表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
能無し勇者は知恵とLV1魔法でどうにかする  作者: (^ω^)わし!!!
56/60

地下城塞 3

記憶を消してもう一度やりたいゲームというのがある。そういうのが真に面白いゲームだと思う。


ここ最近でそう思ったのは、ロマサガ2リベンジオブザセブン。

その前にさかのぼると十三騎兵防衛圏。さらに行くとペルソナ5,4,3。ドラクエ11に5となるか。


FFなら10,7,6。テイルズオブならファンタジアとグレイセスFにV。そういえばフロントミッション5も面白かったな。スパロボならV。古すぎて世間様には全く知られてないし、正直クソゲーの範疇にあるバトルコマンダーも個人的には神だった。バトルコマンダーはいつか誰かと語ってみたいな。


ダンガンロンパの1と2はマストだし逆転裁判の123も間違いない。

アクションゲームだとなんだろう。バイオハザードとかは怖くてやらないし。


面白いと思うゲームはたくさんあるけれど、記憶を消すラインになるとなかなかないな。買うだけ買ってやってないゲーム中にも、買おうと思ってまだ買ってない中にも、買おうと思ってすらいない中にも、きっとあると思うんだけど。


習近平はどう?

 「誰だぁ、お前ら」


 物陰からふらふらとした足取りで声をかけてきたのは、背の低いやせぎすの年老いた男であった。


 そこらに群生する草のように、ぼさぼさの白髪とヒゲは伸び放題。頬と鼻先は不自然に赤くてかっているが、眼窩は暗く落ちくぼんで瞳の焦点もあっていない。ボロ布かと思うような衣服は所々が裂け、当て布すらされておらず、首周りからやせこけた胸板があらわになっている。体格からすると異様に長い腕は枯れ木のような細さで、ペットボトルほどの細長い筒を手にしていた。


 「見ねえ顔だなぁ。って…当たり前かぁ。どう見てもお前ら、ドワーフじゃねえもんなぁ。イヒヒ。ここで他の奴等(種族)を見るなんて何十年ぶりかなぁ。ひぃふぅみぃ…まぁ、どうでもいいけどよ」


 男はドカッと道端に座り込むと、筒に口をつけ、公太郎たちなどもう興味も失せたとばかりに人目もはばからず中身をごくごくと飲みはじめた。口の端から勢い余ってあふれた液体が男のヒゲをつたい、ぼろぼろの服を濡らしていく。臭いでわかるが、酒だ。


 「ふぅ~、不味(まじ)ぃ。…ゲフッ」


 男は悪態をつきながらも、きっちりと最後まで筒の中身を飲み干してからゲップをした。


 「まぁ…」


 あまりに品性の欠けるふるまいに、ラピルが眉をひそめる。


 男は空になって用済みの筒を植え込みに投げ捨てると、あっけにとられる公太郎たちを見て、「ヒヒッ」っと笑った。


 「なんだぁ、お前らまだいたのか。とっとと帰れよ。こんなとこ来ても得はねぇぞ。……いや…待て、お前ら酒持ってねぇか?」


 男がしわがれた声で長い手を物欲しそうに伸ばす。と、イリスが進み出て、男と視線を合わすようにしゃがみこんだ。


 「おじいさんは、ドワーフの方なんですか?」


 「んん~?なんだい、お嬢ちゃん。お嬢ちゃんからは俺がドワーフに見えないかい?イヒヒ。そりゃあ、そうかもなぁ」


 「そういうわけではないですが、わたしの知ってるドワーフの方とは少し…印象が違うというか」


 「ヒッヒッヒッヒ。そうだよなぁ。こんな細い腕のドワーフがいるかってんだよなぁ」


 男は骨ばった自分の腕を眺めて、自嘲気味におどけてみせた。


 「俺たちはー、ここの長か顔役に会いたいんだがー、どこに行ったらいいだろうかー」


 「顔役ぅ?」


 イリスの後ろから口をはさんだ公太郎に、男は露骨にめんどくさそうな顔をする。


 「ここにそんなご立派な奴はいねぇよ。見ろ、どいつもこいつも酒飲んでるか、寝てるかのロクデナシばっかだぜ」


 公太郎が男の指し示した先に目をやると、なるほど、そこかしこ路上や物陰に誰かが座り込んだり、寝そべっていた。街の迫力が強かったためか、脳がそういった者たちを風景の一部と捉えていたようだ。

 そんなあてどもない者たちを認識した途端、公太郎には美しいとすら感じたこの街が、教科書で見たアヘン窟…現代で言えばトー横かグリ下のような退廃的でどん詰まりの空間に思えてくる。


 「顔役じゃなくともー、友達や知り合いが多い人か、一番長いこと生きてる人でもいいー」


 「長く生きてるねぇ。まぁ…ドンズのじじいかな。俺より50年は無駄に生きてらぁ」


 ────50年…


 男がヒゲを撫でながら何気なく口にしたフレーズに、公太郎は内心、心が浮ついた。男だって相当な年齢であろうに、さらに50歳も年上の者が当然のように存命しており、それを不思議と思ってる風でもない。人間とは明らかに時間と寿命の感覚が違う。目の前の男はどうやら本物のドワーフらしい。


 この世界を遊び半分、観光でもする気分か、などと責められれば立つ瀬もないが、かの有名な種族とこうして出会えるというのは、公太郎にとってたまらなくテンションの上がることだった。


 そう考えれば、このどうしようもない男も、不思議とどこか可愛げがあるように見えてくる。


 「そのドンズという人はどこにー?」


 だが、公太郎はにんまりとしたくなる気持ちを抑え、平坦な口調を心がけた。そんな素振りを見せれば、この手の輩は際限なく様々なものを要求してくる。


 「まさか、タダってわけにはいかねぇよなぁ?ドワーフを訪ねようってんだ、お前らも手土産くらい持ってんだろ?」


 思った通り、男は素直に答えることなく、イリスへそうしたように公太郎にも物欲しげに手を伸ばしてきた。


 「出せよ、酒。言っとくが、カネなんか出すんじゃねぇぞ?ここじゃそんなもん、何の役にも立たねぇ。酒だ、酒」


 「酒、かー」


 「おうよ。安心しな、なにも全部出せとは言わねぇよ。ちょびっと酒を出しゃ、ドンズの居所くらい教えてやる。別に隠すほどのこともねぇ」


 ────…どうしたもんかな。


 公太郎は顎を撫でながら思考した。


 男のいうとおり、確かに酒は持っている。イリスたちが踏んだブドウを、本来であれば数年間寝かせなければならないところ、回復魔法にて酵母をブーストした急造の原始的な酒だ。数もひとつふたつ渡したところでどうということはない。


 だた一点、問題がある。


 ウマくないのだ、この酒は。…っていうか、はっきり言えば、マズい。かなり。


 ブドウの果汁をしぼったまでは良かったが、そこから酒を…となるとそうそう順調にいくものでもないらしい。


 先んじて試飲したリュナやラピルやゼナからの評判は、それはもう、どんなに良く表現しても、言わぬが華ってのがせいぜいだった。正直、ブドウ酒…あえてワインと呼ぶが、ワインの良し悪しなんてわからないと思ってた自分ですら、どうしようもないデキだと確信している。


 …そらそうだろう?素人が初めて作ったんだから。


 といっても、この酒の用途は、ここの有力者との話題のきっかけにするつもりくらいのものなので、出来不出来は…まぁいいんだが、そんなものをおいそれと渡してしまっていいものか、引っかかるところがないでもない。

 それはこの男に申し訳ないとかではなく、取引の対価としてマズい酒を出してくる者たちという、こちら側への評価、引いては魔王イリスの評判に関するからだ。


 …大げさかもしれないけど。


 「嘘はないようです」


 迷う公太郎の耳元でラピルがそっとささやいた。


 「ですが、話の中での彼の眼球の動きから、『ドンズ』なる者の居場所…方向や距離はほぼ特定できております」


 「…別に、渡したくないわけではないぞー」


 どうやらラピルは「酒を渡したくなければ、渡さなくていい」と伝えてくれてるようだ。が、それはそれで今後に角が立つから難しい。


 ────まぁ、渡しとくか。どのみち酒のデキなんてのは、すぐ明らかになるし。


 ならば波風を立てず、マルく収めてしまおう…と頭を掻こうとして、公太郎は自分たちがまだ虫よけのフードをかぶりっぱなしだと気がついた。


 さすがにこのままだと風体が怪しすぎる。


 「わかったー。酒は一本差し上げるので、ドンズさんとやらの居所を教えてくれー」


 「イヒヒ…話の分かるヤツは好きだなぁ」


 公太郎は了承しながらフードを脱ぎ、鞄から酒瓶を取り出した。途端、トンビが狙いすますように男がかっさらっていく。


 「…こりゃあ、ブドウの酒かぁ?…まだ、若いな」


 男は道具も使わず、指で瓶のコルク栓を強引に抜くと、団子鼻を近づけてクンクンと中身を嗅ぎだした。


 ────あのコルク栓、リュナがきっちり締めてくれたんだけどなー


 骨と皮しかないような男が見せた膂力の片りんに、公太郎は内心で舌を巻く。リュナも大きな戦斧を振り回す相当の力持ちだから、容易く抜けるような栓ではないはずなのだ。これが力が強いといわれるドワーフゆえなのか。


 「味はあまり期待しないでくれー。…それで?」


 「わかってるよ。この通りをどんつきまで行って、左に曲がれ。さらに進むとくすんだ赤色のボロ家が見えてくる。ドンズのくそじじいはそこだ」


 公太郎の予防線と催促に、男がめんどくさそうに早口で答えた。


 「もうお前らに用はねぇよ。さっさと失せな」


 ────そりゃ、こっちのセリフだぜ…


 男の追い払うようなジェスチャーに、公太郎が出かけた言葉を呑み込んで肩をすくめる。


 しかし。


 「ありがとうございます。おじいさん」


 イリスは男の無礼さなど気にも留めず、フードを脱ぐと、きちっとお辞儀をしてみせた。会釈程度ではない。腰の角度も45度ほどの礼儀正しい所作だ。


 ────さすがはイリスだなー。…そこまでしなくてもいいだろうに。


 …などと思いつつ、こういう際、器の違いをまざまざと見せつけられたような、若干のいたたまれなさが胸に去来するのは自分だけだろうか、と公太郎は自問自答するハメになった。


 その時。


 ゴトッと重たい音を立てて、酒瓶が路上に落ちた。瓶口から石畳へ、ブドウ酒の赤い液体がぶちまけられる。


 「い…淫…魔……!?」


 露になったイリスの額の角に、男がのっぴきならない様で硬直していた。


 「え…あの…、おじいさん?」


 「淫魔が、なぜっ…ここにいるっ!!」


 男は酒焼けした鼻や頬まで真っ青になり、ガクガクと全身で震えながら脂汗を流している。その異様な様子に今度はイリスが硬直した。


 「お…おいー、あんた…大丈夫かー?」


 「来るなっ!!来るなぁっ!!」


 心配する公太郎などに目もくれず、男は距離を取ろうとやたらめったら無茶苦茶に手を振り回す。


 「よ、よせよー。この娘にあたるだろうー!?」


 公太郎は庇うように前に出ると、固まったイリスをラピルに預けながら、語気を強めて抗議した。…が、すでに男のすがたはそこにはない。


 公太郎の目がわずかに捉えたのは、手に入れた酒も放り出して、悲鳴を上げながら路地の奥へと走り去る男の影のみであった。


 ────なんなんだよ、急に…


 残されて無惨に転がった酒瓶を前に公太郎は困惑する。


 男の態度はイリスに対してこれ以上ないほど失礼だったが、今の公太郎の胸にあるのは憤慨よりも意味不明という方が大きい。


 わずかにわかるのは、どうやらドンズとやらに会って、即、協力を得られる…とはいきそうにないことだけだった。

TIPS:淫魔はいろいろな種族と子をなすので、純血種の淫魔というのは存在しない。なので、イリスにはエルフやら獣人やらいろいろな血が入っており、当然、淫魔でもある。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ