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えっ、ルナ!?

「私が食い止めましょう。」ルナがメガネをクイッとさせて提案した。「私が町の外に出て戦います。」

「大丈夫なの?」流石に心配で訊ねる。


 ルナは職業レベルとしては7、80レベルあると思われるが、たったの一人。

 相手はあの数のジャイアントだ。


「俺とリコと3人で入り口を固めて耐えたほうが良いんじゃない?」

「入り口まで登って来れる道ができてしまった以上、ジャイアントは簡単に登ってこれます。私はともかく、ケーゴとリコが厳しい。申し訳ないですが、助けながら戦うのは私に取って厳しいかと思います。」


 きつい言葉だが事実だ。

 非力で申し訳ない。


「それに私の場合、ここで戦うより、屋根のない屋外で戦ったほうが相手を殲滅しやすいと判断します。」

「屋根?」


 ルナは俺の素朴な疑問には答えず、なにやら集中を開始した。


「サモン、極炎無絶強靭鎧。」


 まばゆい光とともに、ルナの目の前に異空間に繋がっていそうな渦が現れ、そこからフルプレートの鎧がせり上がるように出現した。

 って、見たことあるぞ、これ。

 カリストレム攻防の時のジェット鎧じゃねえか。


 え!?

 あの時のロボってルナだったの??


 屋根がどうこうってことは、これで飛び回ってジャイアントと戦うつもりか。


「ベクター! ベクターじゃないか!!」

「あんたが、ベクターの持ち主じゃったか!!」


 俺がルナに話しかけようとする前に、なんだか辺りにいたドワーフたちが騒ぎ出した。

「ベクター?」

 ルナは不思議そうに首をかしげた。

「その鎧のことじゃ。」

「こんなところで再会できるとは!」エルダーチョイスさんも大喜びだ。「元気そうで良かった!!」

「??」


 ルナも俺もドワーフ達の謎の盛り上がりに困惑。

 特に俺。

 いろんな展開が積み重なって完全に思考停止中。


「開け。」

 状況から立ち直ったルナが鎧に向けて命令すると、鎧の前面がパカリと開いた。

 

 やっぱロボじゃん。


 しかも、生体系のロボだ。

 鎧の中が、ちょっと生々しい赤さで、筋の入った・・・まあぶっちゃけ肉で出来てる。

 しかも、なんか微妙に動いてない?


「装着!」

 ルナがそう言って鎧の前に立つと、鎧のほうがルナを取り込むように動いて合体、カリストレムで見かけたあのジェット騎士になった。

 

 あの中に入ったか・・・。


「僕が外で、ジャイアントを片っ端から倒します。ロックリザードやサンドウルフまでは抑えきれないと思いますので、そっちは任せます。」


 一人称変わった!

 ボクっ娘?


「僕が外にツッコんだら、急いで魔術師たちに装置に魔力を入れさせてください。たぶんそんなに長く持ちません。」

「えっ? 長く持たない?」

「充電不足で出力が安定していません。カリストレムから期間が短すぎました。でも、他に方法も時間もありません。僕は騎士だから行きます。」

 ルナが両手に構えた柄からブオンと二本の紫の刃が伸びた。

「後はお願いします。」

「分かった。すぐに終わらせる。絶対にアイツらを吹き飛ばすから。だから必ず戻ってきてくれ!」

 ルナは答えずに激しい工房の未だ続く入り口の方に振り向いた。

「ルナ! 絶対に生きて帰ると約束してくれ!」


「そうだ、ケーゴさん。王女殿下から頼まれた報酬の前渡ししておきます。」

 ルナは俺の返事には答えず、背中を向けたままそう言った。

「報酬??」


「僕がエルナです。では。」


 え?

 えっ!?

 

 ルナのジェットが火を吹いた。

 旋風を後にルナが飛びたって行く。


 え?

 エルナって?

 ルナがあの時の女子高生なのか!?


 ルナは天井近くまで飛び上がり、魔術師達を越えると、急降下して入り口から出ていく。


 俺は慌てて入り口に駆け寄って外を見る。


 入り口の外で、ルナは早くも押し寄せるジャイアントを斬っては捨て斬っては捨てしていた。

 入り口にはエルナが倒した死体がつぎつぎと積み上がる。


 しかし、その死体を踏み越えて次のジャイアントが駆けてくる。

 多すぎる!

 ルナの取り逃がしたジャイアントがクリムマギカに向かう。

 が、ルナは素早く反転するとそのジャイアントの背中に取り付き、なにかの魔法で爆発させた。

 強い。


 見惚れている場合じゃない。

 急がないと!!


「みんな急いで、メルローさんの指示にしたがって大砲に魔力を込めてください! 後先考えないでいい。急いで!!」まわりに大声で叫ぶ。

「どういった仕様だ?」

「そういうのはメルローさんに聞いてっ!!」


 俺の大声を聞いて、リコとヤミンが走りよってきた。

「ケーゴ何があったの?」

「あの飛んでったのは何?」

「ルナだ! ルナが戦っている。」

「ルナちゃん!?」

「あれ、ルナルナなの!?」

「時間がない。ルナがこっちを心配せずに戦えるように俺たち3人で入り口を死守する。ヤミンは後ろから援護、リコは俺のサポートで前衛。発射まで敵を通さなければ俺たちの勝ちだ!」

 リコと俺の二人で、50メートル近くある入り口に仁王立ちする。

「ドワーフのみなさんは俺たちの取り逃した敵が魔法使いの方に行くのを食い止めてください!」

 流石に俺たち3人だけで全部を守りきれるわけではない。ここは総力戦だ。


 ロックリザードとサンドウルフが、ついに、岩と雪とジャイアントの死体とでできた道を伝ってクリムマギカへと進軍してきた。


「耐えるぞ! リコ!」

「うん!」


「【乱舞】!」


 入り口へと向かって来たロックリザードとサンドウルフに鞭の嵐を浴びせる。

 いつもの弱点探しだ。

 だが、モンスターが小型で、数も多いし動き回っているのでどの攻撃がどこに当たったか把握できない。

 くそう。

 一箇所めっちゃスキルの伸びが良かったところがあったのに、どこだったか分からん。

 テキコロースの所に活かせる前に、【ウィークポイント】お願いしとくんだった。


「【ウィークポイント】!」

 

 俺の後ろから、魔法が飛んできた。

 この声。

 

 ヤミン!?

 いつの間に?


「振り返んな! 前!!」

 ヤミンに注意されて、慌てて前を向く。


 飛びかかってくる3匹のサンドウルフ。

 弱点がとっても濃い青い丸になって見えてるぜ?


「【牙突・三段突き】!」


 エルダーチョイスさんから貰った鞭がサンドウルフの弱点を的確に貫いていく。

 3体のサンドウルフは俺の目の前にも到達することなく、地面に滑るよう墜落した。


「【連撃】!」

 

 リコもロックリザードを仕留めている。


「【乱舞】! 【精密】! 【牙突】!」

 技のMP消費は無視だ! 15分持てば良い!

 生きるか死ぬかだ。腹をくくった。全力で行く。


 俺のまわりの敵が次々と落ちていく。


 正直ドワーフたちは前線で戦える戦力ではない。

 基本的には俺とリコの二人で敵の進軍を食い止めなくちゃいけない。


 俺は技を乱発し死体を積み上げていく。

 一匹も抜けさせない!


 が、

 そんな俺の前に大きな影が落ちた。


 見上げた視線が、大きな単眼と出会った。

 ルナの攻撃をかいくぐってきたロックジャイアントか。


「くそっ!【牙突】!」 


 鞭をカーブさせて膝の裏側を狙う。

 膝をついてくれれば弱点の眼に鞭が届く。


 が、ダメ。

 クリティカルしないと俺じゃダメージが抜けない。


 ついに最初のジャイアントがクリムマギカの中に足をかけた。


「目を狙え! その鞭は伸びるぞ!」

 エルダーチョイスの声が後ろから飛んできた。


「【三段突き】!」

 試しに、目の弱点を狙ってみる。

 伸びた!

 ぎりぎり届いた!!


 ジャイアントが顔を両手で抑えて悶絶する。

 一発じゃ無理だったか。

 もう一発くれてやる。その手を顔から離せ!

 

「もう一匹きたぞ!!」

 後ろからエルダーチョイスの声が飛んできた。


 嘘だろ!?


 気づけば、リコの前にジャイアントが。


「【閃】!」

 リコは、目の前のロックリザードとたちを斬り払うとジャイアントに向けて剣を構えた。


「リコ! むちゃするな!」


 一人じゃ無理だ!


 しかし、リコを助けに行く余裕がない。

 目の前から新たなサンドウルフが3体襲いかかってくる。


「【牙突・三段突き】!」


 俺に襲いかかってきたサンドウルフたちをねじ伏せようとするがダメ!

 一匹クリティカルしなかった。

 しかも目の前には手負いのジャイアントが一匹残っている。

 ジャイアントのがむしゃらな攻撃が俺を襲い、俺は転がるようにその攻撃を回避する。


 ダメだ! 助けに行く余裕がないっ!


「ヤミン! 誰か! リコを助けてくれっ!!」


「そっちのロックジャイアントは任せろ!」

 俺の叫びに呼応するように大きな声が木霊した。


「行け! タイターン4!」


 親方!!

 

 さっき大砲を運んできたゴーレムが、親方を肩に乗せたまま、リコの前のジャイアントと組み合った。


「【連撃】!」

 リコがゴーレムと組み合っているジャイアントの足を切り裂く。


「【スナイプ】!」

 ヤミンが目を狙う。


 ジャイアントは暴れようとするが、その両手首はタイターン4ががっしりと掴んでいる。


「負けるな、タイターン4!」親方の声が響く。

 

 力比べのような、両者のせめぎあいの後、ロックジャイアントがジリジリと下がり始めた。


「そのまま、落としてしまえ!」

 タイターン4は入り口までジャイアントを押し戻すと、そのまま、階段に向けて押し出した。

 ジャイアントは背中から雪の積もった階段を滑り落ち、途中で階段からも滑落して谷底へ消えていった。


「どんなもんだい!」

 親方が大声で勝ち誇った。


 しかし、親方が勝ち誇ったのも一瞬。

 新たに3匹のジャイアントがクリムマギカに足を踏み入れてきた。


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