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王子様は、真実を知る

王子が、日本にきたきっかけ。

残酷表現が苦手な方は、飛ばしてくださいませ。

 私は、エリック・ノースリーブ。ノースリーフ国の王子だ。

 魔法の6属性中5属性を扱える私は、第3王子でありながら王位継承権第1位にあった。もちろん魔法だけではない。教育も他の兄弟を抜きん出ていて、王位を継ぐ意思はないと言っても、担ぐ声は消えない。


『なんて有能な王子。 将来が安泰ですな』

『魔法だけでなく、文武も秀でているとか。 国の未来は明るいですなぁ』

『エル王子素敵!!』

『ぜひ私と一緒にお茶でも…』


 私の周りには、常にほめたたえる言葉で満ち溢れていた。けれど、それは腹の探り合いで、実際にどう思っているかは想像でしかない。

 その一方、兄弟には殺したいほど疎まれていた。

 弟は、共同戦線を組まないかと誘われるだけまだましだろう。最悪なのは2人の兄だ。

 2人は共闘してまずは私を蹴落とそうと、入れ代わり立ち代わり私の邪魔をした。

 食事には毎食毒を盛られ、衣服には針、寝室には毒性のある獣。数えきれないくらいに差し向けていた。

 そのようなことをする時間があれば、自分を磨けばいいのにと思うのだが、足を引っ張ることを最優先としている兄たちには通じない。

 もう、何年も満足に眠れていない。寝室に、不可侵の結界を張っても全力で破壊した挙句に侵入させてくる。

 一度結界を張らずにいたら、一部屋吹き飛ばされた。その時、とっさに防御魔法を張らなければ、大怪我だっただろう。

 そして、成人の儀前日が訪れた。

 明日、私は成人となり婚約者となった力のある貴族の娘と結婚する。

それは意思のない結婚であるが、こんな私に添い遂げてくれる女性に、できうる限り優しくしようと心に決めていた。

 だが、それは最悪の形で裏切られることになる。

 明日着る衣装には、やはり毒針が縫い付けられており、それを再点検するために時間が出来たので、私は庭を散歩することにした。

 花々は祝うように咲き誇るが、私の心は晴れない。

 独り身ならばとうに捨てていたかもしれない命だが、婚約者がいるなら簡単には捨てられない。

 しばらく設えてあるベンチに腰を掛け、ぼんやりと眺めていたら、遠くで男女の声がした。

 もしかして結婚生活の参考になるかもしれないと、私はこっそり近づいた。決して覗き込もうとは考えていなかった。

 しかし、近づくごとに声は甘く変わっていて、そして、知り合いの言葉に似ている気がした。

近づかなければ、気が付かなかったかもしれない。

 どこか震えそうな体でみた男女は、第2王子と、私の婚約者だった。

 二人は抱き合って顔を向き合っている。それで、何をしているか確定できるだろう。


「レジュさま、約束はお忘れなく」

「ああ、アイツが消えた暁には、お前を愛妾として迎えよう。 とうに本妻とは冷め切っているし、お前ほど可愛い女はいない」

「ああ、レジュさま」


 睦言のように言い合って、もう一度顔を近づける。

 おもわず、私はしゃがみこんだ。妻になる女ですら、自分の敵だという事実が、とてつもなく恐ろしくて。

 だから、付近の気配に気づけなかったのだ。

 飛ばされた殺気に顔を上げると、第1王子が仇を見るような目で俺を見下ろしていた。

 瞬時、反応が遅れ腹に激痛が走る。

 受け身を取って体制を整えようとしたら、胸倉をつかまれた。


「レジュ、聞かれているぞ」


 ぎりぎりと絞められる。私たちに気づいた第2王子と、婚約者は、私を見ていびつに笑った。


「あらあら、兄上さま、私の婚約者に何をなさいます」

「知られたとはいえ、もっと感情をこめてやったらどうだ?」

「あら、これでも精一杯こめていますのよ?」


 くすくすと頭に笑い声が響く。

 心が折れそうだ。もう折れても仕方ない状況でも折れないのは、心のどこかでこの展開を予想していたのかもしれない。

 添い遂げる者でさえ、私を裏切る。

 だんだん薄れていく意識。胸倉をつかまれたまま、移動した感覚。そして、顔に押しよせる圧力。

 水の中に顔をおしこめられているのだ。

 たちの悪いことに、数回は起こされ、呼吸をしそうになったら沈められる。


『もう、遠慮はいらないだろう?』


 ずっと蓋をしていた、自分の感情があふれる。こうなったら、けがを負わせても構わない。

 私は、無詠唱でできる初級魔法を放つ。


「が…はっ」


 婚約者の悲鳴、吹き飛ばされた上の兄、向かってくる魔法。

 下の兄が繰り出す魔法を、詠唱の時点で見切り、それ以上のもので中断させる。


「ついに化けの皮がはがれたな、エル!!」

「この人でなし!」


 下の兄と、婚約者だった者が、叫ぶ。

 もう、ここには居場所すらないのか。

 そう思うと、とてつもなく逃げたくなった。

 だから、詠唱を始める。邪魔が出来ないよう、私の周りに大きな円陣ができた。

 本で見ただけの、常人には使えない、それこそ魔術師レベルの魔法。

 王子でなければ魔術師として猊下守護の一角まで登れるかもしれないと言われた私なら、より遠くへ飛べるかもしれない。

 どうかどうか、私を遠くへ連れて行ってくれ。


「我をかの地へ導きたまえ!」


 どこへ行こう。

 いや、ここでなければどこでもいい。

 ただ、私を裏切らない者がいるところなら。

 どうかどうか。








 私を求めて。








自分で書いてて王子不憫だわとか思ってます。

もしかしたら、王子がヒロインで、瑞穂がヒーローなんじゃないかと(笑)

押しかけ女房とか、結構好きです。

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