死なない悪魔と知識の塔
昔々、世界の中でも一二を争うほど学問が発展した町がありました。
その町に住んでいる人の大半は学者で、毎日研究をして暮らしていました。町にやってくる商人達は学者によその本や論文を売り、学者の書いた本を買い取って別の町に売っていました。
町の人達は皆、知識をとても大切にしていました。町には大きな塔があって、町の人達が特に大切だと思った本はそこで大切に保管されていました。塔は知識の塔とよばれ、世界中の知識が全て詰まっていると言われていました。知識の塔は町の自慢でした。
ある日、町に赤い目の悪魔がやってきました。
町の人達は悪魔を追い返そうと思いましたが、学者ばかりのこの町ではなかなかそんな勇気のある者はいませんでした。悪魔は好き勝手に振る舞い、町の人々を困らせました。
そして、一通りの悪戯を済ませた悪魔は知識の塔に目をつけました。
「ニンゲンの知識なんざくだらないね」
悪魔はせせら笑って知識の塔に火をつけました。火は町の人達によってすぐに消し止められましたが、塔の中にあった本の大半は燃えてなくなってしまいました。
さすがに町の人達は怒って、悪魔を捕まえようとしました。悪魔は町中を飛び回ってたくみに逃げ続けましたが、とうとう捕まってぐるぐるに縛られてしまいました。
町の司教が剣を清め、悪魔に止めを刺すために心臓に突き立てました。
悪魔はぐったりとして、死んでしまいました。
町の人達は平和な日々が戻ってきたとようやくほっとしました。
ところが、ほっとしたのもつかの間、心臓に剣を刺したまま悪魔は跳ね起きてけらけらと笑いだしました。
「よくもやってくれたな。それお返しだ」
悪魔が杖を一振りすると、人々はばたばたと倒れて死んでしまいました。続いて悪魔が指を鳴らすと、町の建物がどんどん崩れていきました。
誰もかれも慌てふためいて逃げ惑うだけで、悪魔に向かっていくことなど今度こそできませんでした。
そのとき、神に祈りが通じたのか、天から使いが降りてきました。天の使いは悪魔と戦い、悪魔をこらしめるとそのまま地の底を牢獄へと引っ立てていきました。
万事めでたし、これでおしまい。