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テキコロース・アルファ

 俺たちは、試作機ができるまで待つことにする。


 待ってる間ひまなので、俺は魔法の訓練を開始。

 せっかく魔術研究所っていうくらいだから魔法系のスキルを上げない手はない。


 ちょうど、【成長促進】の魔法を研究しているエルフが【成長促進】と魔法系スキルの伸びの関係を調べたかったらしく、魔法を使えない人間を探していたので、俺はそのエルフに教え子兼モルモットとして弟子入りした。

 クリムマギカを観て回りたいと言っていた女子たちも、村を観光すると勇んで出ていったもののどこも見どころがなかったらしく、すぐに戻ってきて、訓練に合流した。


 俺は『魔法初心者がうまくなれる棒』に魔力を集中。

 リコとヤミンとエデルガルナさんは呪文を教えてもらっている。

 うらやましい。


 あきらかに見た目ただの棒をもらったときはがっかりしたが、ゼロコンマでスキルの上がりを見るとちゃんと馬車の中でやってたときより上がり方が10倍はやい。

 すごいぜ、魔術研究所。

 後でこの棒もらって帰ろう。




 さて、早くも2日後、メルローから試作機ができたと連絡が来た。

 俺たちは先日メルローと出会った防爆室という部屋に集められた。

 今日はしらふのエデルガルナさんもいっしょだ。


「あっという間でしたね。」

「いやぁ、見てくれる人がいると思うと、頑張っちゃうよね。」メルローはそう言って笑った。

「助かります。」

 ホントはもう少し訓練してたかった。

「おおー。王都の偉い人も来てくれてるのか!」

 メルローは初めて会うエデルガルナさんに嬉しそうに近づいて行って、パンパンと背中を叩いた。

「王立騎士団のエデルガルナだ。よろしく頼む。」

「任せてよ!ようやく僕の研究も王都に認められるときが来たか。ぐふふ。」

 メルローが今にもよだれを垂らしそうに笑う。

「メルローさん、目の下のくまひどいよ? 大丈夫?」ヤミンがメルローの顔を覗き込んだ。


 確かにメルローさんの目の下のくまがすごい。

 時間あるし、もっとゆっくりで大丈夫だったんだけどな。


「くまが何だというのかね。そんなことよりほら!」

 メルローはそう言って、部屋の奥に置かれている、わざとらしく白い布がかけられた何かの元へと走り寄った。

「見てくれたまえ、これがテキコロース・アルファだ。」

 薬かな?


 メルローが白い布を勢いよく引っ剥がすと、そこにはいかにも大砲って感じの大砲が置かれていた。

 自衛隊とかそんな感じの近代的なやつじゃない。

 鉄の塊のような砲身に移動できるような大きなタイヤがついてる。歴史ある日本の港にありそうなアンティーク感がある。

 カノン砲というのだろうか?


 大砲の隣にはエルフが居る。

 影薄いな。今気づいたよ。


「魔力注入をここにお願い。純エネルギー系で。」

「仕様が不明瞭だ。」エルフの人がメルローの指示に対して文句を言った。

「じゃあ、【エクスプロージング】でいいかなぁ。」

 【エクスプロージング】は無属性の割と強力な範囲魔法だ。

「ここのインプッターに打ち込んで。」

 メルローは大砲の横に空いた大きな穴を指さした。真っ黒い紙で覆っているかのように中が見えない。

「威力は?」

「全力でいいよ。」

「【エクスプロ−ジング】」

 エルフはなんのタメもなく、メルローの指さした装置の穴に【エネルギーボルト】を打ち込んだ。


「よし! 撃つよ! みんな耳をふさいで!」

 メルローが俺たちが耳を塞ぐのも確認せず大砲から伸びていたチェーンを引っ張った。


 途端にまばゆい光と大音響!

 俺たちを爆風が襲う!

 

「【ガード】!!」

 誰かの声。


 まばゆい光と爆風が治まり視界が戻ってくる。

 まだ、音は戻らない。うわんうわん鳴ってる。


 目を開けた先には、メルローとエルフの前で仁王立ちして二人を【ガード】しているエデルガルナさんが居た。

 それでもエルフとメルローは爆風の威力に尻もちをついている。


「ありがとう、助かったよ。騎士くん。」

 メルローがエデルガルナさんに礼を言う。

「服がボロボロになってしまった。」

 エデルガルナさんがそう言って振り返る。


 礼服が爆風でビリビリだ。

 あの爆風を3人分まともに食らったんだから当然だ。


「エデルガルナさん! 大丈夫ですか!?」

 俺は慌ててエデルガルナさんに駆け寄ろうとする。

「ケーゴは見ちゃダメ! 近づかないっ! 」

 ヤミンが俺の襟首をふんづかまえた。


 ひでぇな!

 本当に心配して駆け寄ろうとしただけなのに!

 そんな、服が破れてるからってエロいことなんて考えてな・・・え、あ、うん。

 ないよ?

 でかいな。

 考えてないよ?

 頑張るし。


「ルナちゃんも恥ずかしがって!」

 漢らしくこっちを向いているエデルガルナさんをリコが慌てて掴んで後ろを向かせる。


 あ、はい。


「うーん、砲身が持たなかったか・・・。」

 砲身がユリの花のように咲いた大砲を見ながらメルローはつぶやいた。

「まさか、こんな威力があるとは。」

 初めてここに来た時もそうだったじゃねえか。

「もう実験はむりだな。私は戻る。」エルフがなんの感想もなくそう言って、戻っていった。

「ありがと!」メルローはエルフの背中に手を振った。

「で、とりあえずこんな感じでどう? すごい威力だったでしょ?」メルローがこっちを向いた。

「砲身爆発しちゃだめでしょ。エデルガルナさんが【ガード】しなかったら大惨事だったかもしれませんよ?」

「うーん。そこは考えないといけないんだよね。大型にすれば厚みが増せるからなんとかなるかもしれないけど、限度ってもんがあるしねえ。砲身に込める魔導力をファイアボールの5発分くらいに限定するかなぁ。」

「それってどんくらいの威力が出るんです?」

「ファイアボールの50倍。」


 うーん、微妙。

 敵は超大群らしいからなぁ。

 近代兵器並みの爆発力は要りそうなんだけど。


「連射できたりするんですか?」

「無理。何回もは砲身がもたないよ。」

 一発すらもってませんが。

「砲身を硬くする方法はないんですか?」

「僕の持ってる中で一番硬い素材を使ってみたんだけどねえ、出力弱くするしかないかな。」

「魔法で硬くするとかはできないんですか?」

「もうやってる。」

 そう言って、メルローは砲身をペシペシと叩いた。

「砲身に模様が書かれてるでしょ?」


 確かによく見ると薄っすらと細かい模様が描かれている。


「この模様が魔法陣になっててこの素材を強化しているらしいよ?」

「らしい?」

「昔、エルフにもらった材料で作ったんだ。硬い以外にも錆びなかったり、鋳造がしやすかったり、いっぱい機能がついてる便利な板さ。壊しちゃったの、ちょっともったいなかったかなぁ。」

「もっと硬い素材があればいいんすかね?」

「そんなんがあればね。」

「ないんですか?」

「知らない。」


 知らんのかい。


「そういうのに詳しい人っていないんですか?」

「そりゃあ居るけど、みんなそれぞれ自分の発明に忙しいから、協力なんてしてくれないんじゃないかな?」

 メルローはそう言って肩をすくめた。


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