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仕分け・再

「困ってるんなら、手を貸してやらんこともないぞ?」と、自信満々の声。


 声の方を見るとエルダーチョイスが腰に手を当ててドヤ顔で俺たちの事を見ていた。


「地味武器製作者がいったい何の用だい。」

 メルローが眉を潜めながら言った。

「結局、最後は個人の力量を引き出せる武器のほうが物を言うようじゃな。そんな、ドッカーンっていくだけのズルい武器は役に立たんのじゃ。」

「何言ってんだい。これじゃなきゃ戦いは終わんないんだよ! お前のこまっしゃくれた武器こそ役に立たないのさ!」

「こんな時に意地を張り合わないでください。メルローさんのも必要ですし、エルダーチョイスさんのが無いとメルローさんの武器も守れないでしょ!」

 なんでこの状況で揉められるねん。

「へん、そんな古い考えじゃ、武器開発のロマンはいつまでも解らないよ!」

「温故知新も知らんのか! 」

「ふん!」

「へん!」

 話が進まん。

「エルダーチョイスさん、もしかして魔力のブーストができるんですか?」

「そうじゃ! ワシの専門は敵へのダメージのブーストじゃ。魔法威力のブーストも当然研究しておる。使い捨てだがそういうアイテムがあるぞ。困ってるんならくれてやる。もちろん、そこの小娘が頭を下げたらだが。」

「困ってないよーだ!」

 メルローがベーと舌を出した。

「メルローさん!!」

「・・・・。」

 俺に怒られてメルローは目をそらした。

「魔法使いの人数考えなかったのはメルローさんですよね?」

「・・・・。」

「このままじゃ、せっかく作った大砲が撃てませんよ?

「それは、嫌・・・。」

「じゃあ、なんですか?」

「・・・お願いします。」

「は? 歳で耳が遠くての?」エルダーチョイスが大人気ない煽り。

「エルダーチョイスさん!」

「ぐぬぬぬ・・・。」メルローはさんざん顔をしかめた後、もう一度エルダーチョイスに懇願した。「頼む。君の作った魔力ブーストを貸してくれ。僕はテキコロースをぶっ放したい。」

 クリムマギカの危機が考慮されてないぞ?

「がははははは! 良かろう良かろう! ちょっと待っとれ!」

 エルダーチョイスさんは超ごきげんで、奥に引っ込んでいく。ダメな大人だ。

「くっそ! ムカつく!!」

 メルローはメルローで地団駄踏みすぎ。

「メルローさん、テキコロース完成のために苦渋を舐める道を進む姿、とても感動したしました。」

 ルナがなんかよくわからないフォローを入れる。

 秘書感がすげえ。

「そ、そう?」

 赤くなって表情がほころぶメルロー。

 こっちはこっちでちょろい。


 しばらくすると、スキップでもしているような足取りでエルダーチョイスが戻ってきた。

「これだ。」

 エルダーチョイスは、何かそれっぽい玉を持ってきた。

 ガラス玉みたいだ。

「これで魔法ダメージが2倍になる。一回こっきりの使い切りだが。」

「メルローさん2倍になれば足りますか?」

「ぜんぜん。最低でも50倍は欲しい。」


 全然足りてないじゃないか・・・。


「これっぽっちのしょぼいブーストじゃ、役に立たない!」

「なんじゃと!」

「自信満々に持ってきたのにこの程度なの?」

「もともとはそっちが設計ミスったんじゃろうが!」

「設計はミスってないやい! 魔術師が足りなかっただけだい!」

「ちょっと二人ともストップ! エルダーチョイスさん、失敗作とかは残ってませんか?」

 二人に割って入ってエルダーチョイスに訊ねる。

「失敗作? 後でいろいろ直せんかと思って取ってはあるが・・・そんなん何の役に立つ?」

「それでもいいから見せてください! お願いします!」

「うむ、ちょっと持ってこよう。」

 俺の食いつきがすごかったせいか、エルダーチョイスは少し戸惑い気味に答えた。

「鑑定メガネもお願いします。」

「おう、分かった。ちょっと待ってろ、持ってくる。」


 エルダーチョイス再び奥に引っ込んでいき、しばらくするとおっきな箱を抱えて戻ってきた。


「これじゃ。」

 そういって、ドシンと箱を置く。

 箱いっぱいにさっきの丸っこい玉が入ってる。

 そんなにあんのかよ。

「断っとくが、全部失敗作じゃからな。」

「こんなに失敗したんだね。」

 メルローが箱を覗きながら呟いた。

「うっさいわ!」


 二人のことはほっといて、ひとつ取り出して鑑定メガネで確認する。

 

『魔法威力*1.09017744倍』


 よっしゃ!!

 やっぱり!

 

 1.1倍とか1.2倍とかのが結構混ざってる!


「エルダーチョイスさん。これって幾つも同時に使えますか?」

「幾つもも何もひとつしか無いぞ?」

「もし2つあったら?」

「使えるはずだが?」

「メルローさん、これ、箱ごと全部大砲に入れることはできますか。」

「全部は無理だよ。」

「100個くらいは入れれますか?」

「それなら入るけど、これ、なんの効果もないただのガラス玉なんでしょ?」

「そうじゃ。鑑定メガネで見たじゃろ。」

「いえ、これ、わずかですが魔力を増強する効果があります。」

「そうなの?」

「何も表示されんぞ?」エルダーチョイスが鑑定メガネで俺の渡したガラス玉を覗きながら言った。「ただのガラス玉だ。」

 倍率1.2倍とかだと、切り捨てされて1倍扱いになるから何も表示されないようだ。

「俺、特殊スキルで微量なブースト効果とかも見えるんですよ。」

「そうなのか?」

「はい。今からチェックしますが、たぶん成功してるのがいっぱいあると思います。」


 メガネで見ながら、1.何倍かのものをより分けていく。


 メルローとエルダーチョイスは不思議そうに、ガラス玉を選別している俺のことを見つめている。


 俺は魔力増幅効果のあったガラス玉を100個程度選り分けた。

 なんか、マディソン商店の時のことを思い出す。


「この100個ひとつひとつが、どれもちょっとずつ魔力をブーストできます。」

 これ全部合わせて50倍くらい相当になってくれれば良いのだが。

「ほんとか?」

「まあ、他にやりようなさそうだし、試してみよう。」

 二人共いまいち信じてないご様子。

「これをどうすれば良いのですか?」

「魔力の通過する所に置いとけば良い。」

「じゃあ、テキコロースの溜魔室に入れよう。あそこなら頑丈だし。」

 メルローはそう言って、俺のより分けた石を抱えて砲身の横の小さな戸口から転がして入れる。

「後はここに向かって魔術師が魔法を打ち込んでくれれば撃てるよ。」

 そう言いながらメルローは砲身の後ろ側に取り付いている巨大な黒いスクリーンを指さした。

「じゃあ、とっとと、入り口で戦ってるエルフたちに魔力を込めさせい。」


 ・・・・どうやって?

 

 今、魔術師が戦線から離れたらジャイアントたちが一気に来るぞ?

 その時間をどうやって耐え凌げば?


「魔術師たちが魔力を充填して撃つのに、どのくらいかかりますか?」

「ん〜、わかんないけど15分あればできるんじゃない?」


「15分か・・・・。」

 耐えきれるだろうか?


 と、横で秘書然とたたずんでいたルナがメガネをクイっとさせた。


「魔術師が魔力を込めている間、私が食い止めましょう。」


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