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王女からのクエスト

「ケーゴ! おかえり!!」


 待ち合わせ場所で送迎の馬車から降りると、リコとヤミンが駆け寄ってきて心配そうに俺のことを覗き込んだ。


「大丈夫だった? なんかされなかった?」

「酷いことされたんなら言うのだよ?」

「王女からクエストをもらってしまった。」

「えええっ!?」


 結局、俺は王女からの魔術研究所を救うクエストを受領することにした。


 第二イベントは王都から馬車で一週間ほど北に行った高地にあるクリムマギカという村で発生する。これはアルファンでも一緒だった。

 どうやらこのクリムマギカという村全体が実は魔術研究所だったらしい。

 ちなみにアルファン時代、クリムマギカには行ったことがなかったし、第二イベントの詳細も知らない。

 というか、Wiki自体にほとんど内容が乗ってなかった。


 ルスリーはイベントの内容を詳しく知っているらしく、転生者をクリムマギカに置いて、イベントの成功に向けて現地で指揮をとって欲しいと考えた。


 本来エイイチが行くべきところなのだが、最近、レイドの予兆が観測され、そちらに駆り出されるそうだ。

 そういや、エイイチも王都に戻らないといけないとか言ってたな。


 この世界でのレイド戦は、超強いモンスターを選抜された冒険者達が代わる代わる殴っては撤退し、殴っては撤退してどうにかする。ゲームのレイドとそんなに変わらない。


 ただし、リスポーンはない。

 だから弱い冒険者が無理押しすると死ぬ。

 エイイチはレイド戦になくてはならない人材だ。

 というわけで、レイド戦には役に立たない転生者の俺が選別されたわけだ。


 そんなわけで俺はルスリーからイベントの内容を逐一教えこまれてある。


 クリムマギカのイベントも、カリストレムと同じくモンスターの襲撃イベントだ。

 ただし、カリストレムとちがうのは、モンスターの殲滅が勝利条件ではなく、一定期間モンスターからクリムマギカを守ることが条件になっていることだ。

 具体的に言うと、クリムマギカの魔術師たちがモンスター殲滅マシーンを組み上げるまで時間を稼ぐという内容だったらしい。

 もちろんモンスター殲滅マシーンってのは仮称ね? アルファン時には完成しなかったので名前がない。


 だったら、イベントが始まる前にそのモンスター殲滅マシーンを作っとけば良いんじゃね?ってのが、王女の考えだ。


 なので、今回の俺に依頼された内容は、クリムマギカが襲われるということを魔術師たちに伝え、モンスター殺戮マシーンを作ってもらうように先方に動いてもらうことだ。


「王女からの依頼で断れなかったんだけど、一緒に来てもらえない? 一応報酬は出るみたい。」

 俺はリコとヤミンに尋ねる。

「当たり前だよん。ケーゴは断れなかったんでしょ?」

「同じパーティーなんだから当然。王女殿下からのクエストなんて貰ってきてくれてありがたいくらい。」


 二人共快い返事。

 助かる。

 

 俺は、クリムマギカにモンスターの襲撃があることと、それに対処するための装置が出来上がるのを見届けて欲しいと王女に言われたことを伝えた。


「ところで何で王女様は襲撃があることを知ってるの?」

 早速、ヤミンが首をかしげた。

「神託があったみたい。だから、同じように神託を受けてカリストレムを助けたっていう俺に声をかけたんだって。信用できるって思ったんじゃない?」

 ルスリーから授かった言い訳を伝える。

「王女様も神託なんて受けるのね。」

「冒険者である俺に神託が下ったように、今回は王女様である必要があったんじゃないの?」

 適当な言い訳。

「その依頼本当に受けて大丈夫なの?」

 ヤミンが心配するような声を上げた。


 そういや、ヤミンは俺が神託を受けてないこと知ってたんだった。


「誰かが早馬で知らせれば良いだけじゃない?」ヤミンが訝しむように訊ねてくる。

 王女が神託を受けてない可能性を考えてるのかもしれない。

「近くレイドがあるから人は割けないんだって。あと、王女も神託初めてだから、もし襲撃が起こらなかったら俺たちが現場で怒られてほしいみたい。」


 ちなみに、これはホント。

 第二イベントが間違ってたら俺たちが怒られてくれ、と頼まれた。


「ええぇ。なにそれ。」

「でも、断れないし。」

 俺の返答にヤミンは不満そうだ。

「で、また、アイツが見張り?」


「え?」


 俺はヤミンの視線を追って振り返る。

 そこにはエデルガルナさんが立っていた。


「え? なんでまだ居るんです?」当たり前のようにこの場に居るエデルガルナさんに訊ねる。

「殿下より、しばらくお前たちに協力するように仰せつかった。」

「完全に見張りじゃん! ケーゴ、ホントに騙されてないよね?」


 え? ほんと俺、騙されてないよね?

 よくよく考えたら、この人真面目そうだし、この人に色々伝えてやってもらうんじゃダメなん?


「無礼な。騙してなどいない。」エルデガルナさんはツンと答えた。「しかし、お前たちには拒否権はない。明日、出発するからそのつもりで準備せよ。」

「ええっ!? 明日出発なんですか?」

「もっと王都見たい! 買い物したい! ルフルーラのケーキ食べたい!!」ヤミンが駄々をこねる。

 一番の問題は結局そこかよ。

 依頼について渋ったのも、もしかしたら王都から離れたくなかったからか?


「えーと、クエストが終わったら王都に戻ってくるんですよね。」俺はエデルガルナさんに訊ねる。

「そうだ。」

「経費は王女殿下持ちなんですよね?」リコが世知辛い質問をする。

「馬車は用意する。宿代と食事代くらいは経費で落とそう。」


「う〜ん、ならいいっか。」

「しかたない、王都に帰ってこれるんならまあ我慢するか。」

 リコとヤミンが納得する。


 お前らほんと現金だな。


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