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能無し勇者は知恵とLV1魔法でどうにかする  作者: (^ω^)わし!!!
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結婚するために

最近習近平、おこね。


ところでロマサガ2リメイクをはじめたのだけど、最終皇帝の名前はもちろん習近平。

それはいいとして、ロマサガ2って中国で売ってるのかな?

だってネタバレになっちゃうけど、ロマサガ2って帝国が最後は共和制になるでしょ?

そういうの結構、いやがるじゃん。

 「愛してるわ、この世の誰よりも。ハムタロ、アンタを」


 前振りも、雰囲気も、ロマンティックさもなく、あっさりと潔く、リュナは言ってのけた。


 「リュ、リュナー…?」 


 「アタシだって女だから、ホントはもっとムードとか大事にしたかったけど、もういいわ。ラピルの言うことだって一理あるし。種族の寿命だけの話じゃない。魔族(アタシ)と違って人間はもろいから、伝える前にアンタがいなくなっちゃうかもしれない。そんなのアタシ、嫌」


 しなやかな指でリュナがツインテールをたなびかせると、髪から甘い香りがはじけ、公太郎の鼻をからかうようにくすぐる。


 「それに、いつ言い出そうかとかゴチャゴチャ考えるのがバカらしくなっちゃった。今か今かなんてチラチラ機会をうかがうなんてのも、全然アタシらしくないし。だからもう、スパッといくことにしたわ」


 そう言って白い歯をみせながら、はにかむように笑った。


 「お、おぉー…」


 健康的で、裏表のない、まっすぐな心根が現れるかのような顔に、公太郎の口から、言葉にならない感嘆が漏れる。


 ────ま…まぶしい…


 思わず目を細めた。それほどまでに、リュナがまばゆい。


 どんな生き方をすれば、想いをここまでストレートに、まるで無垢な子供がそうするように、あけすけにできるものなのか。


 好きな異性に告白など、考えもしたことない公太郎には、まったく信じがたいことだった。それをいともたやすくやってのけるリュナに、彼女を包む陽の気に、圧倒されるしかない。その輝きが、公太郎の胸がぎゅっと締め付けてくる。


 「あ、ありがとうリュナ、すごくうれしいー。女の人にそんなの言われたことないからー」


 リュナの気にあてられ、公太郎もまた、心のまま、感じたまま、素直に感謝を述べた。


 しかし…

 

 「けど…俺は、君に釣り合わないよー…」


 断腸の思いで拒絶の文言を口にする。


 心臓を手でつかまれるような疼痛を思えば、いかな恋愛経験の乏しい公太郎とてリュナに対する心がどうであるか気付かぬはずもない。自分もおそらく、リュナが好きだ。…いや、愛してる。きっと、間違いなく。


 だがそれは、芸能人や著名人に恋するようなものだという感覚が公太郎にはあった。決して叶わない、無謬な恋であると。


 むしろ、叶ってしまってはならないとさえ思える。リュナは高根の花そのもの。自分などが手折って、胸にしまい込んでいい花ではない。もっとふさわしい(誰か)がいるはずだ。


 なにせリュナと自分はあまりにも住む世界が違う。とびきりの美人で、強くて、自信満々で、地位もあって、そんなリュナの横に、良くて平均…率直に見ればそれ以下の自分が並び立つていいはずがあろうか。


 「…釣り合わない?アンタが、アタシに?」


 公太郎の拒絶に、たちまちリュナの顔が曇った。まぶしい笑みは立ち消え、眉間に深いしわを寄せて、公太郎を遠慮なくジト目で覗き込んでくる。鼻の頭が触れ合いそうで、公太郎は押し込まれるように背骨を反らせはじめた。


 「そりゃあ…そうだろー?だってリュナはすごい美人だし、強いし、芯が通ってて、何度も俺を助けてくれる優しい人だー。それに比べて俺は…見た目はよくないし、頭も別に…だし、戦いなんか全然役に立たないし、目立つ取柄なんか何もないー…」


 「………ふーん?」

 

 弁明する公太郎を、リュナは間近でまばたきもせず、怪訝そうに観察している。互いの吐息がかかりそうな距離で、公太郎は、兄のフェルズと同じ紅蓮の瞳に反射する自分の顔が、あれこれと己を卑下する自分の顔が、ひどく情けなくて嫌になった。


 「…アンタ、なんか勘違いしてない?」

 

 のけぞった公太郎の背を、「シャンとしなさい」というようにリュナの手が叩く。


 「アタシは、アタシの()()()に従って自分の気持ちを宣言しただけ。アンタがアタシをどう思ってるとか、問題じゃないの」


 「決まり…だってー?」


 「そう、決まり。知ってるだろうけど、アタシ…男が大嫌い。アニキは別だけど、それ以外…まとめて死んだって、全然構いやしない」


 リュナはさも当然のことのように言い切り、「フンッ」と鼻を鳴らして前髪をかきあげた。


 「だけど…これでもアタシ、大魔王の娘で、魔王の妹で、貴族なの。そんな立場の者に、いつまでも我儘が許されないことくらい、わかってたわ。面倒くさいけど、貴族には貴族なりの責任ってものがあるから。遠からず、たとえ形だけでも、男を愛さなければならない日が来る。だからアタシ、決めてたのよ」



 「いつか、呪熱の痛みを知ってなお、アタシに触れる男が現れたら、その人を愛するって」



 右手を肘まで覆う手袋をはずし、リュナは天に向けて手のひらを掲げてみせる。それは白く長い指で、つかめるはずもない陽光を手にしようとするかのようだった。


 「でも、そんな男はきっと現れないと思ってたわ。つい、この間まで」


 当然つかめるものなど何もなかったが、リュナは満足気に拳を握ると、挑むように公太郎を指さす。


 「いい、ハムタロ?アンタはアタシの醜い傷を消してくれた恩人。元になんて戻るはずもないと思ってたアタシの誇りを、アタシの人生を、アタシという存在を、蘇らせてくれた人。心から感謝してるわ。…けどね、アタシがアンタを愛してるのは、それが理由じゃない。アンタはアタシに触れた。呪熱の痛みを知りながら、アタシの傷を治すため、アタシを助けるため、触れてみせた。…二度も!!」


 「あれは…あの時は、そうするしかなかったからだー。俺が呪熱を恐れてないとかじゃないー」


 リュナの力強い口調に、公太郎は彼女の中で、どこかハムタロという虚像が実態以上に肥大化してる気がして、あわてて否定した。


 確かにリュナの言う通り、二度ほど触れたことはある。とはいえ、一度目も、二度目も、リュナの傷を癒すためには直接触れるしかなかっただけだ。決して、呪熱が怖くなかったわけではない。他に手立てがあったなら、必ずそちらを選んだと自信を持って言える。

 もし、リュナが自分(公太郎)を、物語の勇者みたいな、恐怖を超越した傑物のように思っているのであれば、とんだ過大評価だ。


 だが、リュナは焦る公太郎を見て、おかしそうに笑う。


 「ううん、そこがいいのよ。痛みを知って、怖くて、それでも触れる勇気がいいの。それでもアタシを救おうとする優しさがいいの。そこが…愛しい。アンタが、アタシに釣り合わない?…冗談はやめてちょうだい。アタシの知る限り、アンタほどの男はいない、…たぶん、アニキよりも。…外見?頭?強さ?…くだらない。アタシがアンタに惚れてるのは、その心よ!!」


 「それっ、わたしもわかりますっ!」


 突然リュナの背後からイリスが声をあげた。全身で意思を表現しようと、イリスは胸の前で両の拳を握りしめ、うんうんと力いっぱい同調している。


 「ハムタロは人間の王都でただ一人、寄る辺のないわたしに手を差し伸べてくれました。わたしはその時、おばあさまがおしゃってたことを、実感を持って理解できたんです。『男の価値は顔でも恩寵(オリジン)でもなく、心だ』って」


 「ふふふ…さすがはアタシの義妹だわ、イリス。男を見る目がある。アナタもハムタロのことが好きなのね」


 「えっ…!?…も、もちろん…ですけども…え、えへへ…」


 リュナの返しに不意を突かれ、イリスが真っ赤になってうつむく。


 「…そういうわけだから、ハムタロ。これはアタシの決まりで、アタシの都合。だから、アンタは黙ってそれを受け取ってればいいのよ。でも、安心して。別に対価を求めたりしないわ。アタシを愛してくれなんて言わない。アタシが勝手にアンタを愛するだけ」


 言いながら、自分の言葉が腑に落ちなかったのか、リュナが首をかしげる。


 「……いいえ、違うわね。それじゃまるで、アタシが決まりで仕方なく愛してるみたい。そうじゃないわ、だって決まりなんて本当はもうどうでもいいんだもの。たとえこの先、いつかまた、アタシに触れる男が現れたとしても、アタシは絶対に(なび)いたりしない。アタシの愛はもう、アンタだけのもの…」


 「俺だって君を愛してるぞー、リュナ!!」


 「…えっ!?」


 たまらず、公太郎はリュナが言い終わるよりも前に叫んでいた。これほどまで愛を語ってくれる彼女を前にして、自分なんてふさわしくないとかなんとか…ああだこうだとうじうじしてるのが我慢できなくなったからだ。

 しかしそれでも、なんというか…相手の気持ちを知った上で…となると、時すでに男として情けなく、かなりダサい。が、せめてできうる限りの正直さと誠意をもって向き合いたかった。


 「う、嘘…」


 リュナが顔から火が出るほど真っ赤になって、両手で口を覆う。


 「嘘じゃないっー。なら、証明してやるー」


 「証明する」と見得を切ったものの、この瞬間において公太郎の頭に具体的なプランは何もなかった。


 だがどうやら、一度でも口火を切ってしまえば、想いというのはあとからあとから勝手にあふれ出てくるものらしい。それをシンプルに表現すれば、おのずと行き着くとこに行くという出所不明の予感めいた確信がある。


 全身の毛が逆立つような衝動に身を任せ、「ええいっ、ままよっ」と公太郎は大きく息を吸い込んだ。



 「リュナーッッ!!俺と…けっ…結婚してくれー!!!!」



 「け、結婚っっ!?」


 いきなり公太郎の口から出てきた単語に、リュナが目をぱちくりさせて息をのむ。


 「…えっ………あれっー…!?」


 やや遅れて、公太郎も目をぱちくりさせた。

 


 ────い…今、俺は…何を言ったんだー!!?



 脳の回転が止まり、頭が真っ白になる。


 たった今、自分で口にしたことなのに、公太郎は極めて慎重に、数秒前の自分の記憶をさかのぼってみた。


 ────けっ…結婚してくれって、言ったのか?お…俺は、まじで、本当に!?


 自分の口走った重大さに青くなり、額と背中に冷や汗がドバドバ噴き出す。


 結婚なんて、人生で想像したことすらない。だからもちろん、そんなことを言うつもりはなかった。だというのに、ラピルが許嫁だの嫁ぐだのセンシティブなフレーズを何度も口にしたものだから、脳内がそっちの方向へ染まってしまってたみたいだ。


 ────うおおおおおおおおおおお、なにやってんだ、俺はー!?????


 無論、言った言葉に嘘はないが、勢い余ってとんでもないことをしでかしてしまった。


 女性に告白した経験すらないのに、プロポーズ。付き合ってもないのに、プロポーズ。


 前振りも前置きも、順序も段取りもあったもんじゃない。考えなしに、いきなり本丸へ突撃するやつがあるか。

 我ながら人間関係の距離感がバグってて気持ち悪いったらありゃしない。あぁ…やってしまった。キモイって思われたらどうしよう…。ってか、普通は思うよなぁ…




 「け…結婚は、ダメよ…。それは…そこまでは…アンタとできない…」


 「……リュナ……あ、ああ…そ、そうだよなー。うんー、まあ…そりゃあ…そうだー」


 やはり…というべきか、リュナは拒絶の意思を示した。いきなり結婚などと言われて、「うん」という者がいるなら、逆に見てみたい。これは完全な公太郎の落ち度だった。

 それなのに、リュナは唇を嚙み、うつむき、申し訳なさそうに肩を震わせている。


 「き、気にしないでくれー。俺もなんだか…どうかして…」


 リュナの様子に公太郎は必死に場の空気を取り繕おうとした。…が、公太郎は自信が思ったようなフォローを最後まできちんと言い切ることができなかった。


 つらかったからだ。


 リュナの拒絶は予想できたこととはいえ、やはり色恋沙汰のしくじりというのは、どうにも心をくじかせる。



 「…だって、呪熱があるから」


 重苦しい沈黙の雰囲気になりつつあるのを嫌ったのか、リュナがぼそりとつぶやいた。


 「アタシ、アンタとロクに触れ合えないでしょ。そんなのと…結婚してもらうなんて、とてもできないわ…」

 

 「………なんだってー?」


 公太郎の心臓がドクンッと派手に撥ねる。


 そんなの…と言ったのか?プライドの高いリュナが…自分を?


 …いや、それよりも。


 「…呪熱が…無ければ、俺と…一緒になってくれる…のか?」


 心臓が高鳴る…というより、鼓動で突き破ろうとしているようだ。胸から伝わる全身の振動に難儀しながら、公太郎は声を絞り出した。


 「…当たり前じゃない、そんなの」


 「う…ま、まじかー」


 さも当然と、あっさり言い切ったリュナに、腰が抜けそうになる。


 「でも…そんな『もしも』の話をしたって仕方ないでしょ。だって、どうしようもないんだもの」


 「…なんとかするよー」


 「え…?」


 怪訝そうにリュナが顔を上げた。


 「リュナの呪熱は、俺がーっ!なんとかしてみせるー!!」


 困惑するリュナを勇気づけるために、自分(公太郎)自身を鼓舞し、決意をゆるぎないものにするために、公太郎が声を張る。


 だが。


 「か、簡単に言わないでよっ!!それが…どういうことかわかってるの?!」


 「『恩寵の宝珠(オリジン・コア)』を手に入れてみせればいいんだろうー!?」


 「…わ、わかってるじゃない。…そんなの、いくらアンタでも不可能よ…」

 

 リュナのセリフの最後の方は、ほとんど消え入るような声だった。


 ────はい、そうですかとは信じてもらえないみたいだ。

 

 それもやむないな、と公太郎は思う。


 この世界の者にとって、己の在り方すら変えてしまう『恩寵の宝珠(オリジン・コア)』の希少性。モノによっては国すら買える、などと言われているのは記憶している。


 とはいえ…正直、「国すら買える」という比喩は少々大仰に過ぎると言いたいところだ。


 しかし数日前、かの暴凶竜グリモアが遺した膨大な宝物の数々、その中にすら宝珠はひとつたりとも見つからなかった。それを踏まえると、なるほど、リュナにしてみればかなり無理筋の話に聞こえるだろう。


 けれども、後出しじゃんけんのように思われるかもしれないが、いずれにせよ宝珠は手に入れるつもりだったのだ。

 「恩寵」などと図々しい名を持ちながら、呪いでしかない力に苦しむリュナを放っておくつもりは毛頭ない。


 「やってみせるさー。俺からすれば、リュナの方が宝珠よりも価値があるんだー。約束するー。きっと、やってみせるぞー」


 「ハムタロ…」


 できる限りの力強さを込めて宣言する公太郎に、リュナが泣き笑いのような顔をした。


 「だから…そのあかつきには、俺と…結婚してくれー」


 「……………はい。……喜んで」


 リュナがうなずくと、涙があふれて零れ落ちる。


 公太郎は思い切って大股で踏み出すと、リュナを腕の中に抱きしめた。


 マント越しに触れるリュナの肩は、巨大な戦斧を振るって戦う姿からは想像がつかないほど、華奢で、細い。


 ────必ず、やり遂げる。


 手のひらにすっぽりと収まったリュナの肩の感触に、公太郎は心に誓いを立てた。


 今は無粋なマント越しにしか触れ合えない。けれども、必ず乗り越えてみせる。


 言っておくが、想いや誓いや決意だけが先行して、まったくの無策や展望がないというわけではない。恩寵の宝珠(オリジン・コア)の入手、少なくとも…そのとっかかりに至る道はすでにイメージしてある。


 そしてそれは幸いなことに、イリスの「街をつくる」にもリンクしているのだ。


 ────街をつくり、リュナを救う────


 目標がちょっとばかり大きくなったに過ぎない。


 ────必ず、やり遂げる。

TIPS:話の流れで主人公が結婚する方向になってるけど、本当はこんな展開、予定にはなかった。というか、だいぶ前から予定外のことばかりで、勝手に話が進み、完全にアウトオブコントロールとなっている。書きながら「へー、そうなんだ」とか言ってる日々。できることはせいぜい、キャラの格が落ちないように調整することだけ。もう見守るしかないね。

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