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ピース・オブ・ケーキ

 さて、なんか上手いこと厄介払いされた俺たちは、食堂に集まって作戦会議をすることにした。


 今度は魔術サイドの食堂にやって来ている。


 技術サイドの食堂と違って、前世のおしゃれカフェに近い。

 洞窟の中というのを忘れる作りだ。

 木のテーブル、壁も木が張ってある。鉢植えなんかも置いてあって美観が気にされている。


 食堂のエルフたちは一人一人距離感を保つように座って話すこともなく食事を取っている。

 みんな食事の横に書物を開いている。


 料理を貰えるらしいカウンターに行くと、技術サイドとは違って誰もいない。

 代わりに、テーブルの上にデザートみたいなものが沢山並んでいる。

 どれもこれも一流パティシエが作ったケーキみたいだ。

 うまそうだけど、全部甘そう。


「これ、どうすれば良いのですか?」

 ちょうど、カウンターに料理を取りに来たエルフに訊ねる。

「勝手に取って食べなさい。」

 そう言ってそそくさと料理を選び始めるエルフ。

「すみません、もう一つ。飲み物はどこでもらえるんですか?」

「奥の樽に入っている。」

「えーと、なんの飲み物でしょうか?」

「水かジュースだ。酒がほしければドワーフ共のところで飲むといい。」

「ありがとうございます。」

 答えることに答えたエルフはさっさとテーブルに向かってしまった。


「ちょっと、貰ってみようよ。」

 ヤミンはすでにカウンターのケーキを物色し始めている。

「そうだね。」

 賛同するリコも目線はすでにケーキの上を泳いでいる。


 俺も一つ試してみよう。どんな味か気になる。


「きれい〜!」

「これ美味しそう。」

「これ、幾つ取っても良いのかな?」

 リコとヤミンは嬉しそうに、前衛アート的なケーキをお盆の上にいっぱい取っている。

 ビュッフェ形式と言えなくもない。


 俺はその間に水を貰う。

 樽には蛇口がついていて、ビールでも出てきそうな雰囲気だったが、中身はちゃんと水だった。

 良かった。これで酒だけが飲み物という事態を避けられる。

 予め持ってきておいたボトルに水を詰める。

 これ以上、エデルガルナさんに酒を飲ますわけにはいかない。

 誰からも咎められる様子もないので詰められるだけ詰めておく。


 リコたちが確保したテーブルにつくと、そこには色とりどりのケーキが並んでいた。


 それ、全部食うのか?

 女子の別腹すげえな。


「いただきます!」

 俺が席につくのを待って、リコとヤミンが待ってましたとばかりにケーキを口に運ぶ。

「うぇえ。」真っ先にケーキを口に入れたヤミンが呻いた。「これ甘ずぎるよ。」

「・・・・。」リコも口に出さないが表情に出てる。


 俺も一口食べてみる。

 甘っ!!

 激甘だ。

 甘さ以外の味が分からん。

 こんなん、水がないと無理だ。

 これだったら、ぜんぜん魚味のハムのほうがいい。


「さすがにこれは甘すぎるよ・・・。」リコがついに弱音を吐いた。

「よくこんなの食べられるなあ。」ヤミンがまわりのエルフを見渡す。

 エルフたちは味覚など無いかのように平然と激甘のケーキを口に運んでいる。


「ケーゴ、ちょっとこっちも食べてみる?」

「私のもどうぞ。」

「いや、自分のがあるから。」


 人は時に非情でなくてはならない。


「とりあえず、これからどうしよう。」リコが目の前の構造物をつつきながら呟いた。

「どっちの偉い人も作ってくれなそうだったね。」ヤミンはもう完食を諦めている。

「しかたない。俺たちからドワーフたちに作ってくれるようお願いをしよう。フーディニアスは仕様書さえあれば作ってくれるって言ってたし。」


 初対面のエボーグさんは馬小屋作ってくれたし、取っ掛かりはドワーフの方にありそうな気がする。


「でも、技術フェローとか言う偉い人、協力してくれなさそうだったよ?」と、リコがごもっともな意見。

「俺達の手でステークホルダーを探し出さないとダメかなぁ。」

「ステークホルダーって?」

「あ、えーと。」

 なんて言えば良いんだろう?

「喜んで協力してくれそうなドワーフたちを探しだしてお願いするってことかな。」

「でも、さっきの偉いドワーフさんに怒られないかな?」ヤミンが心配そうに呟いた。

「まあ、文句とかは言われなそうな空気だったし、大丈夫じゃない?」


 嫌がって邪魔してきそうな人もステークホルダーって括りなんだよな。

 だけど、あのディグドってドワーフはそういう意味ではあんまり重要人物では無い気がする。

 たぶん迷惑をかけなきゃ文句も言ってこなそうだ。


 でも、そこが問題なんだよなぁ。

 すべての段取りを俺らがやらないといけない気がする。

 プロジェクトマネージャーみたいな仕事なんて前世でもやったこと無いぞ?


「まあ、モンスターたちの襲撃が起こるまで半年くらい先って話だから、なんとかするしかないよ。」

 自分に言い聞かせるように二人に言う。ぶっちゃけ期限が先ってことだけが味方だ。

「モンスターが来るのってそんな先なの?」

「なんか、神託によると雪が振り始めた時なんだって、だから秋か冬くらいまでは大丈夫。」

 ルスリーから聞いたイベント情報を伝える。

「うぇえ、何ヵ月もここにいなくちゃいけないの?」ヤミンが嫌そうな顔をした。

「いや、機械ができればすぐに帰れるよ。」

「でも、たった数ヵ月でそんなすごい機械なんてできるの?」リコが訊ねる。

「う〜ん。」


 アルファンでは1週間持ちこたえてる間に魔導機器が出来上がるようなイベントだったらしいので、たぶんそんくらいでできるはずなんだけど、そんな事を説明するわけにもいかないし。


「モンスターたちを吹っ飛ばせるような機械ができるのを見届けるのが僕らの仕事だから、それまでは居ないとだめだね。機械を作ってもらえないと依頼失敗だし、クリムマギカも危ないし。」

「王女様からの依頼だからほっぽり出す訳にもいかないしねぇ。」ヤミンが諦めたように頬杖をついた。

「装置作りに協力してくれる人いるかなぁ・・・。」リコも不安そうにつぶやく。

「まあ、頑張って探すしか無いよ。」

 俺は目の前の一欠片の激甘ケーキをつついてため息をついた。

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