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狸の夢  作者: つきね
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学校の生徒会誌に載せてもらったものです。


 こんな夢を見た。


 とても大きな黒い塊に、貫かれる夢だ。

 それは地面を打ち鳴らし、黄色い二つ目玉をこっちに向けて、突っ込んできた。

 僕はとっさのことに立ち止まってしまった。鼻先にそいつが迫ったときに感じた動機はきっと、恐怖そのものだったろう。僕は、貫かれた。

 全身に伝わる重い衝撃、骨が砕ける音、視界はぐるぐると回って自分がどうなっているのかを教えてくれない。やがて大地に叩きつけられ、潰された。

 自分の体があらぬ方向を向いている。腸もあたりに散っていた⋯⋯。


 それなのに僕は不安にならなかった。自分が貫かれる直前に感じた動悸は一体なんだったのか。夢とはいえ、死ぬかもしれないというのに、どうかしていると思う。


 虫の息の僕に、数匹の狸は駆け寄ってきた。

 狸は、喋った。

「────!────!」

 意識が朦朧とする中、なんといるのかわからなかった。ただ、泣いたり、僕を中心に歩き回ったりしているようで、寄ってきた狸一匹一匹が悲しんでいるようだ、ということだけは理解できた。

 そんな狸たちを見ても、僕はやっぱり不安にならない。それどころか、この身の上を受け入れてしまっているような気さえした。

「────!────!」

 彼らの声が、どんどん遠のいていく。そうして、僕の意識がぷつりと切れたとき───


 僕の目は覚めた。

 なんでこんな夢を見たのか、わけがわからなかった。今日一日この夢について考えてみようか、なんて思ったりしたが、朝ごはんの完成を伝える母の声が、僕にそれを放棄させた。

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