OLルナちゃん
「ごめん、ケーゴ。ドワーフさん、説得できなかった。」リコが申し訳なさそうに謝った。
まあ、しゃあない。人には得手不得手がある。
「私もダメだった~。」
ヤミンにはそもそも期待していない。
「ドワーフというのはなかなか頑固なものだ。」
知ったようなこと言ってるけど、エデルガルナさんはすごく期待してたんだけどな。ちょっと、残念。
クリムマギカのドワーフたちは対人の交渉を一切しようとない。エルフに仕様を出すくらいだ。なので、新しいドワーフを誘う時は俺が交渉に回っている。
そのせいで、ドワーフたちは俺の事をなんか困ったことがあると誰かしら都合のいい奴を連れてきてくれる人間だと認識してしまったようだ。
というわけで、昨日は一日中、俺は誰かを探して東奔西走していた。
防爆室に戻ってくるともう次のドワーフを探しに行くことが決まっている感じ。
ちょっと忙しすぎるので、今日は専門家たちの勧誘をみんなにも任せてみた。
そして3人共上手くいかなかったわけだ。
これから、俺がもう一度ドワーフ達のところを回って交渉せにゃあかん。
3人が怒らせてなきゃいいけど。
心の中のため息を表に出さないよう一生懸命ニコニコする。
「ケーゴって人煽てるのうまいもんね。」
「そうだよね、口うまいよね。」
「怒るよ?」
俺の気も知らんで。
「なんで褒めてるのに怒るの?」
「そうだよ、ケーゴってすごいよ。私達は上手にできなかったんだし。」
まさか、今の褒めてるつもりだったの? 絶望的じゃないか。
「ケーゴ殿、もう一度私にチャンスをいただけないだろうか?」
がっかりした表情が表に出てしまっていたのだろうか、エデルガルナさんが珍しく進言してきた。
「その、ええと、大丈夫ですか?」
こういうのって向き不向きがあるから一朝一夕でどうにかなるものではない。
「任せてくれ。リコ殿やヤミン殿の分も含めて説得してみせよう。しばし、ここで待つように。」
そう言ってエデルガルナさんは防爆室を出ていった。
「ちょ、エデルガルナさん?」
説得に行ったのだろうか?
様子もよく分からんので、メルローを手伝いながらしばらく待っていると、エデルガルナさんが戻って・・・・えっ?
え?
エデルガルナさんだよね?
メガネかけている。
そして新しい礼服だ。
礼服っていうかスーツ。
しかも、ズボンじゃなくてタイトスカートに黒ストッキング。
俺にはOLとか新入社員に見える。
スタイルが良すぎるのでどっちかっていうとAV女優か?
「お待たせいたしました。」
エデルガルナさんがメガネをクイッとさせた。
またキャラ変わってません?
「ルナちゃんその格好も可愛い!」
「何か仕事できそう!」
リコとヤミンが興奮ぎみにエデルガルナさんに駆け寄って褒めそやす。
「ありがとうございます。これなら専門家との交渉については大丈夫かと存じます。わたくしたちが説得に失敗した専門家3人に加え、現在ご要望のございますリストの方々を説得してまいります。可能性は95%程度かと。」
ちょっと急になに言ってんのか解らない。
「では、営業に行ってまいります。戻りは2時間後の予定です。」
「ちょっ、えっ?」
「ルナちゃん、お願い〜。」
「お姉ちゃんたちの達の分も頼んだよ!」
俺の戸惑いをよそに女子二人がエデルガルナさんに手を振る。
「承知しました。では、いってまいります。」
エデルガルナさんは丁寧に頭を下げると出ていってしまった。
「ちょ? えっ? あれどうしたの? あの格好何?」リコに訊ねる。
「ルナちゃんって、形から入るタイプなんだって。」
意味不明。
やっぱ俺が行ったほうが良かったよなぁと思いつつも、エデルガルナさんがわざわざ出ていったのに俺がでしゃばるもの違うよなと悩む。
断られてがっかりして帰ってくるのも可愛そうだけど、一回は任せたほうがいいのかなとも思うし。
そんな感じで行ったり来たり悩みつつも、結局エデルガルナさんを信じてメルローの手伝いを進めることにする。
そして、二時間後。
「うそでしょ!?」
エデルガルナさんが大量のドワーフたちを引き連れて戻ってきた。
もしかして、この短時間でリスト全員!?
「ルナちゃん、すごい!」
「ルナルナ、やるぅ!」
「それでは、エボーグさんは足場の建築を、ネルフムズさんとケニットさんは運搬用の滑車の準備に取り掛かってください、エズメンさんは・・・
エデルガルナさんが引き連れてきたドワーフたちにテキパキと指示を出し、彼らが働くべき場所へと配置を始めた。
「メルローさん、テキコロースの開発関連は指示をお願いします。足場や建築関係はわたくしの方で手配しておきます。進行の確認と判断のつかないところについては逐次相談させてください。」
えぇぇ・・・キャラどころか能力まで変わってません?
「ね? 形から入るって行ったでしょ?」リコが言った。
程がある。




