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転生王女

 呆気に取られている俺をそのままに、王女は部屋の隅の小さな机の上に置かれたティーセットでお茶を入れ始めた。


「そこのテーブルの椅子に座っとれ。いつまでもひざまづかれておるのは不愉快じゃ。」


 王女に促され、テーブルに付く。

 お尻にまでかいた冷や汗を通じて、木の椅子のひんやりとした冷たさが伝わってくる。


 王女は自ら入れた茶を俺の目の前に置くと、もう一個のティーカップを持って俺の対面に座った。


「そうビクビクするな。ワシも転生者じゃ。」


「なんですって!?」


 王女なのに?

 ルスリー王女って、アルファンの時もふつーに居たぞ?


「驚いたか。」王女は満足そうに笑った。

「え? 日本かどっかで死んでここに転生したってことですか?」

「そうじゃ、元日本人じゃぞ。病気で死んでこっちに参った。」

「マジですか。ここ最近転生者と遭ってばかりです。転生者って意外と多いんですか?」

「そんなことは無い。今回については転生者がおらんかと思って、アアルファンタジーのプレイヤーがアクセスしそうな連絡手段を軒並み抑えて監視しとったからの。必然じゃ。」

「殿下もアルファンユーザーだったんですか?」

「一応はな。」


 転生者、アルファンユーザーばっかりやんけ。

 そういやゲーム開始時の利用規約に位置情報あったけど、アレ、悪用されとらんか?


「てか、なんで王女に転生してるんです? アルファンのルスリー王女ってNPCだった気がするんですが。」

「神に頼んで、王女にしてもろうた。」


 そんなん通るの?


「あれ? でも、うちの神様、アルファンユーザーが権力に近い所に行くの嫌ってましたけど、王女に転生なんて許して貰えるんですか?」


「課金したからの。」


「う、嘘でしょ!?」

 神、まじだった。

「この年齢で前世の自我がある時点で、お前とは違うことをさっせい。」


 そういえば、普通は16歳まで記憶ないんだった。

 いいなぁ。

 ちっちゃい頃から記憶あったら、いっぱいチートできるじゃん。強くてニューゲームじゃん。


「言っとくが、王女になるのにリソース使ったからスキルはからっきしじゃからな。それと、王女だからってまだ大した権力もないからな。」

「どうやって課金したんですか?」

「変なことを聞く。普通に銀行口座からじゃ。」


 しまった。

 銀行口座の番号なんて憶えてない!


「今から課金しようとか考えてるのかも知らんが、お前の考えてる程度の金じゃ何も買えんぞ。」


 ぐぬぬ、前世の格差が異世界にまで持ち込まれるのか。

 世知辛い! 世知辛すぎるぞ!


「金額ってどのくらいの金額だったんですか?」

「莫大な金額とだけ言っておこう。そもそも、この世界に転生するの自体にも大枚をはたいとるし、どこまでが王女になるために使った額かよう分からん。」


 そういやアサルがお布施額が足りないと転生できないみたいなこと言ってたような。


「いったい前世、何やってたんです?」

「前世の質問に関してはNGじゃ。せっかく転生したのじゃから興を削ぐな。様式美を大事にしろ。」


 ルスリー王女はそう言って、静かにお茶をすすった。


 くっそー。

 なんかヤバい目に合うんじゃないかと思ってドキドキしてたけど、ただこいつが転生者と会いたかったってだけか。

 エデルガルナさんも答えなかったんじゃなくて。そもそも知らなかったのかもしれん。


「あれ!? もしかして、エイイチやユージも知ってます?」

「エイイチはよう知っとる。ユージについてはついさっきエイイチから聞いた。」


 エイイチと会ってんのかよ。

 それで、あいつ、俺が連行されるって時に呑気に笑ってたのか。

 教えてくれよ。てか、一緒に来ても良かったじゃん。


「ちょっと待って? じゃあ、あんな詰問なんかしなくても、俺の事、異世界人だってエイイチから聞いて知ってたじゃないんですか?」

「お前はつくづく様式美というものを知らん。」


 しらんがな。


「あ、もしかしたら、エルナさんって人も知ってたります?」

「知っとるぞ。」


 知ってた!!


「教えてやらんが。」


 なんでだよ!!


「何でですか!」

「様式美かのう?」


 さっきから様式美ってなんなん?


「エルナのことを教えて欲しいならば、吾輩の『お願い』を聞いてもらおうか。」

「おのれ・・・足元を見やがって。」

「王女に向けてその態度は不遜じゃぞ。」王女は悪巧みでもしているかのようにニヤニヤと笑った。「それに、そのためにお前をここまで連行してもらったのだからな。是が非でも協力してもらう。」


 こいつ、王女を堪能してやがる。

 アルファンのルスリーまんまだ。


「どんなお願いでございましょうか、殿下。」

 俺は大げさに丁寧な動作で尋ねる。

「よいよい。少しは分かっとるではないか。」

 ルスリー王女は満足そうな声を上げた。

 そして、『お願い』というのを口にした。


「現在の魔術研究所が滅ぼされるのを救ってほしいのじゃ。ま、いわゆる第二回目のイベントじゃな。」


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