貴方といると月が綺麗ですね
「遅いっ!」
はぁーっと白い息が吐き出される。
マフラーに顔をうずめた彼女が可愛くて、怒られている筈なのに顔がにやける。
そしてそんな俺を見て、彼女はさらに激怒。
「どんだけ待たせんのよ!」
部活で遅くなるから帰っててもいいと言った俺に、待つと言って帰ろうとしなかったのは彼女の方なのだが。
内心苦笑するが、そんな彼女が愛しくて仕方がない。
「ごめん、送ってくから帰ろう?」
グイッと彼女の手を引くと、彼女は渋々と言った様子で歩き出した。
今日は一段と寒い。
そろそろ雪が降るのではないだろうか。
ひんやりしている彼女の手を強く握り、上着のポケットに入れた。
「絆されないんだからね…」
むーっと上目遣いに俺を睨み上げても、正直なところ可愛いだけなんだけどね。
「んー、あ、ホラ。何か飲む?」
帰路にある公園の自販機を指差すと、マフラーに口元を埋めて「ミルクセーキ」と答える彼女。
小銭を自販機に入れて、ミルクセーキのボタンを押す。
ガコンと質量のある音と共にミルクセーキが出てくる。
それを彼女に渡せば顔をほころばせた。
それを横目に自分のコーヒーを買い、近くのベンチに腰を下ろす。
「甘いの好きだよなー」
俺が彼女にそう言うと「だって、美味しいよ?」と小首をかしげる。
その温もりを確かめるように缶を両手で持つのも可愛い。
我ながら親バカならぬ彼女バカだ。
「あ、星綺麗だよ」
俺の心中を知ってか知らずか無邪気な声を上げる彼女。
その声に釣らるようにして、俺も空を見上げた。
暗闇の中、これでもかと言う程の輝きを放つ星と月。
ふと頭に浮かんだ言葉。
「貴方といると月が綺麗ですね」
声に出しているつもりなんてなかったが、彼女が飲みかけのミルクセーキを落としたのでハッとする。
真っ赤になった彼女の顔。
あわあわとしたその様子。
俺も恥ずかしさで死にたくなる。
何をこんなに恥ずかしくてくさいセリフを吐いているんだ。
「もう!帰るよっ!!」
真っ赤になった彼女が俺の手を取り駆け出す。
俺の体は自然と前へ進む。
後ろから見てもわかる位耳が赤い彼女を、俺はこれまでになく愛しく思った。
季節感ゼロスイマセン…
初夏だというとに冬って!
まぁ、こっちのが書きやすかった…
解説
貴方といると月が綺麗ですね
これは隠語で意味は愛しています
大和言葉と言う奴ですね
よく月が綺麗ですねと言われますが
貴方といるとが重要だったりするんですよ