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第1章4話「ふつつかものですが宜しくお願いします」




――リシェル視点――



――半年後、フリーデル帝国――

 





「ニクラス王国は滅びたようだね」


皇帝専用のカフェテラス。


向かいの席に座る婚約者が、報告書を読みながらポツリと呟いた。


人払いがされているので、誰かに聞かれる心配はない。


「ほとんどの貴族が帝国側についてしまっては、王国を維持することは不可能でしょう」


いの一番に王国に見切りを付け「帝国の傘下に降りたい」と言ってきたのは、クラーラ様の実家のハイネ公爵家だった。


あれほど王家に取り入っておきながら、王国が危うくなったら、いの一番に祖国を裏切るのだから呆れる。


ハイネ公爵家が寝返ったことを皮切りに、他の貴族も次々に帝国の傘下に降りたいと言ってきた。


最後には王都に残った王族を残し、ニクラス王国には誰もいなくなった。


「王族は全員処刑されたようだよ。

 これで君たちの一族は、ニクラス王家にかけられた呪いに悩まされなくて済むね」


ニクラス王家の残党狩りを命じた張本人がよく言うわ。


王家から百万年も休暇を貰ったから、別に殺さなくてもよかったのに。


婚約者にとっては私の問題ではなく、自分の子供や子孫が関わる問題なのだ。


自分たちの子孫を縛る呪いの元は排除しておきたいのだろう。


「ニクラス王国の平民には、魔の森のモンスターの被害は出なかったみたいだね」


王族と我が家のゴタゴタに巻き込まれて、平民が怪我をするのは嫌だ。


なので、私とお父様でうまいことモンスターを誘導したのだ。


「ニクラス王国を食いつぶしていた貴族連中は、どうしようか?」


私の婚約者様が邪悪な笑みを浮かべる。


婚約者の容姿端麗な顔に黒い笑みは良く似合う。


銀色の長く美しい髪、アメジストの瞳、きめ細やかな肌、エカード様は絵に描いたような美青年だ。


エカード様は体を鍛えているので、元婚約者のようにひょろひょろしていないところがいい。


国王と王太子がポンコツなので王妃様亡き後、貴族たちは民に重い税金をかけ私腹を肥やしていた。


「彼らの領地を没収し、彼らが貯め込んだ私財を民に返し、民の痛みを学ばせるために鉱山で労働させるのが良いと思います」


死ぬのは王族だけで十分だ。


「君がそう言うのなら、そうしよう」


婚約者がにっこりと笑う。


「全てが片付いたら、結婚式を挙げよう。

 君の花嫁衣装が早く見たいな」


「あまり派手な結婚式は困りますわ。

 お色直しも二回までにしてくださいね」 

 

はじめに釘を刺しておかないと、私にベタ惚れの婚約者は、何着もドレスを着せたがる。


「それは困るな。

 俺の髪の色の銀色のドレスと、

 俺の瞳の色の紫色のドレスと、

 それと結婚式の定番の白いドレスに、

 今流行りのサーモンピンクのドレスに、

 明るいカナリアイエローのドレスも君に似合うと思うし、

 デザイナーがロイヤルブルーと翡翠色の良い生地が手に入ったと言っていたから、その色のドレスも君に着せたい!」 


ほら釘を刺したそばからこれだ。


「ドレスの型だってAラインに、プリンセスラインに、ベルラインに、マーメイドラインに、スレンダーラインに、エンパイアラインに、ミニ丈に、ロングトレーンドレス……とにかく色んな型のドレスを君に着せたいんだよ! 

 なのに、お色直しが二回だなんてあんまりだ!」


婚約者が涙目で訴えてきた。


「私足が太いので……ミニ丈はちょっと……」


体を鍛えているので、貴族のお嬢さんのようにほっそりとした美しい脚ではないのだ。


できるだけこの太い足は、ドレスのすそで隠しておきたい。


「じゃあミニ丈のドレスは、俺とふたりきりの時に着て貰おうかな?」


婚約者が席を立ち、対面に座っていた私に近づいて来る。


「エカード様、言い方がいやらしいですよ」


「うんそうかもね。

 子供の頃からずっと想っていた人と、ようやく婚約できたんだ。

 ちょっとくらいエッチな想像をするのもだめかな?」

  

私の前まで来たエカード様が膝を突く。


エカード様が上目遣いで悲しげな目で見つめてくる。


この顔で見つめられると弱い。


「だめ……ではありませんが」 


「ありがとう」


エカード様は私の手を取り、にこっとほほ笑んだ。


美形の笑顔が尊い……!


モンスターと戦うのには慣れてるが、元婚約者に蔑ろにされてきたので、恋愛の駆け引きや、スキンシップには慣れてないのだ!


「照れるリシェルも可愛いね。

 今俺の中で、愛らしい君を誰にも見せずに独占したい気持ちと、みんなに見せびらかしたい気持ちが戦っているよ」 


「どちらも、ほどほどにお願いします」


エカード様との出会いは、彼が辺境伯の領地に遊びに来たとき。


ガーゴイルに襲われているエカード様を、私が助けたのがきっかけだ。


私が七歳、彼が十歳のときの出来事だ。


以来エカード様に懐かれてしまって、一度は私とエカード様の結婚の話も出たほどだ。


しかし我が家には初代勇者から受け継がれた呪いがある。


だから丁重にお断りしたのだ。


呪われた我が家の血が皇族に入ったら、フリーデル帝国はニクラス王国の国王に操られ、帝国は王国の属国になってしまう。


父が百万年休暇をもぎ取り、王族が死に絶えたことで、そんな憂いはなくなった。


父と私とエカード様で、私とエカード様の結婚に反対する勢力を懐柔(かいじゅう)しているところだ。


「それは約束できないな」


そう言ってエカード様は私に口づけした。


モンスター相手なら百戦錬磨(ひゃくせんれんま)の私ですが、エカード様にはなかなか勝てそうにありません。






――終わり――








読んでくださりありがとうございす!

少しでも面白いと思っていただけたら、広告の下にある【☆☆☆☆☆】で評価してもらえると嬉しいです。執筆の励みになります。


※エカードとリシェルが出会った年齢を変更しました。

 エカード8歳→10歳。リシェル5歳→7歳。

 第二章を書くにあたり、出会った年齢が幼すぎたので変更しました。


※第二章の投稿開始しました!

こちらも宜しくお願いします!


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― 新着の感想 ―
[良い点] 楽しく読めました! 王国でまともだったのが王妃様だけだった悲しさ、もしもだけど王妃様生きてたら国が滅ぶまでは止めれたのかな? 呪いはだめだよね、
[気になる点] 不死鳥の葉 [一言] 鳥なのか木なのか気になるやないかーいw
[良い点] 面白かった。 [気になる点] 不死鳥の葉ではなく不死鳥の羽(は)の間違いでは? ずっとそこが気になってます。 [一言] 楽しいストーリーを拝読しております。
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