表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
90/227

イベント開始

「外! 夏なのに雪が降ってる!」防爆室に駆け込んできたリコはうれしそうに言った。「私、雪なんて見るの子供の時以来! ケーゴも見に行こ。ヤミンなんて外駆け回ってるよ。」


 アイツは犬か。

 

 じゃねえ!

 早ぇよ! なんで夏なのに雪が降るんだよ!


「やばいって!」

「何慌ててるのケーゴ?」

「雪が降ったら、モンスターの襲撃が始まるかもしれないんだってば!」

「あ。」

 リコはようやく気がついたらしい。

「なんか急に寒くなったと思ったら雪が降ってたのかぁ。」メルローが呑気につぶやいた。


 この人にも雪が降ったら襲撃があるかもって説明したはずなんだけどな?


「異常ですって! モンスター来ちゃいますよ! 装置はまだできないんですか?」

「あと、4日もあれば装置はできるよ。そしたら、入り口まで運び出して敵のいる方に向けてぶっ放すだけ!」


 その前に敵が来はじめると考えて動いておいたほうが良さそうだな。

 入口周辺を守ればいいだけだが、守りきれるだろうか?

 カリストレムのような徹夜続きの戦いになるのだろうか。


「ケーゴ。」

 ルナが深刻な顔で、俺の元へと寄ってきた。

「ルナ、どうした?」


「敵が来ました。」


 くそっ!

 もうか!


「敵はどんなですか?」

 いかん、すぐに対応を考えないと。


「ちょっと待って、ケーゴ!」


 リコが真剣な顔で割り込んできた。

「どうした!? リコ。」

「なんで急に呼び捨てになったの?」

「え?」

「今、ルナって呼んだでしょ?」

 リコが俺を睨む。


 今そこ?


「なんで急に呼び捨てになったの?」

 リコは有無を言わさぬ口調で問いかけてくる。

 ちょっと怖い。

「え? 今それですか?」

「そうよ。なんで、急に仲良くなったの?」


 ははぁん。

 さては、自分より俺のほうがルナと仲良くなったもんだから嫉妬しているな?


「まあ、一緒に仕事してたから、絆ってもんができんのよ。」

 ドヤ顔で勝ち誇ってやる。


「知らないっ!」

 リコが口を尖らせて拗ねる。


 仕事もせずにスキル上げばっかしとるからじゃ。

 ふはははは。


 てか、それどこじゃねぇ!

 

「それで、ルナ。敵はどんなのだった?」

 できる限り弱い敵のほうがありがたい。


「ロックリザードとサンドウルフ、」ルナは答えた。


 良かった。

 ルスリーが言ってた通り、たいして強くない敵だ。


「それとロックジャイアントです。」


「はぁっ!?」


 弱い敵ちゃうやんけ!

 話が違う!!


 ロックジャイアント。

 荒廃した山や岩場など、大地の魔力が強い所に現れる巨大な人形のモンスターだ。

 アルファン時の適正レベルは50以上。

 カリストレムを死守してかなりスキルレベルの上がっているから、俺とリコとヤミンが組んで魔法の援護があれば相手にできないこともないかもしれない。だが、それは1匹だけならという言う話。

 ボスとしてならともかく、そんなんが押しかけてくる来るなんてありえん。アルファン末期のイベントのレベルだ。

 対抗したければ50レベル冒険者の群れが必要になる。


「かなりの数のようです。」ルナが言った。

 ルナの片方の目が青く光っている。

 【サーチ】か【ピジョンアイ】あたりの遠くを見れる魔法で敵を覗いているに違いない。

「私に見える限りの道中はジャイアントの列でいっぱいです。」

 まじかよ。


「そういえば、この街の軍隊や衛兵はどんな感じなんですか?」近くにいたディグドさんに訊ねる。

「軍隊? 衛兵? そんなもん、おらんぞ。」

「えっ?」


 そんな訳ないだろって突っ込みたいけど、この街ならスゲエありえる。


「我々もドワーフじゃし体は鍛えておる。ちょっとは戦えるじゃろ。」

「魔術サイドの連中が結構魔法使えるしな。」

 近くのドワーフたちが口をはさむ。

「でも、ロックジャイアントって、冒険者の職業レベルで50レベルくらいないと厳しいですよ?」

「それは、さすがにかなわんぞい? エルフのはどうじゃ?」

「我々は研究畑ですからそこまで強力な魔法は使えませんよ? 攻撃魔法の研究者ならあるいは太刀打ちできるかもしれませんが。」


 まずいな。

 リコと顔を見合わせる。


「ちょっと、ヤミン連れてくる!」リコが防爆室を走って出ていった。

「頼んだ!」

 リコの背中に声をかけた後、ルナを振り返る。

「ルナ、敵は後どのくらいで到着しそう?」

「たぶん1時間もあれば先頭が到着すると思います。」

「敵は全部で何匹くらい居るの?」メルローが尋ねた。

「数え切れません。私の魔法の範囲外からずっと列をなすように進んできています。5000は下らないのではないかと思います。」ルナは言った。


 ルナの言葉を聞いて当たりがざわめく。

 最初から言っとろうに。

 てか、このイベントの特性上、5000体どころじゃすまんぞ?


「くそ・・・どうすれば。」

 必死に頭を巡らせる。

「まあ、最悪、橋落とせば大丈夫っしょ。」メルローがお気楽な感じで言った。

「どういうことですか?」

「入り口の橋があったでしょ? あれを落とせば、深い谷が入り口を守ってくれて敵も簡単には来れなくなるじゃん。」

「そんなことしていいんですか?」

「だめなの?」


 普通、だめだろ。


「とりあえず、デキコロースの完成まではもう少し時間が欲しいし。爆破しちゃおうよ。」メルローは再び提案する。


 勝手に決めていいのだろうか? 反対するやつとかいないのか?

 部屋にいる奴らは、そいつは妙案とばかりに喜んでいる。


 背に腹は変えられん。


「橋を落とすのはすぐできるんですか?」

「うん。たぶん。」


 たぶんか・・・。


「ふっふっふ。準備するから荷物運ぶの手伝って。」


 何故笑う?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ