魔法の邪悪さ
【第三の魔法】魔法の邪悪さ
魔法それは決して正しい事ではなかったのです。魔法を使うには、エネルギーが必要で、アナとサレナが魔法を使うには、人の思い出が必要でした。アナにはどうしても他人の思い出を獲る事が出来なかったのです。ですが、サレナは夜中いろいろな人の家に行き大切な思い出をたくさん貪っていたのでした。そして、そのエネルギーで可愛い女の子へと変身していたのです。
魔法を使えないアナに向かって、普通の人間には普段みえないサレナのカエルがしゃべりかけました。
「おい。アナお前はどうしてエネルギーを獲ろうとしないんだ。サレナなんかおれたちカエルの魂も使って魔法をかけることもあるんだぞ ?お前、連日魔法を使っているから目にクマが出来てるじゃないか」
アナには、分っていたのですが、どうしても他人の思い出を使って魔法をかけることに抵抗があったのです。そんなアナにサレナも言いました。
「どうして、アナは魔法で可愛い子に変身しないの ?それじゃミシェルに負けちゃうよ ?それに、あの日が来た時に、もし魔法が使えなかったらどうするの・・・わたしたちがこの時代に来た意味がなくなるじゃない!」
アナはサレナにそう強く言われて。やっと決心がつきました。
「うん・・・わかった・・・サレナ。今日の放課後、ルークに魔法をかけるよ。」
サレナはルークに呼び出しの魔法を放ち、放課後、人がいないところにルークを誘い込みました。そこに待っていたアナは、ルークに向かって、少し戸惑いながらも魔法を唱えたのです。
「ハフル!」
すると、アナから丸い光の様なものがルークの顔に向かい、当たった瞬間ルークのアナを見る目が一瞬で変わったのです。そして、ルークはアナに近づき抱きしめながら
「僕のアナ。君の事大好きだよ」
と、言いました。でも、アナは大好きなルークの気持ちを操る魔法を使った自分に、悔しさと胸の苦しさを感じて、目から涙がこぼれおちました。
それだけではなく、ルークがアナに告白をした瞬間を見ていた子が他にもいたのです。それはミシェルでした。ミシェルはそのかわいい目から大粒の涙を流し走って行ってしまいました。アナは、それを見てルークの腕を振り払い
「ミシェル!」
と、言ったのですが、ミシェルには届きませんでした。アナはそんなミシェルの気持ちを想って歯をくいしばり、自分のももを叩きました。
そんな様子を全て上から見ていたサレナの肩のカエルが
「ケケケケ」
と、笑っています。そうです。サレナはルークだけではなく。ミシェルにも魔法をかけてルークの告白をミシェルに見せていたのでした。
ルークにアナの事を好きになる魔法をかけた後、アナの古い大切な思い出が一つポンっと消えてしまいました。アナは、他人の思い出を使わずに、自分の思い出を使っていたのでした。
【第三の魔法】おわり