二話 富治兄
だが時と言う物はすごい。どんな辛い体験や記憶も洗い流してくれる。
いつの間にか勇と富治は昔の仲を取り返していった。
その仲を取り繕ったのがサバゲーだった。
サバゲーをするには電動ガン、いわば銃が必要だ。俺がサバゲーに参加するために電動ガンを整備しているのを見たとき富治は昔のことを懐かしみ自分からサバゲーをしたいと、言い出してきたのだ。
そこから二人は何回もサバゲーに参加していった。
今は二人とも本当の兄弟のような光景だ。だが、富治兄と言わないのはまだ打ち解けていないところもあるのだ。
本当なら行方不明の中で何があったのか聞きたいがそれで今の仲が途切れてしまいそうで怖かったからだ。
「勇、会場着いたぞ」
富治兄の声で目が覚めた。どうやら移動中に眠ってしまったようだ。
目を覚ましたとき富治兄はもう車から降り後ろの座席から装備を降ろしているところだった。
「分かったよ、富治叔父さん」
と俺は答えて後ろの荷物を降ろした。
山中に造られているフィールドで今回の定例会にはなんと500人以上が参加しているとの事だ。いつもは都会に暮らしている勇なので山の緑はとっても新鮮なものだった。
「こういう時は深呼吸だよな、すう~・・・は・・・」
「勇ーーー!おっはよーーー!」
吐き出そうと思った時にその息を唐突のことで喉に詰まらせてしまい悶絶していると向こうの受付のテントから全速力で駆けて来る女性がいた。
またあいつか!俺はそう思いつつ防御姿勢に入る。
相手はただの突進、此処は相手の動きに合わせてちょうどいい合間で左肩から体を丸め込み相手の体が自分の背中に乗るようにして相手の腹に左手の腕全体でを突き上げれば相手は勢い余って・・・後ろに倒れこむ!
俺はふっと息を吐いて呼吸を整える。その間実に0.5秒、頭の中は至ってクリア。それでも相手はぐんぐんと俺との間を狭めてくる。そして、奴は俺の合間に入った!
「会いたかったよー!勇ちゃ!?」
「ふん!」
俺はイメージ通り左肩から自分の体を相手の体に入り込ませ背中に乗せた。
完璧、まさに自分が描いたとおり相手の動き、自分の動きが合わさっている。
「貰った!」
俺は勝利宣言をし腕を突き上げたが、その腕は空を切った。
俺はそのことを受けいられなかった、倒すべき対象が消失しているのだ。何度も何度も自分の周りを確認した。もしかすると体を入れた時点でボディーブローが入り蹲っているのかと思ったからだ。いない!!
「まだまだ、だなあ!勇ちゃん!」
皮肉な事ながら俺の混乱はその対象物によって断ち切られた。
俺の腹には腕が更に肩の上にはさらさらとしたストレートの髪の毛がかかっていた。その髪の毛からはとてもいいシャンプーのいい匂いがフワッと匂った。それは勿論俺のではないし・・・じゃあ、誰のだ?俺の背中には無数の冷や汗が流れる。
俺の感情を読み取ったのか、奴はニヤリと笑った。いや実際には見えていないからそんな気がしただけだがそれでもはっきりと感じ取った。
そう言うとその対象物は手と足を器用に動かし頭を上へ、足を下へ動かしそのまま俺に腕挫十字固を仕掛けてきた。勿論空中でされたため一方に体重がかかりそのまま俺は倒れてしまった。
察しのいい人にはもう分かったかもしれないが・・・この対象物(女性)は腕の筋肉だけで逆立ちをし勇の後ろに隠れていたのだ。それは見つからないはずである。
「痛い!痛いから!」
『男がそんなに諦めるな!男なら意地を見せろ!』とか思う。
『男のプライドが許さない!そうだ!戦え!』と心の中では葛藤があるのかもしれない・・・『そうだ!それこそ男だ!』そう俺の心の中の教官みたいな人が語りかけてくる(※あくまで主人公のイメージです)
だが俺はそんなもの知らん!そんな格好のいい事を言えるの大抵超人だ。
「ギブ!ギブだから!離してくれ渚!」
「へっへ~ん!今日こそ勇ちゃんのカスタムM4使わせてよね!」
「分かった!分かったから腕を解いてくれ!」
よろしい、と言って渚と言われた少女は俺に掛けていたホールドを解きまるで子供がガキ大将を討ち取ったような満面の笑みを俺に向けてきた。
こいつが俺の幼馴染でもあり、唯一無二の親友『天津風渚』だ。
読んで頂きありがとうございます。これからも御贔屓に。
いやあ・・・久しぶりの投稿です。シリアスはどうやって書けばいいのか、さっぱり分かりません。自衛隊、レンジャーの情報やミリタリの情報は全て友人からですので自分は正しいのか、はては誤っているのか判断できません。自分は昭和初期~戦後までの知識が平均より多いくらいの知識ですので・・・書きつつ勉強しようと思います。訂正箇所を教えていただけると大変嬉しいです。
今回初めて知ったのですがサバゲーを主題にしている小説は多いんですねえ・・・新開拓と思っていました。他の作者様が書かれている小説に負けぬよう努力いたしますので何卒、何卒応援のほどを宜しくお願いいたします。
それでは、失礼します。