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能無し勇者は知恵とLV1魔法でどうにかする  作者: (^ω^)わし!!!


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呪を解く

花粉がきつい季節になってきた。

まだ寒いのに、くしゃみが止まらなくなると、全身汗びっしょりになってしまう。

公太郎たちはこれからお花いっぱいの街をつくるわけだが、花粉にはぜひとも留意してもらいたいところ。


…などと考えていたら、イスラエルとアメリカがイランを攻撃しはじめた。

まったくどうなってんのこの世界。


ところで習近平、君はこの後どう動くのかな?

 ────いくらなんでも話がうますぎる…


 公太郎は指先に生まれた『解呪の魔法』を、ドンズたちの目から隠すように握りこんだ。


 どうにも、信じられない…。ドワーフたちを数十年間悩ましてきた問題の解決策が、こんなにも簡単に手にできるものだろうか。できていいものだろうか?…凡人である自分などに。


 そもそも、指の光は本当に解呪の魔法なのだろうか。


 だって、どこまでいってもやはりLV1はLV1なのだ。字面だけ見れば、王都でも誰かが口にしていたが、魔法としては初歩の初歩。反して解呪の魔法は、ドンズの話を引用するなら、才能ある者が長年の努力の末にようやく手に入れる、本来は相当高レベルの術者向けの魔法である。


 別に自分の魔法を()()()わけではないが、LV1にはLV1なりの「できる範囲と、できていい範囲」の道理ってものがあるはずだ。


 もしこれが解呪の魔法なら、まるでギャグマンガのご都合展開じゃないか。



 …だが。


 思い返してみれば、予兆はあった。


 戦いで命を落としたイリスを蘇らせる、1000年前の勇者ナユタを短時間とはいえ復活させる…あんなことが許されるのだから、この程度であれば朝飯前なのかもしれない。


 ヤバすぎるだろ…。公太郎は無意識に唾を飲み込んでいた。


 恩寵の宝珠(オリジン・コア)によってもたらされた────LV1全魔法────


 ────あの日、王都の冒険者ギルドで、その場の誰もが一笑に付したイリスが差し出したそれは、まさに国すら代価となる珠玉の逸品だったのかもしれない。


 そんな大げさな…と、あの時は思ったものだが、出自を知った今となっては、まったくの誇大表現だと切って捨てられない自分がいる。


 なぜなら、かの暴凶竜グリモアが所持し、望む未来への夢見の謝礼としてゼナに贈った「恩寵の宝珠(オリジン・コア)」なのだ。粗雑な品であろうはずもない。


 そう考えると、今…この手にあるのが、真に解呪…高難度の特殊魔法だとするなら、重要なのは「LV1」ではなく「全」の方だ。自分の解釈が正鵠(せいこく)を射る場合、レベルの存在しないあらゆる魔法が手の内にということになる。


 この世界に、どんな特殊魔法が存在するかは知らないが、もしも…世を滅ぼすような恐ろしい魔法があるとするなら、それすらも。


 これがアニメのチート主人公であるならば、物事の道理など気にも留めず、嬉々として使いこなし、道を切り開いていくのだろう。だが、あくまで小市民にすぎない自分にとってみれば、手にした大きすぎる力と責任の重圧に、足がすくむ思いしかない。


 LV1魔法の果てない可能性は、そのまま同じ大きさの危険性と表裏一体だ。気軽にひけらかして道を誤れば、いつか近しい誰かを不幸にすることだろう。



 …それでも。



 現状の問題を前に、代替案が見当たらない以上、あるものを使わないでいられる余裕は無い。


 魔法の危険性を承知の上で、驕らず、(たゆ)まず、溺れず、自らを律し、己の則に厳しく従い、扱えば、必ず有益な力となってくれるはずだ────



 …などと心の中で立派な「誓い」を立てたわけではないが、公太郎は「まあ、注意すれば大丈夫だろうー」という「誓い」と大体同じニュアンスを胸に、この度はありがたく使わせてもらうことにした。


 そういう、物事を深刻に考えすぎないのが、伊藤公太郎という男のいい所でもあり、悪い所でもあるのだ。


 「ドンズさん、この光を見てくださいー」


 公太郎は手の内に隠していた、指先に宿った魔法の光を取り出し、ドンズの眼前に差しだした。


 「……なんだぁ、その魔法?」


 暖色が混じりあう光にドンズが眩しそうに目を細める。距離が近すぎたためか、かえってドンズは光の正体に気がつかず、むしろ公太郎の行動を「意図がわからない」と咎めるような顔つきになった。


 その時。


 「あ…あんた、まさか…それっ!?」


 横から、夫の代わりにガレラが驚き叫んだ。あわあわと震えるガレラの視線が、「信じられない」とばかりに、光と公太郎を交互に行ったり来たりとし始める。


 「か…解呪の…魔法…じゃないのかい?」


 「なっ…なんだとぉっ!??」


 ガレラの息を詰まらせたようなたどたどしい声に、ドンズも遅れて状況を把握した。二人の問いただすような視線に、公太郎もうなずく。


 「そうだ、と断言はできないんですがー、たぶん『解呪の魔法』だと思いますー」


 「うそ……だろ……」


 ひねり出したようなドンズの呻きを最後に、場が水を打ったように静まり返った。ドンズもガレラも大口を開いたまま、まばたきすらしていない。


 ────…あれ?


 時間が凍りついたような二人の反応に、公太郎も言葉が続かなくなった。想定外な重苦しい雰囲気に、胸が落ち着かなくなってくる。


 指先の光が『解呪の魔法』と確信が無いため、変に期待させないように、深刻な空気にならないように、軽い口調で伝えたつもりだったが…


 てっきり「思いますって、なんだよ(笑)!!」とか「あんちゃんは偉い僧侶(ぼう)さんだったのかい(笑)?」となって、「ハハハ…まさかー」とか「俺、なんかやっちゃいましたー?」のように返す、軽快なノリになると想像してたのに。…というか、そうなってくれないと困るんだが。


 だってほら、期待だけさせて、解呪がうまくいかなかったら…いたたまれないし。



 ────これは、やっちまったなー…


 硬直するドンズとガレラを前に、公太郎の背中に冷や汗が流れた。


 もはや魔法に釘付けとなった彼らの視線から察すると、さっき自分が暗に言った「もしかしたら、解呪じゃないかもしれませんー」なんて完全に耳に入ってない。


 きっと今頃、彼らの心の中では、否応のない解呪への期待、引いては今後の人生において、諦めていた展望が開き始めていることだろう。まだ、何も成し遂げていないにもかかわらず。


 まあ、何十年も悩まされ続けた問題の解決策が、突如として目の前にひょっこり出てきたら、そりゃそうもなるってものだが。


 けれど、こっちは不確定要素を説明したつもりなのに、クライアントへ伝わってないというのは、仕事でもよくあるトラブルの種だ。放っておくのはいかにもまずい。時間が経てばたつほど、相手の中で期待(ギャップ)は大きくなり、失敗が許されなくなってしまう。



 こうなったら…


 「ちょっと、失礼ー」


 公太郎は有無を言わさず、指先の光をドンズの額に押しあてた。孫子曰く、拙速は巧遅に勝る…だ。解呪の成功、失敗を問わず、ドンズたちの中で、期待値が大きくなりすぎる前に結果を叩きつける戦法である。……まあ、ちょっと意味は違うが、こういう時はさっさと行動に移るのが吉なのだ。


 「あ、あんちゃん…」

 

 虚を突いた公太郎の行動に、ドンズが呆けたようにつぶやいた。そのままの勢いで、公太郎がたたみかける。


 「どう…ですかー?なにか変わった感じがありますかー?私には、具体的に呪が解ける感覚ってのがわからないんですが、そういうのはありますかー?」


 「え…あぁ、いや…どうと言われても…どうなんだぁ、これは?」


 突然始まった解呪の作業に、ドンズは戸惑いつつ、己の両手を眺めた。けれども残念なことに、そこに目立った変化は何もない。


 「うぅん…なにか、コレって変化はないなぁ…。ガレラ、お前から見て、どうだ?」


 「どうだ…って言われてもねぇ…」


 問われたガレラも、わからないと首をかしげる。そしてそれは、公太郎も同意見であった。


 ────手ごたえが…ないな。


 ドンズの額の脂にヌラヌラと反射するマーブルの魔法光を見つめながら、公太郎が渋面をつくる。


 心配した通り、解呪はあっさりとうまくはいかないようだ。


 これが回復魔法であれば、傷を癒す際に体組織が再生される、妙な言い方をすれば細胞のざわめきのようなものを感じるのだが、そういった感覚がまるでない。


 だがそれも当然のことではある。呪われてるのはちんこなのだ。額に魔法をかけようと、両手を眺めようと、そんなところに変化が起きるはずもない。


 「ダ…ダメなのか、あんちゃん?」


 公太郎の渋い顔に、ドンズが心細げに尋ねてくる。


 「相当強い呪なのかもしれませんー。解呪が作用してる感じがしませんー」


 「そんな…」


 途端に絶望の色に染まるドンズに、しかし公太郎は首を横に振った。


 「やり方を変えてみましょうー。解呪魔法、並列起動ー」


 公太郎は五指を開き、それぞれの指先に魔法を点火する。


 「…からの、直列起動ー」


 それからフィンガーフレアボムズのようになった魔法をひとまとめにして、手の平を覆うオーラの形をとった。


 「これで単純に5倍の威力になったはずですー。今度は胸からいってみましょうー」


 言いながら公太郎はドンズの伸びた襟首から服の中に問答無用で手を突っ込む。


 「お、おい、あんちゃん…」


 ドンズはちょっと恥ずかしそうに身をよじったが、公太郎は別に触りたくて触ってるわけではないので無視した。


 その時。


 ジュッ


 ドンズの心臓あたりに手が触れ、水が蒸発するような音が響いた。熱したフライパンにひとしずくの水滴が落ちたような、一瞬のかすかなものだったが、三者が同時に「「「おっ!?」」」と声をあげる。


 「今…確かに聞こえたよね」


 「ああっ…。これは…どうなんだ、あんちゃん!?」


 ガレラとドンズの期待の眼差しに、公太郎もうなずく。


 「手ごたえが…ありましたー」


 ドンズに触れた手の中で、何かが溶けだすような感覚。遅ればせながらだが、間違いない。これは本物の解呪の魔法だ。


 ……が。


 解呪の魔法が作動することでわかったことがある。「淫魔の呪」の根深さだ。巨大さだ。強大さだ。


 理論上はこのままドンズに触れ続ければ、いつかは完全に呪を解くことができるだろう。


 けれど、肌感覚でわかる。それはとてつもない時間がかかる作業となるだろう。まるで大量のお宝動画を一気にハードディスクに移動した時のような、遅々として進まない実感がある。具体的な時間を言うなら、丸3日かかるといったころか。


 さらにこれもわかるのだが、一度ドンズから手を放してしまえば、呪はあっという間に勢力を回復してしまうはずだ。


 つまりこの手法でいくならば、3日間、ドンズと抱き合う必要に迫られる。


 ┌(┌ ^o^)┐



 ────現実的じゃないな。


 公太郎は魔法を中断してドンズから手を放し、指にべっとりとついた皮脂を裾でぬぐった。


 (らち)が明かないとはこのことだ。



 やはり……やるしかないらしい。


 直接、患部(ちんこ)に、魔法をあてるしかないようだ…


 

 無言のまま、公太郎は悲壮な決意を固めた。

TIPS:世を滅ぼす魔法はあるかもしれないが、発動するマナが足りないと使えないので、今の公太郎には使用できない。もしくは、MP1で使うマダンテみたいになる。

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