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狸の夢  作者: つきね
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 こんな夢を見た。

 車の後部座席から、タヌキの残骸を見る夢だ。


 用水路の上を通るという時、僕は目の端に映った死骸にくぎ付けにされた。

 別に驚くようなものじゃなかったはずだった。自動車のはびこる現代においては普通のことで、ましてや田舎住まいの僕は何度も動物のそれを見てきた。車に轢かれてぐちゃぐちゃになっているなんてことざらにある。いつもなら、また死んでるな、その程度の出来事のはずだった。

 それなのに僕の視界は奪われた。まだそれは生きていたのだ。

肉の塊は自分の命を繋ぎとめようとするかのように、手を空にさまよわせていた。

僕は、遠ざかっていく道の端に転がったそれの方向を向いたまま、運転席の母にこう言った。

 「……狸、死んでたね……」

 母はため息をつき、かわいそうよね、と返した。


 腹が立った。

 それが普通の感想だということはわかっていた。でも僕の強い正義感はそれをよしとはしなかった。

 「狸は、狸は悪くないじゃないか!」

 気が付いたら怒鳴っていた。

 母はいぶかしげに僕を見つめた。どうして怒鳴ったのか、要領を得ないようだった。加えて……僕の目には、母は悲しみを訴えているようにも映った。


 母は、僕の言葉に同調を示した。が、その後にでも、と付け加え、


 「仕方がないじゃない」


 と、こういったのだ。

 その言葉を聞いた僕は―――この人の人間性を疑った。

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