第二六話 木野飛彩
☆午後六時半 下京区 パレス・ベース医務室
『世界一美しい基地』の名に恥じぬ上品な白壁は、京都の宵闇の中、自家発電設備で何とか輝きを保っていた。
「意外ですね。俺だけなら大阪に呼べばいいのに」
「そもそも行くんじゃねえよ、勝手にほっつき歩くな。暦の監視の手配に苦労させやがって…」
苛立ちながらも、カルテを打ち込む木野先生の指使いは落ち着き払っている。
「まぁ、今回は『結果的には』お前が正解だった」
傍らで、付けっぱなしのラジオは独り言を垂れ流していた。
〈アークブレイン社社長、リオン・ライター氏。今日、突如として来日し、ギガント・ベースに姿を現した彼に世界中から困惑の声が…〉
「困惑するまでもないだろう」
八つ当たりのようにラジオを切る。
「暦やらゼージスを嗅ぎ付けてきたんだ。全く、根っからの死の商人だよ奴は─」
木野先生の声色には、理不尽を前にした悔しさが滲み出ていた。
「あんな奴でも、スポンサーですもんね」
カルテを書き終えた木野先生。立ち上がり、取り出した缶。蓋を開けば、ボロボロのドッグタグ達が一斉に顔を出す。
「オレが戦うのは、あんな奴らの為じゃねーよ」




