ドンズの話 1
もうすぐバイオ9が出るらしい。
怖いからプレイすることはないけど、今度こそレオンとエイダは進展するのだろうか。
習近平はどう思う?
『デブ専』
場にそぐわない珍妙すぎる単語に公太郎は一瞬耳を疑ったが、ドンズに冗談や言い間違いを訂正する兆しはない。
どうやら本気である。まごうことなく真剣の言葉だ。
そうなると…つまり、彼の言葉を借りるならば、「デブ専」であるというのが彼らドワーフにとって、自己のアイデンティティーを構成する最も重要な部分らしい。
なるほど、これも多様性というやつだろう。相互理解が深まって何よりだ。
たしかに、ドワーフがそういう趣味嗜好を持つというのは、個人的になかなか興味深い事実である。
…とはいえ、なぜそのカミングアウトを「今」するのかは全くわからない。
────そんなの、黙って好きにすればいいじゃないか。
そう口に出したくなる気持ちをぐっとこらえ、公太郎は営業スマイルが崩れないように結構苦心した。
しかし。
この後、『デブ専』という珍妙な単語は、ドンズらにかけられた「淫魔の呪」の根幹に作用する重要なキーワードであると公太郎は知ることとなる。
だがこの時点において、公太郎がそれに気づくはずもない。唐突に性癖を暴露された者に特有の遠い目をするだけである。
そんな公太郎を置いてきぼりのまま、ドンズの話が始まった。
「あんちゃん、なんか腑抜けたツラァしてんなぁ。…あぁん?『デブセン』とはなにか、だって?
おいおい、めんどくさいこと言うんじゃねぇ。デブ専はデブ専だろうがよ。
…ひょっとして、まさか…この言葉、人間の世界には無いんか?
…チッ!!しゃあねぇなぁ…。
簡単にわかりやすく言うがよ、あんちゃんとこの魔王サマ、それにもう一人の…ほとんどしゃべらなかったメガネのネエちゃん。あの二人はとんでもねぇ美人だよなぁ。まあ…魔王サマはまだ子供だったが、将来はえげつねぇことになるぜ、ありゃあよ。
けどな、俺らぁ…ドワーフからすると、グッとくるのは、この…ガレラみたいな女だ。もし今、魔王サマとメガネのネエちゃんとガレラの中から一人を選べって言われたらよぉ、俺ぁ…微塵の躊躇なく、ガレラを選ぶね。俺からすりゃあ、女房ほどイイ女は他にいねぇ……って、痛っ、いてぇっ!!…なんだよ、ガレラ。…頭を叩くんじゃねえよ。
…とにかく、だ。俺ぁ別に、魔王サマが誰かに美しさで劣るとか言ってるわけじゃねぇ。ただよぉ、俺らぁの感覚からすりゃあ魔王サマみたいなのは、なんてぇかよ…名匠が手掛けた絵画や彫刻のそれに近い。美しいのは美しいし、きれいだとも思う。だが、どんな名画だろうが、見て『勃起』するヤツなんてのはいやしねぇ、そういうことだ。
…だからなんだよ、その目は。俺ぁ、ふざけちゃなんかいねぇ。重要なんだよ、これが。
この『デブ専』ってのをしっかり頭に入れて、今からする俺の話を聞いてくれ。
────────あれは、まだ俺がもっと若いころ。100年か150年くらい前の事だ。ちょうど今の魔王サマくらいのガキだった俺は、こことは違う場所…人間の土地で奴隷だった。
いつからとか、なんでとかは知らねぇよ。気がついたらもう奴隷だったんだ。下手すりゃ、生まれた時からそうだったんじゃねぇか?
ガレラもこの街の他の連中だって同じだ。皆そろって朝から晩まで炭鉱でツルハシを振る日々。ドワーフってのは、あんちゃんの言う通り、力が強く、頑丈で、体力があって、おまけに粗食にも耐える。奴隷としてはうってつけだ。
…あぁん?心配しなくても、人間なんざ恨んじゃいねぇよ。そんな気持ちも…昔はあったかもしれねぇが、何年前の話だと思ってんだ。俺らぁを顎でコキ使ってた野郎どもなんぞ、とっくに墓の下だわ。
………何だって?1日14時間労働?週6勤務?休日出勤有?いやぁ、さすがに俺らぁもそこまでではねぇよ。奴隷主だってバカじゃねぇ。奴隷だからってあんまりな扱いすると、倒れりゃ使い物にならねぇし、反乱だって起きちまうだろ。
…んん?ブラックキギョウ?サビザン?パワハラ?…よくわからねぇが、それってあんちゃんの身の上の話かよ。ヒデェな、あんちゃんも元は奴隷だったのかい?そりゃあ…お互い、ご愁傷サマってやつだ。
だがよ、おかしいと思わねぇか?力が強くて頑丈なドワーフが、なんで黙って人間の奴隷なんかやってんだって。こう言っちゃなんだが、たぶん大抵の人間より、よっぽど強いぜ…俺らぁはよ。
けど…それにはな、ちゃんと理由がある。同じ奴隷だったよしみで、あんちゃんには教えてやるが、俺らぁは、弱いんだ…魔法に。耐性ってもんがほとんどねぇ。
だからといって魔法が使えねぇってわけじゃねぇぞ。あんちゃんもさっき特徴として挙げなかったように、人間からすりゃドワーフに魔法ってイメージはないだろ?だがそりゃ、他のヤツらが見てるところで使う機会があんまりねぇってだけだ。ドワーフの魔法って言やぁ、もっぱら付与術だからな。
この街に来る前、でっかい階段を下りてきたはずだ。その時、壁に明かりがかかってたろ。あれだよ。掘り出した鉱石に、光魔法を付与して光らせる仕組みだ。
普通、魔法ってのは、自分のマナを消費して使う1回こっきりのもんだが、付与術は鉱石の寿命を糧に発動するから経済的なんだな。1回付与しちまえば、鉱石が割れちまうまで何年、何十年と持つぜ。
俺らぁは、そういうちょっと特殊な、独自の魔法体系を持ってんだ。
『デブ専』だけに。
…………笑えよ。
でもあんちゃんが想像するような、火や水をこねくりまわす攻撃魔法ってのを使うヤツぁほとんどいねぇ。必要ねぇんだ。みみっちく魔法を唱えてるヒマがあったら、力いっぱいブン殴った方が早ぇ。
それに耐性がねぇっつっても、頑丈な体で一発二発なら我慢できる。相打ち覚悟で正面からドカンとやりゃ、相手はたちまちオネンネよ。
だが、「呪」みたいなのはいけねぇ。
他人の精神に浸みこむような汚ねぇ魔法は、残念なことに、俺らぁにはよく効きやがる。奴隷の使役魔法とかがそうだ。これから話す「淫魔の呪」もな」
TIPS:いくら奴隷の使役魔法がかかってようと、度が過ぎれば反乱を起こしたくなる。異世界でなくとも、地球だって同じ。




