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プロローグ

僕は山田一貴。

38歳、独身。


中堅IT企業の社員で、仕事は一般事務。

デスクワークで毎日、パソコン画面や書類とにらめっこだ。


僕は、いたって普通な人間。

特別何のスキルもない、平凡な社員だ。

積極的でなく、余計なことはしないから、

トラブルも起こさない。


仕事は18時に終わり、そのまま帰宅。

スマホでYoutubeを見ながら晩御飯、ゲーム、お風呂、そして就寝。


そんな日々が毎日続く。


平和だった。


そんな、ある日。

終業してから電車に乗り、

15分で家の最寄駅。

あとは徒歩10分ほどで家に着く。

いつも通りだ。


その日は違った。


東京都某駅

いつもの電車を最前列で待っていた。


特急電車が通り過ぎようとしていた

その時、ーーー


ドギャ!


右方から聞き慣れない大きな音。


思わず右に目をやった瞬間ー


大きな物体が目の前に迫ってきた

何の反応をする暇もなく、ぶつかる。

身体が左へ吹き飛ぶ。


駅のホームにある柱に、

後頭部が叩きつけられた。


大きな衝撃。


僕は何が起きたのかの分からないまま、

眠くなるのを感じた。身体が動かない。

視界が狭くなっていく、、、。


僕は眠った。



何時間経っただろう?

手足はあるが、感覚がない。


周りは全て真っ暗だ。


(夢の中?)


(なんだ?ここ?)


(、、、駅に居たよな?)


(病院か?)

何かにぶつかった記憶はある。

その後のどうなったのか、さっぱり分からない。


(夢ならそのうち覚めるだろう。)


キョロキョロして、周りを見たが、

真っ暗でしかない。


真下を見たとき、白い点があった。


しゃがんでみる。


白い点は近くにあったようで、

ずっと下の方に見えた。


感覚のない手を伸ばした、その瞬間。



小さな白い点、いや小さな光は大きくなり、

一瞬で辺り一面に広がった。


光に包み込まれる。


あまりの眩しさに目を閉じた。



そっと目を開ける。

眩しくて、目が眩む。


(青空だ。)


木々の間に広がる青空が見える。


華山一貴は、横たわっていた。

風が優しく顔を撫でる。


ゆっくり起き上がる。

手足の感覚が戻っている。


(やっぱり夢だったか。)


「ふぅ、、、」

深く息を吐き出し、顔を上げる。


「ん⁈」


「な、なんだここ?」

「ここ、、、どこだ?」


(駅のホームに居たよな、、、)


周りを見渡す。

木々が囲んでいる。


(森⁇)

(なんでこんな所に⁇)

(そもそも、どうやって⁇)


「ど、どうなっている?」

自分の姿に纏う服に目をやる。

みすぼらしい、お粗末な服だ。

「草履、、、」


事態を把握しようとするが、

駅のホームからここまでの流れの記憶がまったくない。


(ともかく、、、身体は無事だし、家に帰るか。)

少しよろけながらも立ち上がる。


(まずはここがどこか、調べよう。)

(あとは家に帰って、駅に行けば、荷物もあるし、状況も分かるだろう。)


(とりあえず歩くか。)


華山一貴は、森の中に向かって歩き始めた。


森の中は、日差しが木に遮られ、少し暗く、

ひんやりとした空気が漂っている


(なんか身体が軽いな。)

土の柔らかいせいだろうか?


行く先の木の根元には苔が生え、

所々に見慣れないキノコが生えている。


緑が眩しく感じる。


しばらく歩いて、気付いた。

(これ、迷ったらヤバいな〜。)


目の前には木々が立ち並び、

奥は真っ暗になっている。


立ち止まって、真上の空を見上げる。

(ここの木、めちゃ背が高いな。)

(樹齢何年だろう?)

(日本にこんな森があるということは、

ここは富士の樹海か?)


「だとしたら、やみくもに歩くのはマズい!」

(方向!北はどっちだ?)


太陽を探そうとしたが、背の高い木々で見えない。


そのとき、ーーーガサッ!


木の後ろから、物体が飛び出てきた。

音に気付いて、目をやる。


液体の塊というような物体。


目の前に現れた、見慣れない物体に戸惑う。

(・・・)

(これは、、、確かスライムってやつか?)

(なんでこんなものがいるんだ?)


(ここは日本だぞ、、、

いや、世界のどこにもいないはず。)


(ゲームだけのキャラだろ、、)


目の前に現れたスライムに戸惑っている間、

スライムは小刻みに動いていた。


次の瞬間。ーーー


スライムが何かが吹き出した!ドンッ!


液体が左肩にぶつかる。

「痛っ!」

こぶしで殴られたような痛みが走る。


さらにスライムは続けて、液体を吹き出してきた。ドンッ!ドンッ!


お腹に、右脚にそれぞれ痛みが走る。


「止めろ!」

「止めてくれ!」


スライムは尚も吹き出そうとしている。


「止めろ!」

そう言いながら、背を向け、スライムと逆方向に走り始めた。


しばらく走って、後ろ向くとスライムの姿はない。追いかけて来ないみたいだ。


木に寄りかかって、服をめくる。

当たった所が少しアザになっている。


「それにしても、、、スライムとか居るんだな富士の樹海には。」


周りを見渡したが、他に何も居ない。


(とりあえず方角を確認しないと。)

(たしかー、朝は太陽のある方が東、夕方は西、正午に近い場合は南。だっけな。)

(太陽が見えないとどうにもならないな。)


少し考えて、木を登り始めた。

両親の生まれが田舎だった事もあって、

小さい頃は田舎暮らしであった。

近くに林があり、よく木に登っては怒られていたものだ。

木登りが得意というほどでもないが、よく登っていた経験からコツをまだ身体が覚えていた。


幸い登りやすい木で、枝も多くしっかりしていた。久しぶりに登るのでスルスルとまではいかないまでもスムーズに登っていった。


木のてっぺんまで登り、空を見やる。


眩しい太陽が2つある。


「は?」

思わず、声が出る。


目を閉じて擦って、再度見やる。


やはり太陽が2つある。

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