第十五話 竜の決意
☆午後十一時 ギガント・ベース司令室
オペレーター達が叫び、警報が鳴り響く。
「ふ、復活だと!?」
「データに無いぞ!!」
「何かの間違いじゃ─!?」
あたしは木野先生と共に声を張り上げていた。
「都庁に繋いで!! 都内の全シェルターの解放を要請!!」
「大阪の全病院に避難令を出せ!!」
混乱の中、佐神司令は隈を冷や汗で濡らす。
「状況は!?」
緊迫の中、オペレーターは怒鳴り返す。
「現在、港区から大阪市中心部へ侵攻中!! 各地で暴風及びソニックブームによる被害が出ています!!」
モニターには飛翔する白き巨体と崩壊する街。けたたましい警報の中、司令は叫ぶ。
「迎撃間に合うか!?」
「駄目です、都内の全基地は前回の復旧で動けません!!」
「近畿全域の基地に繋げ、在日米軍にも応援を!!」
怒号が飛び交う中、指示を飛ばし続ける先生の顔に青筋が浮かぶ。
「二人ともここで面倒を見るべきだった!!」
「先生、暦ちゃんなら従弟がきっと─!!」
「あの馬鹿の心配はしてない!! だが、状況は最悪だぞ!!」
肯定するように、次々と最悪の報告が舞い込む。
〈大阪城倒壊!!〉
〈迎撃失敗!! 内陸部へ撤退する!!〉
ドス黒い絶望と不安が心を蝕んでいく。暦ちゃんは、そして竜君は? 今度こそ孤独になってしまうのか? 今にも押し潰されそうな重圧の中、あたしは縋るようにロケットを握り締める。
「監視局員はデータ照合をお願い。みんな、自分が出来る事を!!」
決死の空元気で、あたしは強引に負の感情を振り払った。
☆午後十一時十五分 天王寺区市街
〈繰り返します、至急避難を…!!〉
壊れたように繰り返すカーラジオ。ぐったりとした暦と心配そうな三匹を乗せ、俺はアクセルを踏み続ける。
「持ってくれよ。もう少しで木野先生が─!!」
人混みを躱し、道なき道を超え、聳え立つ基地の威容が目の前に。
次の瞬間、ボンネットが弾ける。火を吹き、コントロールを失った車体が電柱に激突。ボンネットの炎と煙に、人々はますます恐慌した。
「死なせて、たまるか─!!」
ドアを蹴破り、暦達を抱えたまま走り出す。左が見えない。呼吸の度に激痛が走る。だが、倒れる訳にはいかなかった。
罪を償うまで、俺は倒れる事はできない─!!
只管に走り、漸く基地へ辿り着く。安堵も束の間、背後より地響きと甲高い咆哮。
トーチカ達の砲火を物ともせず滑走路へと舞い降りるヴェルセクトの巨体。俺は誤算に気付く。奴が復讐を企まない訳が無い。強化されたなら尚更だった。
この場を離れなければ。だが、これ以上走れない。左目は潰れ、呼吸の度に肺が血で満たされていく。心は折れずとも、身体はとうに限界を迎えていた。
紅く咳き込む俺を嘲笑うかのように、大鎌が輝き、暴風が頬を撫でる。もう誰にも止められないのか? サイレンと砲声が鳴り響く中、次々とトーチカ達は轟音と共に斬り倒されていく。
俺達は巻き込まれるのをただ待つしか無かった。三匹は腕の中で震え続け、暦は目覚めない。丁度、基地の片隅に佇むゼージスの様に─
─ゼージス?
燃え上がる大阪の街。一体、何人が助けを求めて逃げ惑っているのだろう?
(─俺は、また罪を犯すのか?)
『普通』ならイエスのはずだった。
(竜、約束だよ!!)
薫の笑顔が脳裏に過ぎった。
あいつをまた裏切るのか?
あいつをまた悲しませるのか?
俺は、また誰も守れないのか?
─激しい葛藤の末、決意する。
「─薫、見ていてくれ。俺は、やるべき事をやるよ」




