん…最近友達に「お前悪趣味」って言われた。