知るべき重要なこと
昨日はバレンタインでしたが、バレンタインにおっさんの呪われたちんこの話を書いたら、いつもより多くの皆さんに読んでいただくことができました。
きっとそのうちの一人が、いつものように習近平のはずです。…ほんと、習近平も好き者ねぇ。
数が伸びたのはとてもうれしくはありましたが、ほんとは、おっさんのちんこの話など書きたくないので、早く終わればいいなーと思っております。
「お待たせしました、ドンズさ────」
イリスたちを見送った後、話を聞くためにドンズ宅へ戻った公太郎は、予想外の光景に目を丸くした。
「ど、どうされたんですかー?」
ガレラによって招き入れられた部屋の先で、ドンズが深々と頭を下げている。
「…すまねぇ、あんちゃん。さっきは俺の態度で、不快な思いをさせたな」
「え…い、いえー…そんなー…」
────なんだこりゃ。どうなってんだ?
横柄であったドンズの不気味な態度の急転に、公太郎は戸惑うしかない。
「あんちゃんたちがいない間、ガレラにこってり怒られたよ。あのちっさな魔王サマにも悪いことをした。俺も頭ではわかってんだ、あの娘にはなんの関係もねぇ。だがよぉ、どうにも『淫魔』ってやつを目にしちまうと、俺ァ…カーッと血が上ってきちまいやがる」
「は…はぁー」
そう言われてもというのが、公太郎の正直なところだ。「淫魔の呪」がラピルの計測通りなら、ドンズの事情や心情は同じ男として理解できなくない。男性機能が、ある日突然自分を裏切ったなら…そりゃあまあ……相当ショックだろう。
だからといって、それはドンズが今しがた口にした通り、イリスには全く関係のないことだ。怒りや苛立ちをぶつけていい理由にはならない。
…ただ、少なくともドンズが、ひいてはドワーフたちが、それを「悪い」と思える文化や思考回路を持つことがわかったのは、ひとつ前向きな要素であった。お互いを思いやり、歩み寄れるのであれば、共存の道も開かれる。
込み入った話を聞く前に、公太郎は心が少し軽くなったのを嬉しく思った。
「私から一応、イリス様にお伝えしますがー、できましたら…それはぜひ、ドンズさんの口からも直接お願いしますー。きっと喜ばれますのでー」
…というか、それがまっとうな筋だ。
「ああ…あんちゃんの言う通りだ。ただよぉ、やっぱ魔王サマの前でってなったら、俺に…できるかなぁ…」
その時、煮え切らないドンズの禿げ頭をバシッと叩く音がした。妻のガレラである。
「できるかなぁ…じゃないよっ!!やるんだよっ!!…ったく、情けないねぇ…」
「うぐぐ…いてぇなぁ…」
まるで聞き分けのないドラ息子をしばきあげる母親のようなガレラの剣幕に、ドンズは呻いて縮こまった。
ほんと、さっきまでの亭主関白というか、横柄で尊大な態度はなんだったのか。こちら側からすれば気が抜けるほど滑稽だが、夫婦の実態なんて、えてして妻の方が強いと聞くし、こんなものなのかもしれない。
「ははは…まあ…はいー、早速ですが『淫魔の呪』について、お聞かせいただけますでしょうかー」
それはそれとして…と公太郎が椅子に腰かけながら話を促すと、ドンズとガレラの顔が途端に真面目なものとなる。
「その前に、俺の方から聞きたいんだが、あんちゃんは俺らァ…ドワーフについて、どのくらい知ってんだ?」
「どのくらい…と、言いますとー?」
「これから俺がする話はよぉ、ドワーフってものをきちんと理解してないと、わからねぇ部分が多いかもしれねぇんだ」
「ふーむー…ドワーフについて…ですかー」
顎を撫でながら、質問を噛みしめるように、公太郎が唸る。
────……といっても、どういうこと?
ドワーフってものを理解してるかとは、またえらく大ざっぱでつかみどころのない話だ。
この世界にて聞きかじった分では、ドワーフといえば、外見は質実剛健、内面は豪放磊落という、元々の世界の映画やゲームで目にしたそれと遜色ないイメージがあるにはある。…が、今聞かれてるのは、そういった印象の話ではなく、もっと具体的なことのような感じがする。もしくは、彼らの文化…とか?
────なんか、「ドワーフの独自の文化」ってのが近い気がするなー…
もちろん言うまでもなく、そんなこと知る由もない。だが仮に、理解してないとなると、ドワーフとは何か…とかいう歴史や哲学みたいな、知的で格調高いとこから入るのだろうか。
………ちんこの話をする前に?
「そんな大げさなもんじゃねぇよ。あんちゃんが知ってることを大体で並べてくれりゃいい」
公太郎が余計なことを考え始めたのを悟り、ドンズが助け舟を出した。…どうやら文化とか大仰な話ではないらしい。
「…そうですねー、私個人のイメージで…ということであれば、合ってるかはわからないんですが、ドワーフの方は皆、力が強く、体は頑健、それでいながら鍛冶と工芸細工が得意で、お酒が大好き…くらいでしょう…かー」
「なーんだ、考えすぎて損した」とばかりに気軽な感じで、指折り挙げていた公太郎の顔が、だんだん曇ってゆく。
…我ながら、それこそなんだ、この薄っぺらいステレオタイプな認識は。
「知ってるのは、ごくごく一般的なことくらい…ってとこだなぁ」
案の定、ドンズにも突っ込まれる。
「す…すみませんー。実はドワーフの方にお目にかかったのも初めてでしてー、その、ほとんど…生きた知識みたいなのはー…」
たまらず公太郎は謝った。額には脂汗が浮き、恥ずかしさに顔がほてってくる。
付け焼刃の知ったかぶりなイメージなんて挙げなきゃよかった。こんな薄さなら、最初から素直に「知りません」の方がよっぽどましだ。
よく知りもしない相手のことを適当に語るなど、「俺はあなたたちに興味ありません」と言ってるようなもんじゃないか。
…だが。
「責めてるわけじゃねぇよ。あんちゃんみたいな人間からすりゃ、ドワーフなんて普通…そんくらいの認識だ。別に、間違ってるわけでもねぇ。ただよ、ドワーフの俺からすりゃあ、やっぱりいくつか重要なことが抜けちまってる。そうなんで、ちょっとばかり遠回りに聞こえるかもしれんが、話はそっから入りてぇ。…かまわねぇか?」
「は、はいー。むしろお手数ですがー、よろしくお願いしますー…」
反省ですっかりしおしおになってしまった公太郎には構わず、ドンズが椅子に座りなおし、背筋を伸ばして姿勢を正す。
「まずはじめに…というか、今から言うことが最も大事で、他はオマケみたいなもんなんだが、俺たちドワーフは────」
ドンズはそこで一度言葉を切り、本日一番の真剣な顔で続けた。
「────デブ専だ」
TIPS:デブ専とは、世間一般から太ってると称される人をこよなく愛する方々の事です。




