解呪の手段
ときメモをやってる時間が無いよ。
けど、じゃあ何してるかって言うと、昔買ったゲームをしてる。
この現象、本当に謎。
謎と言えば、今度アメリカがUFOの資料を公開するらしい。
でもきっとケネディー暗殺事件みたいに真相はわからずじまいなんだろうな。
もしも宇宙人がいるなら、恥ずかしがらずに出てくればいいのにね。
日本はアニメや漫画で宇宙人を題材にしたものがたくさんあるから、出てきても寛容に受け止められるよ。
習近平もそう言ってた。
「不能になっても溜まるもんは溜まる。まるで破裂しない皮袋に延々無理やり水を流し込んでるみてぇだぜ。膨らんだ袋が内側から俺を圧迫し続けやがってよ。あんちゃんも男ならわかるだろう?」
「はぁ…、まあー…」
曖昧な返事の公太郎に気分を害することもなく、ドンズは酒瓶から杯に荒々しく酒を注ぐと、一気にあおった。
「ぷはっ…。全身にできた膿んだ腫物がいつまでも破れずに痛むようなもんだ。つれぇぞ、これは。俺らぁが酒を飲むのは、そいつを紛らわすためよ。飲まなきゃってられねぇ」
「ふーむー…」
溜まって痛むかどうかはわからないが、つらいのは確かだろう。勃起不全になると攻撃性が増すというのはファブルでも見たが、イリスへのドンズの態度はそういうところから来てるのかもしれない。
「呪を、どうにかする方法は無いんですかー?」
「…方法ぅ?」
素朴な質問をした公太郎を、ドンズが新たな酒を注ぎながら睨めつける。
「…すみませんー。そんなものがあったら、とっくにされてますよねー」
我ながらバカなことを聞いたと思い、公太郎は頭を下げた。
しかし。
「ねぇことは…ねぇ」
「えっー!?あ、ある…んですかー?」
素っ頓狂な声をあげた公太郎が途端にめんどくさくなったのか、ドンズがガレラを顎でしゃくった。
「…やれやれ。あるって言っても、理屈の上では、だけどね」
夫の様子にガレラがため息をつきながら、説明を引き継ぐ。こういうめんどくさい部分は他人任せというのは、ドンズの生来の性のようだ。
「理屈の上で…と言いますとー?」
「呪いをかけた淫魔自身が解くか、淫魔を討伐すること」
「あぁー…なるほどー…」
そりゃそうだという内容に、公太郎が肩を落とす。
たしかにそれができれば苦労はしないが、肝心の淫魔はウン十年前に姿を消している。実現性には期待できそうもない。
────視点を変えて、「勃起しない」という結果からアプローチすればいけるだろうか?
公太郎は少し、逆から発想してみた。
ドワーフの勃起不全は「淫魔の呪」ゆえだが、症状のメカニズム自体は病のそれと変わらないと仮定する。
根拠は、自分のLV1魔法だ。例えば…火魔法であればマナを燃料に発動するわけだが、生み出した火は術者がある程度自在に操れるという点を除いて、普通におこした火と同じ特性を持っている。松明に近づければ燃えるし、手をかざせば温かい。
簡単に言いかえれば、魔法か物理かという発動の仕方が違えど、火は火ということになる。
…となると、ドワーフのEDでも予想される大きな要因は、通常の病と同じく身体的なものか心因性の二つ。(呪によって引き起こされてるため、生活習慣によるEDは無視)
さらにラピルの計測では、呪は股間にかかってるとのことであるから、心的ではなく身体的な要因が濃厚だ。
自分は医者ではないので断言はできないが、EDのメカニズムとして、生殖器に十分な血流がいかない、もしくは海綿体に異常がある…というくらいの想像はつく。
そうであるなら、回復魔法で生殖器の血管を広げ、血流を改善するというのは効果があるだろうか?または、委縮した海綿体に活力を与えれば────
…そこまで考えて、公太郎はリュナのやけど痕を治療したことを思いだした。あの時と同じならば、回復魔法をかけるには、患部に直接触れる必要がある。…この場合、ドンズのちんこを素手で握るわけだ。
…公太郎の顔がゴルゴ13みたいになった。
「それから…」
だが、ガレラの話は終わっておらず、その声が公太郎に救いの福音のように降り注ぐ。
「んんー…ま、まだ、他になにかー?なにか手が、あるんですー??」
「な、なんだい、妙に食いつくじゃないか…」
ガレラは公太郎の様子を不審に思いつつ、こほんと咳ばらいを入れてから答える。
「…解呪の魔法だよ」
「解呪の、魔法ー…」
その解答のシンプルさに、公太郎が唸った。
────そんなの、あるのかよ……
呪を解除する、ドラクエでいうところのシャナクの魔法。そんな名前を聞くだけでもいけそうな気がしてくるような魔法があるならば、現状の解決策としてそれが最適解だろう。少なくとも、今から淫魔をどうにかってよりは、よほど現実的な手法に思える。
…だが。
────じゃあなぜ、そうしないのか。
「やはり…何か問題があるってことですかー?解呪の魔法とやらはー」
公太郎は顎を撫でながら、頭に浮かんだ疑問をガレラにぶつけてみた。当事者である彼らドワーフが、解呪の魔法という明白な解答を前にして、何十年も指をくわえてるのは、それなりの理由があるはずだ。
「…あんちゃん、知らねぇのか?」
黙ってるのも飽きたのだろう。飲み干した杯を卓に置きながら、ドンズが口をはさんできた。
「はぁー…。お恥ずかしながら、私…魔法には少々疎くてー」
「…ったく、よくそんなんで魔王サマの側近とかやってんな」
「…おっしゃる通りですー」
申し訳なさそうに頭をかいた公太郎に、ドンズが呆れて両手を広げる。
「いいか、解呪の魔法ってのは神聖系の高等魔法だ。扱えるヤツはそうそういねぇ。特に、魔族ではな。人間でも偉い僧侶が長年修行して、ようやく身につけられるかどうかって魔法なんだよ」
「そんなに、レアですかー…」
「俺の知る限り、こんな北の果ての辺鄙なとこに使えるヤツぁいねぇな。だってよ…珍しい魔法だ、稼げるんだわ。もしも俺が使い手なら、もっと都会に出ていくなぁ」
「偉い僧侶なのに、お金…ですかー」
「あんちゃんは世間知らずだねぇ。苦労して手に入れた力は、おいしい事に使いたくなるのが性ってもんだろ。僧侶だろうが誰だろうが」
他人に「世間知らず」と言いつつ、おそらくドンズもこの街から何十年と出てないはずだが、それでも言ってることには一理がある。どの世界であろうと、綺麗事だけでは生きていけないのだ。
「だから、人間の王都とかにはいるんだろうなぁ、使えるヤツぁ。とんでもないカネを要求しやがるんだろうが。…まあ俺らは逃亡奴隷だし、王都に近づくこともねぇけどよ」
「はあ…、世知辛いですねー」
────ドンズさんが解呪の魔法を使わなかった理由は、人材と金の問題…か
公太郎は再び、口を手で押さえながら思考に入った。
ぶっちゃけてしまうと、金は最悪…どうとでもなる。どれほど高い報酬を要求されたとしても、グリモアの資産をはみだすことは、まずあるまい。
だが、人材はどうだろうか。
王都で位の高い僧侶に渡りをつけ、はるばる魔界までお越しいただく…というのはビジョンとして想像しにくい。仮に体よく使い手を見つけたとして、王都でのイリスの扱われ方を思えば、鼻で笑ってあしらわれるのが関の山だろう。むしろ魔界で扱える者を探した方が早そうな気さえする。
────…この方法も厳しいか。
公太郎が嘆息したその時、ともすれば気にも留めないような、どうでもいいほどかすかな疑念が胸に沸いた。
「ちなみに…なんですがー、『解呪の魔法』はレベルで言えば、どのくらいのものが必要なんでしょうー?」
その公太郎の問いかけは、完全に興味本位である。後学や参考程度に、この世界の魔法が、上は何レベル程度まであるか知りたかった…くらいの動機だった。
「レベルぅ…?」
ドンズが明らかにめんどくさそうな声色でガレラと顔を見合わす。
「あんた…ほんとに魔法のこと、何も知らないんだねえ」
ガレラはしばしばドンズにそうしてきたような、「やれやれ」というトーンでため息をついた。
「『解呪の魔法』は火魔法とかの一般魔法じゃないの。特殊魔法だからレベルなんか無いよ」
「あ、いえ…言い方が悪かったですねー。どの程度のレベルの神聖系魔法を使う者が扱うものかと気になり…………」
言いかけて、公太郎は目を見開いた。
────…レベルが、無い…?
無いというのは、どういう意味だろう。
…いや、もちろん言葉の意味はわかるのだが、「範疇」としてはどうなのだろうか。
恩寵の…自分の「LV1『全』魔法」の範疇として…
気がつくと、公太郎は息をするのも忘れていた。全身の毛がぞわりとして、ひどく落ち着かない気分だ。
まさか…、と思いつつ、公太郎は小声で唱えてみた。
「解呪魔法…LV1ー」
ドンズたちから隠すように組んだ手の内の、人差し指の先に小さな光がともる。無機質な光魔法のそれとは色合いの異なる、もっと暖色系の光だ。明確に何色とは形容しにくい。赤や黄色や橙が、シャボン玉の表面のようにマーブルに混じりあっている。
────これは…、できた、でいい…のか?
手の平で隠した温かい光に、しかし公太郎は、喜びよりも、背筋に戦慄を覚えた。
指の光が「解呪の魔法」であるという確信はない。しかし…もしも本当に解呪であるならば…
────…この恩寵、相当…ヤバイものなんじゃ…
TIPS:一連のドワーフのエピソードはLV1魔法の可能性に気づくためのもの
なお余談だが、この世界の者が英語由来の単語を話すのは、公太郎の脳が耳から入った言葉を勝手に英語へ翻訳しているだけ。逆もまた然り。それでも意味が通じない場合が多々ある。




