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思い出す四捨五入

「四捨五入知らなかっただけじゃねえか!!」


 俺は叫んだ。


「そりゃ、整数だけ求められてるのに一人だけ小数点8桁目まで計算してたら遅くもなるよっ!!」

 

「ゴンッ!!」


 大声で叫んじゃったせいで、となりの部屋にいたカムカから壁ドンされた。

 すぐ黙る。


 まだ混乱している。自分の中に過去が二つ並行して存在してて、どちらかに優越をつけたくて気持ちが落ち着かない。

 新たな記憶がインストールされた感がすげえ。

 いや俺がインストールして来たほうなのか?


 少しずつ記憶の整理がついてきて頭が回り始め、今度は苛立ちと憤りが湧き上がってきた。

 隣にカムカが居なかったら腹いせに壁ぶん殴りたい。


 四捨五入っていうか、小数点以下切り捨てして計算してりゃ、計算も楽だし間違うこともなかったじゃん!


 くそう!!

 なにしてくれるんだよ、少年ケーゴ!


 俺だけど!

 俺だけど!


 俺の異世界転生、人間関係がマイナスからのスタートじゃねえか!

 これなら転生前のほうがまだ良かったよ。

 異世界転生って現世の嫌な人間関係から逃げるためにあるもんじゃないのか?


 あああ!

 思い出してきた恥ずかしいぃぃぃぃ。

 なにが、


『俺、【剣聖】持ってます!(キリッ)』


 じゃい!!

 共感性羞恥症ぎみの俺、他人事とはいえめっちゃ恥ずかしい。


 他人じゃねぇ!


 俺だ!


 俺の過去だった!!

 あああ、もっと恥ずかしいぃぃぃぃぃぃっ!!


 みんなにごめんなさいって謝って回りたい!


 いまさら??


 無理ぃぃぃぃ!

 無理無理恥ずかしい!


 何が剣聖212レベルじゃ!

 0.00000212レベルじゃないか!

 小数点も知らんのかっ!


 ちくしょう! 知らなかったっ!!

 知らなかったよ、小数点!


 ステータスウィンドウを開く。

 頭の中で念じると、いわゆる俺にしか見えないステータスウィンドウが目の前に現れた。


 アルファンでは能力値はHP、MPを表すバーしか無く、それ以外のパラメーターはすべてスキルとして扱われている。

 筋力のパラメーターの代わりに、【筋力】レベル10みたいな感じで【筋力】のスキルレベルがあるのだ。


 俺のステータスウィンドウではスキルのレベルの数値がバグっているかのように表示領域からはみ出して表示されていた。

 ウィンドウ枠の右線から外に小数点以下部分だけがはみ出てしまっている。


 剣聖   レベル  |.00000212


 こんな感じ。

 縦棒はステータスウィンドウの枠の一部のつもりね。

 整数部分は表示されてない。たぶん『0』。


 ケーゴ君よ・・・。

 このな、ステータスウィンドウの囲いの右の線のところ付いてる点な。

 これが、小数点。

 これは数字の一種。

 囲み枠の模様じゃないの。

 その数字の左が本当のレベル。右は小数点以下の端数。

 分かる?


 実際は


 【剣聖】   レベル  0.00000212


 って事なのよ。


 本当は1レベルに満たないスキルは表示されない仕様なのだろう。

 だから、整数部分の『0』は俺にも見えない。

 でも、俺小数点以下8桁は見えちゃう仕様だから、1レベルに満たないスキルの小数部分だけ無理やり見えているに違いない。


 くそう・・・。


 一つのスキルを除いて全部のスキルが1レベル以下だったから、枠外に数字が表示されるのが普通なのだと思い込んでしまった・・・。

 小数点知らなかったら、ウィンドウ枠の横に小さく並んでる点なんて模様だと思うよな。


 そして、一つだけ神託前から1レベル越えてたスキル。

 少年ケーゴが壊れてしまったと思っていたスキル。


 【ゼロコンマ】 レベル 8|.00000000


 バグじゃねえよっ!!

 気づいてくれよ・・・ケーゴ・・・。


 俺だあぁあああああ!!


 何で小数点が枠の模様だと思っちゃうかなぁ。

 何で枠外がレベル覧だと思っちゃうかなぁ。

 数字はみ出てんじゃん。

 点々あるの枠の右側だけじゃん。

 デザインおかしいじゃん!

 デザインおかしいじゃん!!


 ひとしきり、布団の上で悶えたあと、ちょっと冷静になって考えをめぐらす。


 俺は逃げたい。


 リセマラできん。

 死んだら終わりだって神に言われた。


 というか、効率厨系のゲーマーの俺にとっては、この【ゼロコンマ】ってスキルは実に素晴らしいスキルだ。手放す気はない。


 でも、人間関係をリセマラしたい。


 街へ行こう。

 こんな所でアホみたいに計算ばっかしててもダメだ。


 旅に出るんだ。

 王都まで行って冒険者ランキング十傑を目指そう。


 ちょっと、ケーゴのスキルをチェックする。

 くっそ。1レベル以下のスキルが多すぎて見にくくてしょうがない。

 整数に到達しているスキルだけ表示してみよう。

 ソート機能でレベルを降順にする。


 【数学】 12レベル

 【科学】 8レベル

 【日本の歴史】 3レベル・・・


 ここら辺は転生前の知識分の繰り越しだろう。

 この間まで無かった。


 ちょっと飛ばして、ケーゴがこの世界で得たスキルだけを。確認する。

 【ゼロコンマ】8レベルを除くと、






 


 以上!!


 戦闘系スキルがないだけではなく、一般のスキルすら無い。

 リセマラできてたら、リセマラしてたかもしれん。


 えーと・・・

 膨大なリストからとあるスキルを探し出す。

 アルファンでリセマラして取得すべきとされていたスキルだ


 【力の才能】  0.01109803

 【速さの才能】 0.75220725

 【魔法の才能】 0.00103975


 これは成長バフだ。

 スキルのヘルプには『様々なスキルの成長率が上がる』と書かれている。

 この3つが高いほど関連するスキルの成長が速い。例えば【速さの才能】なら、【回避】や【命中】、【高速詠唱】など行動の速さに関係するスキルの成長率が良くなる。

 このスキルを持っている、すなわち1レベル以上あるキャラは明らかに成長が早いことが知られていた。2レベルあったやつは居ない。

 1レベル以下も存在したのか・・・。そりゃ、キャラごとに個性も出るよ。

 こんなのがサービス継続中にバレてたら大炎上してたろうな。


 てか、【魔法】0.001ちょいってどういうこと?


 低過ぎん?

 高いほうが良いとしても、1と0.001で千倍伸び方違ったりせんよな?

 俺、魔法使ってみたいぞ。


 1レベルを超えるスキルが無い原因はなんとなく想像がつく。

 神がリソースを割けないとか言っていた。だから、どのスキルのレベルも高くして貰えなかったのだろう。

 神託の時にスキルに目覚めることも多いのだが、それが貰えなかったのもそのせいかもしれない。


 だが、それ以上に、少年ケーゴが間違ったレベル上げをしてきた事が問題だ。


 少年ケーゴは【筋力】や【ダメージ】なんかが低いのを気にしていた。だから、育ちにくいのにパワー系を重点的に鍛えてしまったのだ。

 そのせいであんだけ訓練したくせに戦闘系のスキルがどれもこれも伸びず、1レベルにも満たなかったのだ。

 一方で【回避】と【俊敏】は意図的には鍛えてこなかったのにどちらも0.9レベルを超えている。

 俺は速さ系のスキルを優先して上げるべきだったんだ。

 というか効率厨、俺、現時点ですでに軽戦士かシーフになることを決意。


 ん~。

 これから、どうすっかな~。


 とりあえず今日のところはもう休みたい。

 ちょっと色々あり過ぎたので混乱している。もう寝たい。


 と、言っても、まだ仕事が残っている。

 仕事終えた後に、この状況になって欲しかったぜ。

 でも、まあ、残りの仕事なんて朝飯前よ。

 だって、今の俺、小数点以下切り捨てて計算するもん。

 11ケタの計算とかもうしないもん。


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[一言] なぜゲームのレベルは小数点あるの?そのようなゲームですか?
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