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魔術本部長

「フーディニアス本部長ならこの先だ。」


 魔術サイドに入ってすぐに通りがかったエルフの人に訊ねると、彼は本部長とか言う魔術サイドの偉い人の居場所をすぐに教えてくれた。


「それでは。」


 エルフたちはものすごく対応が淡白だ。話題が終わるとすぐに去ってしまう。

 でも、みんな美形揃いだ。


 通路も技術サイドのような彫り抜かれただけの洞窟ではなく、四角く鏡面に磨かれ、キレイな廊下になっている。

 魔法でやったのだろうか?

 魔導照明が張ってあるのか、壁と天井がうっすらと光り、明るくなっている。


 さっきのエルフに教えてもらったとおりにしばらく進む。

 すると、魔術本部長室と書かれた扉に行き着いた。


 これよ、これ。

 技術サイドは表札すら出てなかったからな。


 恐る恐るノックをすると中から、「入れ」と返事がした。


 扉を開けて中に入る。

 部屋には銀髪で色素の薄い感じのエルフが居た。所長室にありそうな立派なデスクのむこうに座っている。

 めっちゃイケメン。イケメンと言うか綺麗。

 彼がフーディニアス本部長っぽい。


「魔術本部長でしょうか?」おそるおそる訊ねる。

 銀髪のエルフは不思議そうに俺たちの事を眺めた。

「そうだが、なに用だ?」

「私はケーゴと申します。王都からの命令を受けてこの街にやって来ました。実は、王女殿下からの依頼で・・・


 俺は何ヶ月か先に大量のモンスターが襲来が来ることを彼に伝え、それを倒すための魔導装置を作って欲しい旨を説明する。


「分かった、協力しよう。」

「ありがとうございます。」


 おお!

 こっちは協力的だ。

 技術サイドのディグドとは大違い。


「・・・・。」

「・・・・。」

「・・・・。」

「・・・・。」


 話が終わってしまった。

 向こうから何の説明も反応も無いんだけど、これ、本当に作ってくれるんだよね?


「どうした?」フーディニアスは不思議そうに俺に訊ねた。

「ええと、どのような感じに事は進むのでしょう?」

「どのような?とは?」

「魔法装置はどのくらいのもので、いつくらいにできるかとか。必要なもので王都から取り寄せるものがないかとか。」

「まずは君たちが仕様を出してくれ。でなければ、何を作ってよいか分からん。」


 うそでしょ?

 あんた、この施設のトップじゃないの?


「ええと、協力してもらえるのではないのですか?」

「協力するのは構わない。」

「?」

「?」

 え? 何?

 どうすればいいの?

 助けを求めるようにヤミンとリコを振り返るが、二人の視線が完全に俺任せだ。

「ええと、装置はどうやってできるのでしょう?」

「どうやって? 仕様を出してくれなければ説明もできない。」

「仕様?」

「どのような装置が必要なのかまるで分からん。仕様を出してくれ。最低でも機械の作動に必要な魔力量や出力、属性、発動の速さ、他にも必要な効果や付随のパラメーター等の要求項目も準備するおくように。それと、装置本体の作成は私達の管轄ではないからな。」


 え?


「私どもでは、そこまでは・・・。装置の設計もしていただけるのでは無いのですか?」

「それは技術サイドに作ってもらえ。仕様が出ねば我々は動けない。」


 それ、ほぼ丸投げって言わんか?


 ええぇ・・・。

 俺たち体よく厄介払いされてないよな?


「仕様がなければ話は進まない。今日は以上だな。私は魔導書の勉強をする。」フーディニアスは固い意志を告げるかのように俺たちに宣言した。


 なんか特定のワード入れないと対応してくれないゲームのキャラのようだ。交渉の余地がない。

 ここアルファンなんだよな?


 一度戻って作戦を練り直したほうが良いようだ。


「ありがとうございました。」一応、礼は言う。

 リコとヤミンが俺に合わせるように頭を下げた。

 フーディニアスはそんな俺たちのことなど気にする様子もなく本棚に書物を取りに立ち上がった。


 まあ、いいさ。

 仕様さえ出せば協力してくれるって事を約束してくれたと前向きに捉えておこう。



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