要次と漢女(おとめ)
ちょいBL要素入ります。
まあ主人公が男と恋愛する訳では無いですが。
彼がバイトを終えて、自宅に帰っている途中だった。時刻は七時。夕日の中、線路沿いの歩道を歩いている時、後ろから声が掛かった。
「よっさあああああん!!」
「へっ?」
聞き覚えのある声に思わず(恐る恐る)振り向いてしまう。彼が振り向いた先に、夕日に照らされ黒いセーラー服を着た少女。普通ならば男の場合「おぉう!?」と感嘆の声を漏らしてしまうような美貌の持ち主だが、要次の場合は真顔だった。
何故なら相手は男だからだ。
「久しぶりっっ!」セーラー服を着た彼、風季廉太郎はでけえ声で叫ぶ、そして笑う。「おひさ」と要次も笑う。
「久しぶり!」廉太郎は又言う。
「二回目だよ?」
「大事な事だからね!二回言ったんだっ!」
「確かにね。ホント久しぶりじゃん。」
それにしてもこの娘(区別の為『彼』とは呼ばない事とする)、ハイテンションである。
「学校楽しい?」と要次。
「楽しいよ!!友達も出来たし!要次はどうなのさ?」
「仕事が軌道に乗ってよ・・・暫くは生きて行けそうだぜ・・・(キリッ)」
「フフッ。あ、そうそう。」
「ちゃんと病院行ってる?」
「行ってるよ。大丈夫。」
「薬飲んでる?」
「・・・うん。」
「そっか。」
その後、要次と廉太郎は中学を卒業してから今日までの事を話す。
「バイトの店長がさ、スッゲエに○んちゅうの物真似が巧いんだ。」
「ずご いん だ ぉぉん」
「っ!?ウマッッ!?」
数分後
「それでね、僕さ」
「彼氏が出来たんだ。」
「・・・・・ヴん?」
要次は無論驚いた。彼は女装大好きで恋愛そっちのけどころか『そっち』だから恋人を見つけるのは難しいと思っていたからだ。
「おめでとう!ヒュー!妬けるね!」素直に祝福。
「えへへ・・・有難う!」彼女はにっこりと笑う。
嬉しそうで何より。
彼女はその後暫く歩きながら駄弁り、踏切の辺りで別れた。
「今度遊びに行くよ!」
「んん。気を付けてね。」
互いに背を向けて歩き出す。彼は何故か寒気を感じた。
嗚呼、コレは・・・後ろから誰か尾いて来てるな。嘗ての『被害者』は悟った。
買い物袋を肩に掛ける。
勢いよく走り出す。
後ろの『誰か』も走り出す。
向こうの方がよっぽど速い。直ぐに追い付かれて首根っこを捕まれる。要次は無理矢理振り向かされて、相手の顔を見る。
背の高い男だった。黒いダッフルコートを着ていて、細身。長髪が特徴的で、背丈だけで言えば東口より二センチ程小さい位かもしれない。しかも、イケメンである。その辺のアイドルみたいなもんでは無く、飾り気がない整った余計な添加物の無い顔。目の下にはうっすらとクマがあり、目が据わっている。
「・・・・俺の彼女と何してたの?」彼はそう問いかけてきた。
「え?」要次は直ぐには理解出来なかった。
「答えてよ。な?」彼は一切表情を変えず真顔で言う。
「一緒に帰ってました。」要次は理解した。
こいつ、れんたろうのかれしだ。
「君と廉はどういう関係だ?」
彼は要次の顔の左横にバンと手を突く。
「中学時代の友達です。」
「友達?恋人じゃなくて?」
今度は右横に手を突く。逃げられないな、と要次は思った。まあ元より逃げるつもりは無い。誤解を招く(っていうか招いてる)前にちゃんと話し合うつもりだ。
「僕は女の子が好きです。」
そう言って笑うと、彼は嘲笑と受け取ったのか、左足を大きく振りかぶる。
「廉とオレが男が好きだって事が可笑しいのか?」
そう言うと、彼は要次の予想を斜め上に、両足を上げて、要次の両サイドに突き出す。最早垂直の壁に対して四つん這いの姿勢。
色んな意味で恐怖を覚える。何がしたいの?つうか如何やってこの姿勢で壁に張り付いてんの?
だが要次は複雑な心境に負けず声を低くし、語気を強めて、
「だったら友達やってませんよ?」
と答弁した。すると彼氏君は一瞬キョトンとした表情を浮かべる。間も無く理解したのか、目を細めてニヤアと笑う。
「廉、君を心の友とか言ってたけど、まさしくそう言われるに値する子じゃないか。顔もよく見れば綺麗だ。」
彼は顔をヌッと近付けて来る。コイツ妖怪か。要次はあまり宜しい気分ではなくなったが、言葉を紡ぐ。
「アンタこそ、廉太郎を棄てないであげて下さいね。」
「棄てる訳無いだろう。それと、オレの名前は『アンタ』じゃあ無い。」
「逆茂木正博だ。」
彼氏君改め正博君は両手足を下ろして、右手を差し出す。
「オレとも友達になろうよ。神崎君。」
要次はその右手を握った。
「良いですよ。成りましょう。友達に。」
「おおっ?嬉しいねー。」
・・・ ちょっと面倒臭い友達が増えた要次であった。