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馬小屋

 まずは寝床の確保をしておきたい。

 ホントに寝られるようなところを紹介してもらえたのか、めっちゃ不安。


 幾つもの十字路を抜けてエボーグというドワーフに教えてもらった隅の方の区画にやって来た。

 試しに一番隅にある扉を開けて中を覗く。


 誰もいないようだ。


「使っていいのかな?」

 一番東奥の隅っこの部屋を覗きながらリコが呟いた。

 

 部屋の中は殺風景で家具もなにもない。

 綺麗に四角くなっているが、掘り抜いて作られた部屋なのは丸わかりだ。

 一応、例の灯りが壁にかかっていて明るいが、人が使っている気配はなさそう。


「とりあえず。誰も使って無いみたいだし、お言葉に甘えようよ。明日、偉い人に確認を取ればいいんじゃない?」俺は適当に提案する。だって他にどうしようもない。

「うへぇ、ベッドも何もなしか。」

 ヤミンが中を覗いて不満を漏らした。

「野宿用の毛布とか使うしかないわね。」


 俺たちは近くの扉を勝手に開けて、人数分の部屋を確保する。

 どの部屋にも誰も居なかったし住んでいる気配もなかったので、ここを宿にすることを決め、ヘイワーズさんを呼びに戻った。


「ええっ!?」


 馬車の所に戻った俺たちは驚いた。


 今まで何もなかった、村の入り口のホールの片隅に屋根のない建物ができていた。


 建物には俺たちの馬車を引いてきた2頭の馬の一頭が入れられて、入り口から頭を出している。馬の前には丸太が2つ掛けられていて、外しさえすれば馬が出せるようになっていた。

 馬の足元には干し草の代わりに、なにか・・・なんだこれ? えーと、なにか柔らかい感じのものが撒かれていた。

 

 馬が収まった屋根のない建物の脇で、たぶんさっきのドワーフ、エボーグが手際よく板材を組み立てている。


「お。お前らか、早かったな。もうちょっと待ってくれい。」

 あんたの仕事のほうが早えよ。

「こんな、すぐにありがとうございます。」

「こんな感じでいいか?」

「ええっと、はい。」ヘイワーズさんを見ると首を縦に降ってアピールしてきたので、OKの旨をエボーグにお伝えする。

「屋根は無いんですか?」横からリコが訊ねる。

「洞窟じゃ雨も降らんぞ。そんなん居るか?」

「たしかに。」エボーグのごもっともな意見にリコが納得する。

「じゃあ、ここにもう一匹分を並べて作るがいいな?」

「はい。」

「代金はどうしましょう。」俺はエデルガルナさんを見ながらエボーグに確認する。

「別にいらん。あ、でも、なんか面白そうな材料を持ってたらくれ。」エボーグは太っ腹な返答を返した。

「報酬なら出せるぞ?」エデルガルナさんが提案する。

「ああ? あんた王国の人か? じゃあ、いろんなモンスターの外骨格を送ってくれ。建築素材につかえるか試したい。」

「承知した。」


 と、ドワーフは今の話をしてる間に2メートル位の大きさの板材を組み上げてしまった。

 これがもう一匹を入れる馬屋の外壁になるのだろう。

 

「おおい。そこのエルフの! 土を柔らかくしてくれい!」

 ドワーフが階段の方に大声で叫んだ。

「どこにですか? もうすこし明確に仕様を出しなさい。」

 階段をちょうど降りてきていたエルフがこっちに寄ってきてエボーグに言った。

「ここから、こ〜一直線にじゃ。この板を刺したい。」

 ドワーフが地面に線を引くように指をさして指示をだす。

「なんとも雑な指示ですね。【リクリファクト・グランド】」

 エルフが呪文を唱えた。知らない呪文だ。

「でかした。」

 ドワーフはそう言うと、2m四方の板を担ぎ上げて地面に突き刺した。

 板はまるで豆腐にでも刺したかのように簡単に地面にめり込んで固定された。

「あと一枚立てたい。こっちにも頼む。」

「承知です。で、どこをどのくらい柔らかくすれば良いんです?」エルフは腕組みをして、ため息をついた。


 エボーグがまた指で指示を出し、エルフはため息をついて呪文を唱えた。

 エボーグが最後の一枚の板を柔らかくなった地面に突き刺して、あれよという間に2頭の馬が安置される馬小屋(屋根はない)が完成した。

 居住区っぽいところでこのドワーフと会ってから30分くらいしか経って無いんじゃなかろうか?

 まさに匠の為せる早さだ。


 俺たちは馬小屋を立ててくれたエボーグにお礼を言うと、彼は「こんなちょっとしたことで礼なんか言うない!」とツンデレた。

 ていうか、馬小屋の建築ってちょっとしたことではないような。



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