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メルロー

 技術サイドの食堂に戻ってきた俺たちは、技術サイドのドワーフに片っ端から当たっていく覚悟で、モンスターをふっとばすような武器を作って貰えないか尋ねて回ることにした。


 そして、一番最初に声をかけた二人組のドワーフからスルッと答えを貰った。


「そういうのは、メルローに聞いてくれ。」


「あいつは派手な武器大好きだからな。」

「レイド対策の武器を作っていたベルギリアンの弟子じゃ。」

「その方はどこに?」

「地下6階の高硬度防爆室にいると思うぞ。もはやあいつしか使っとらん。」

「あんま期待してやるなよ? 腕は不確かじゃ。」


 『腕は不確か』とか初めて聞くんですけど。


「いいのう、メルロー。顧客が訊ねてくるのか。」二人のドワーフの一人が羨ましそうに声を上げた。

「でしたら、一緒にやってみませんか?」

 とりあえず、協力を要請してみる。今は実力より数だ。

「嫌じゃ。兵器作りに興味はない。」

 つれない返事。

「それより、お主らダンダリック彫刻に興味はないか?」もうひとりのドワーフが声をかけてきた。

「ダンダリック彫刻?」

「失われた古代の微細な彫刻だ。今、ワシほど上手く彫れるやつはおらんぞ?」

「そう言われましても・・・・。」

「そうか、残念じゃの。」ドワーフはがっかりした様子で、酒をちびちびやり始めた。


 ドワーフたちに地下への行き方を聞いてから食堂を後にし、メルローの居るというクリムマギカの地下に向かう。

 もともと洞窟の中なのに地下って言うのはなんか違和感がある。


 細い階段を下ってきた先はやはり彫り抜かれた洞窟だったが、土の質が黒く、光沢があって硬そうだ。

 廊下は一本のまっすぐで短く。突き当りの左右に大きな鉄扉があった。

 どっちだろうと思っていると右側の鉄扉の向うから大きな爆発音が聞こえきた。


 リコたちと顔を見合わせながら恐る恐る扉を開けて中を覗く。


 中はものすごく広い部屋だった。

 道具やなにやらがこちら側に吹き飛ばされとっちらかっている。

 部屋の奥で爆発があったに違いない。

 巨大なただっ広い部屋の隅っこに、小さな女の子が今まさに転がってそこまでたどり着きましたよという感じでひっくり返っていた。


「大丈夫ですか?」

 扉から顔をのぞかせて声を掛けるが女の子は動かない。

「もしも〜し!?」

 女の子は無反応だ。

「大変!」

 リコが慌てて中に入り女の子に駆け寄った。

「大丈夫?」

 リコは転がっている女の子を助け起こした。

 どうやら無事のようだ。

 女の子はリコに心配されながら立ち上がると、身にまとっている白衣を叩いた。


「いや、悪い悪い。失敗した、失敗した。」

「何があったんですか?」リコが訊ねる。

「いやあ、すまん。耳がまだ戻ってないんで、君が何言ってるか分からん。」


 起き上がってすすを払っているのは少し丸い感じの小さな女の子だった。

 可愛い女の子なのに立派な口ひげが生えている。

 何か勿体ない。


「もしかして、メルローさんですか?」

 耳が治るのを待って俺は尋ねた。

「いかにも。僕こそがメルロー。ロマン兵器開発の第一人者だよ。」女の子はエヘンと胸を張った。

 ロマン兵器って開発してる本人が使うような言葉なのだろうか?

「実はお力を借りたいことがありまして・・・


 俺たちは、モンスターが攻めてくるかもしれないことと、それを倒すためにモンスターを一掃できるような武器が必要なことをメルローに伝える。


「いいね! いいね! やるやる!!」

 メルローは満面の笑顔で俺の手を握ってピョンピョンとした。

「ホントですか!」

「「やった!」」

 リコとヤミンが後ろでハイタッチを交わした。

「僕の作った兵器を本気でぶっ放してもいいってことでしょ!?」メルローが嬉しそうに言った。


 やっぱ街の危機とかには興味ないのな。

 まあ、開発してくれるんだったら何だっていい。


「はい。是非とも。迫りくるモンスターに向けてあなたの開発した武器をぶっ放してしまってください。」

「おお!!」メルローが目を見開いて満面の笑みになる。

 ヒゲがなきゃあいいのに。

「ねえねえ、見て見て。」

 そう言ってメルローは俺の裾を引っ張って部屋の奥に連れて行く。


「僕が作りたいのは、魔法使いに魔力を込めてもらって、それを凝縮して一方向に放つ大砲だ。」

「作りたいとかじゃなくて、街に来る大量のモンスターをやっつけられる兵器を作って欲しいんですけど。」

「大丈夫、大丈夫、そういうのになるから。」

 

 どんなモンスターなのかとか聞かれてないんだけど。

 何でもかんでも聞いてくるエルフもあれだが、人の話無視して作りたいものを作り始めるドワーフたちのほうが問題な気がしてきた。


 メルローは部屋の奥のなにかの残骸を指さした。

「ちょっと、見てくれよ。これが爆発力集中型の迫撃砲だ。」

 もう、ぶっ壊れてんじゃん。

「この硬い砲身が、力を束ねて威力を集中して狙った方向に放つんだ。」

 砲身弾け飛んでるじゃん。

「魔力でも同じで、マナの発散を可能な限り防いで一方向に噴射する。理論上はエネルギーボルトの魔力で、その10倍の威力が出せるはずだ。」

「その・・・相手は大群だと思われるんですが、これは何発も連射できるんですか?」

「うーん。何発も撃つとやっぱ壊れちゃうかな? でも、拡散放射でプラマイ50度まで範囲角をもたせることもできるよ。」


 なんかよく分からんが広範囲に向けて放てるビーム兵器ってことだな。

 アルファンにも魔導砲ってのがあったけど、それのすごいバージョンだろう。


「ケーゴ、今の話ついていけてるの?」リコが耳打ちしてきた。

 ヤミンはすでに話を聞いてない。

「ほら、カリストレムでも教会の人が魔法攻撃撃ったじゃん、あれのすごいバージョンだと思う。」

「北門のところに飛んできたあれのこと? 確かにすごかったけど、あんまり役に立ってなかったよ?」

 リコたちはいまいちピンときてない様子。

「聞くより見ろだ。すぐに小型テスト機作るから見にきてよ!」メルローはよく分かってない様子のリコを見て得意顔で親指を立てた。「きっとそれ見れば満足できると思うから!」


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