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ルナちゃん?

 朝が来た。

 宿の一階の食堂に集まって、みんなと早めの朝食。


「ルナちゃん、今日は私の隣に座わろ?」

「ズルい。午後からは私ね!」


 我、困惑。

 向かいの席の状況に朝飯が喉を通らない。


 リコとヤミンがエデルガルナさんに両端から張り付いたまま仲良く朝食を取っている。


 たった一晩で何があった?


「ルナちゃん、今日も魔法おしえてね。」

「ルナルナ、王都についてもいっぱい教えてほしいよん。」


 ルナちゃん?

 ルナルナ?


「ルナちゃん、魔法を教える時はメガネかけてみたらどう?」

「おお、リコ。それは妙案。教えるのがうまくなるかもしれない!」

「ふむ。良い案かもしれぬ。」

 エデルガルナさんは村の宿には似つかわしくない完璧な作法で朝食を食べながら、めっちゃ普通に二人に対応している。


 揉めなきゃ良いけどと心配してたのに、朝になってみればこれだよ。

 俺も御者のヘイワーズさんと仲良くなったけど、ここまでじゃない。

 俺、寝てる間にまた転生してたりしないよね?


「えーと・・・。ルナちゃん?」エデルガルナさんに呼び掛けてみる。

「なにか?」

 エデルガルナさんがキリッと返事を返してくる。


 やっぱこの人がルナちゃんだ。


「エデルガルナさんがルナちゃんなの?」

 念のためにリコに訊ねる。

「? そうよ。ルナちゃん。」リコが頷いた。

「『エデルガルナ』だと固すぎるもの。絶対ルナちゃんのほうがルナちゃんには合ってるよ。」ヤミンも言う。


 そうか?


 ご機嫌の二人に挟まれた間で、完璧なマナーで宿屋の質素な朝食を食するエデルガルナさん。

 完全に凛々しい女騎士様なんですけど。


 せめて、ルナ様ではなかろうか?


「なんか、こんな馴れ馴れしくてしまって大丈夫ですか? エデルガルナさん。」

「構わん。」

「ケーゴは女の子の気持ちとか全然わからないから、ルナちゃんの本質も見抜けないんだもん。」

「ホントそうだ。ホントにそうだ。」


 なんで俺に飛び火した?


「ケーゴ殿は、もっと、リコ殿とヤミン殿の気持ちを真剣に考えるべきだ。」


 エデルガルナさんまで!?




 朝食を終えた俺たちは、再び馬車中の人となった。


 女子三人が魔法の訓練そっちのけで和気あいあいと話している。

 エデルガルナさんは相変わらずぶっきらぼうで固い受け答えだが、話をすること自体はわりと好きなようだ。

 なんか疎外感が俺の方にまわってきた気がするけど、馬車の中の空気が全体的に明るくなったので良しだ。


「ところで、ルナちゃんはどのくらい強いの?」リコが訊ねた。

「騎士は冒険者のようにカードを持たぬゆえ、スキルをお見せすることはできぬが、【剣】で66、【魔力制御】で57だ。ゴールド等級の騎士と言ったほうが通りは良いだろうか。」


 金等級の騎士!?

 上にはプラチナ等級の騎士しかいない。

 そして、プラチナ等級は常に一人しかいない。

 つまり、この国で二位タイの序列の騎士だ。

 え?

 そんなに偉い人だったの?この人。


 俺の知ってるアルファン通りなら職業レベルで言うところの魔法戦士90レベルに近いはずだ。そうとう強い。

 アルファンの俺の最後の時でも職業レベルは117レベルだった。


 本当にルナちゃん呼びして良いのか??


「貴君らはどのくらいなのだ。」

 エデルガルナさんが訊ねる。

「お姉ちゃんもリコも職業レベルはまだ5。」

 エデルガルナさんが物欲しそうに俺を見る。

「俺は2レベルです。」

「・・・そうか。」


 エデルガルナさんが残念そうな表情をする。

 この人、嘘がつけないのか時々、失礼な感情が顔面に出てくるんだよな。


「でもでも、更新できてないだけで、ホントはもっと強いんだよ!」ヤミンが言い訳する。


 たしかに、こないだ聞いた感じだと、ヤミンもリコもスキルが格段に上がっている。更新したら間違いなく15レベルは超えるだろう。

 俺も【命中】と【回避】は20レベル以上あるし【クリティカル】や【鞭】も15を超えている。死線をくぐってきたせいかスキルの伸びが半端ない。


 ヤミンは冒険者カードを取り出して、エデルガルナさんに見せた。

 エデルガルナさんは書かれているスキルを確認する。

「なるほど。スキルの配分がいいな。」

「更新すれば全部10レベルくらい増えるよ。」ヤミンが自信満々に言うが、多分ちょっと盛ってる。

「私のも見て〜。」リコもカードを取り出てエデルガルナさんに渡す。

 エデルガルナさんがリコのカードとヤミンのカードを見比べながら納得したように頷く。

「ルナちゃんも冒険者カードあればいいのにね。」リコが残念がる。

「ケーゴ殿は?」エデルガルナさんが物欲しそうに俺を見た。

「そんなたいそうなものではないですよ?」

 俺は自分の冒険者カードを渡す。


「ケーゴ殿はダメージが上がるスキルを取ったほうが良いな。【命中】や【回避】に比べてバランスが悪すぎる。」俺の冒険者カードを眺めたエデルガルナさんが言った。

「力系のスキルが伸びにくい体質なんですよ。」

「カリストレムでも【打撃】とれなかった?」ヤミンがエデルガルナさんと一緒に俺のカードを見ながら訊ねてきた。

「うん。全然伸びなかった。」

「諦めてはそこで終わりだ。まだまだこれからだ。」エデルガルナさんが励ましてくる。


 諦めたほうが効率の良いことだっていっぱいあるんですよ。

 口には出さないけど。


「ケーゴ、私にも腕相撲で負けるからねぇ。」

「だってヤミン姉さん脳筋だもの。」女子に力負けをからかわれてムカついたのでおちょくリ返す。

「なんだと!?」

 ヤミンが飛びかかってきて俺のことをくすぐる。


 ちょ、やめて。

 危ないし。


 必死でヤミンの両手を掴むが、ヤミンのほうが力が強いし、尻尾がある。


「ちょっと、ヤミン! 止めなさい。」

 と言いつつ、リコが隣から俺の腕をぎゅっと抱きかかえる。


 このタイミングでマジやめて。


「生意気なこと言うやつにはこうだ!」

「待って! タンマ、タンマ、タンマ、タンマ! ヴァハハハハハハハハ」


 お願い!

 尻尾で変なとこグリグリするのやめてっ!


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