第二一話 怒りと悲鳴
☆七月二二日 正午 京都市街
列車の窓から見えるのは、無骨な要塞都市と化した京都。かつての古都も、今では冷たい鉄筋コンクリートのトーチカ達に支配されてしまった。
足元には、廃墟という名の怪獣の爪痕。変わり果てた姿を相まって、余計に寂れたように感じた。
「ワンダは何をやってるんだよ」
向かい側の席の会話が、俺達の耳に飛び込む。
「ちょっと何て事を─!!」
皺を目立たせ、愚痴る夫に、俺達を知ってか知らずに咎める妻。だが、白髪交じりの表情は酷くやつれている。
「ずっとこんな調子だ。怪獣は出るし、食い物はない。何より、アルガは未だ行方不明。何が『世界対怪獣防衛連合軍』だ。一人もロクに守れずに」
減速の中、妻の口から反論が飛び出す事はなかった。
「─せめて、骨だけでも見つかればな」
初老の重々しい背中を見送り、旅は続く。
「なんで、怒っていたの?」
暦の声は、比較的穏やかだ。最も、それは『比較的』。喉奥から冷たいモノが滲むのは変わりない。
「─接客業じゃないの」
本心か痩せ我慢か。やりきれない俺を他所に、サワさんは呟く。
「あたし達は、やるべき事をやるだけよ」
その時、俺達は走り出した筈の列車が少しずつ減速していくことに気付いた。
〈お知らせ致します。現在、京都市内各地にて送電設備の不具合が発生したとの情報が入りました〉
ざわめきの中、不思議そうに見渡す暦。果たして、列車は完全に停止してしまった。
「早速、到着ね」
サワさんの顔には恨めしげな色が浮かび上がっていた。




