学校
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛」要次と再開した翌日。彼の中学時代の親友であった東口雅美は、通学路を呻きながら歩いていた。
彼女は朝に弱いので、機嫌が悪いのだ。
特に昨日は久しぶりに要次に再開した事で極度の興奮状態だったのだ。
少しでも話せたのが嬉しかった。優しい口調も、中性的な声も変わっていなかった。
近い内に又会いたいなあ…とか思いつつ校門を潜った。靴箱で靴を履き替え、階段を駆け上がる。
ド ド ド ド
長身で背中まで黒い髪をストレートに伸ばした彼女が、その長い髪を振り乱しながら階段を全力で駆け上がる様はちょっとしたホラー。
登り終わった後は静かに歩いて行き、教室に入る。固まって話す女子グループの横を通り過ぎ椅子に座る。彼女もそこまで五月蝿く騒ぐタイプでは無い。彼女に気付いてニコニコしたツインテールの女子生徒とタレ目気味の女子生徒が近づいて来る。
「おはよーす」タレ目気味の女子生徒、北口が話しかける。
「よ」と東口。
「おはよう」ニコニコした女子生徒、西口も言う。
「ん。おはよう。」と東口。
「昨日の彼、可愛いかったなあ。」西口が言う。
「うんうん。落ち着いた感じで。」北口が賛同する。
「お前等にはやらんぞ」雅美が目をごしごし擦りながら返す。
「あれは私のもんだ。」
「ハハッ。手は出さないよ。て言うかモノて」西口が笑いながら言う。
「久々に話せてスゲー嬉しかった。」
「彼高校行ってない。何で?」北口が訪ねると、少しムッとした表情で、
「色々あったんだよ。」と返答する。
「詮索はしないどく」
雅美は背が180cm程あり、余り自分から口を開かないが、一部の男子から人気がある。
しかし彼女は要次にしか興味は無いのだった。
ホームルームが始まりそうだったので、未だ立って喋っている生徒達に一人の男子生徒が呼びかける。
「皆席に付け、ホームルーム始まるぞ!」如何にもスポーツ系といった外見の、滝川健人だった。
彼が一声放っただけで皆が直ぐ席に付く。彼はこのクラスのリーダー的存在だった。どんなヤツでも、彼の呼びかけに応える。
ホームルームが始まり、学校の一日が始まる。雅美は一人小さく欠伸をした。
時が過ぎ放課後。彼女は帰宅した自室で、チャット用のケータイアプリを使って、要次と話していた。
「元気か?」彼女が打ち込む。
「うん。まぁ元気。」
「薬ちゃんと飲んでるか?」
「うん。」
「東口さんも学校楽しい?」
「それなりだな」
彼と暫く話し、チャットを終えた。殆ど彼女の話しを要次が聞いてた様なものだったが。
やっぱり変わってない。昨日見た感じ、「あの日」から寸部違わぬ暗い雰囲気を纏っていた所も変わっていなかった。
彼は十分苦しんだ。今でも精神安定剤を服用しているようだ。高校に入った後彼の自宅に行ったが、彼は「家族に迷惑掛けるから」と出て行った後だった。あれからどれ程会いたかったことか。彼が彼女の最大の理解者だ。これ以上傷付かせる訳にはいかない。先ずは彼の住まいの位置を聞かねば。彼の家族は彼に頼まれたようで教えてくれなかった。だけど、私はお前の味方だ。
「私が彼奴を支えるんだ。」
彼奴は私の物だからな。
その頃、ある別の人物が彼を探し回っていた。
「うん!この辺で間違い無い!」
雅美と同じ高校のセーラー服を身に纏った彼女、いや、彼は呟いた。
「やっと、見つけた。心の友よ。」
色々動き出してます。ハイ。