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女の戦い(席)

 馬車はカリストレムの町を出て、街道を西へと向かう。


 狭い。


 なんで4人用のボックス席で片側3人なの?

 あと、全員細いんだから、ホントならもっと余裕あるはずだろ?

 なんで二人共両端に自分のスペース取って俺の方に詰めてきてんだよ! 俺のスペースを侵食すんなし! パーソナルスペースくれよ!

 なんでそんなご機嫌でくっついくんねん!

 このままで王都まで1週間とか、いくら女の子に密着されてるとはいっても嫌なんですけど!


 対面では、女騎士さんが片側に寄って進みゆく馬車の風景を窓から眺めている。


 よくよく考えたら、片側3人でその対面は一人とか、女騎士さんが気まずすぎる。


 ひょっしてヤミンもリコも女騎士さんの隣に座りたくないからこんなことしてんのか?

 流石にそれは、女騎士さんに悪くなかろうか?


 空気読める俺、すっと立ち上がると女騎士さんの隣に座る。

 偉い。


「ちょ!」

「ケーゴ!?」


 俺が急に席を移動したので、倒れるように互いにくっつき合ってしまたリコとヤミンが俺を抗議の目で見ながら眉間にシワを寄せて口を尖らせた。


 そんな顔してもダメやぞ。

 そういう仲間はずれ的なのいくない。


 俺が突然隣に移ってきたので、女騎士さんが俺のことをじっと見つめてくる。

 見つめ・・・ 睨んでくる。


 あ、あれ?


 俺、勝手なことした?

 もしかして椅子専有できてたほうが良かった?


「す、すみません。ま、まずかったでしょうか?」

「いや、特には。」

 女騎士さんの声には不快な響きは感じられない。

 よ、よかった。


 だが、女騎士さんはそう言った後も俺のことを見続けるのを止めない。


「あなた、なんで人のことをじろじろ見てるんですか!」

「それじゃケーゴが居心地わるいのだよ!」


 二人共言い過ぎだけど、実際すごい居心地悪い。


 まだ見てくる・・・。


 騎士さんに見つめられるままに、仕方なく目を合わせる。

 真っ黒でキレイな瞳だ。


 よくよく気づけばこの人めっちゃ美人さんだ。

 背が高くて、落ち着いた感じが大人って感じがする。

 祝勝会の時とは違うがやっぱり男装の礼服みたいなのを来ている。俺が頭の中に勝手に描いている宝塚の人たちが来そうな衣装。

 長い髪のイケメンとも取れなくないが、厚手の礼服を着ていても分かるふくらみが女性であることを主張している。

 きれいな黒髪はリコのように後ろで一本に束ねられている。同じ剣士だし佇まいも似ているが、背の高さと顔の精悍さのせいでリコよりもずっと凛々しくみえた。

 リコに比べるとあどけなさと可愛らしさは感じられない。できるお姉さん感がすごい。

 リコももう少ししたら、こんな感じになっていくのだろうか。


「「ケーゴ!!」」

 リコとヤミンの叱咤にも似た怒声で我に返る。


 いかん。

 つい見とれてしまった。

 とても気まずい。


「ええと、その、騎士さんのお名前は?」

 俺はいたたまれなくなって、今更ながらの質問を口にする。

「エデルガルナだ。」

 女騎士さんは依然俺の顔を見つめながら答えた。

「たいそうご立派な名前ね。」ヤミンが食って掛かるように言った。


 なんでそんなに不機嫌ぶつけるん?

 この人、王立騎士団の人だぞ?

 俺を連行してるから警戒してくれてるのかもしれないけれど、そんな態度取らないほうが良い相手だぞ。


 とりあえずのところエデルガルナさんはヤミンの失礼な台詞など聞こえなかったかのように俺のことばっか見ている。


「ええと、さっきから私になにか?」流石に尋ねる。

「昔、どこかで会った気がする。」


 心当たりがない。


「気のせいではないですか?」

「気のせいではない。」


 断言かよ。

 頑張って思い返して、ふとひとつの心当たりに行き着く。


「そういえば、一度、ランブルスタという村の魔石屋で働いていた時に、騎士団の方に魔石を販売した記憶があります。」

「多分違う。」

「そうすか。」


 女騎士さんは俺の顔をガン見したまま、脳内を探っているようだ。


 知的美人な人にアホみたいに見つめられるとマジでドキドキするんですが。

 しかも、ちょっとずつ近づい来てません?


 いかん、顔が赤くなってきた。


「ケーゴが困っています。止めてください。」

 リコが静かな声でエデルガルナさんをたしなめた。

 口調は静かなもののイントネーションが攻撃的だ。


 ヤミンにしろリコにしろ、王女と関係のある偉い人に対してなんでこんなに当たり強くいけるのか?

 そんなにこの人のこと嫌いなんかな?


「そうだそうだ! モテないからって、騎士団の権力をかさに着てケーゴに迫ろうなんててズルいぞ。」

 ヤミンにいたっては何言ってんだ、こいつ。


「まあ良い。別に今思い出さないとまずいことではない。」

 そう言って女騎士さんは俺から目を離した。


 ホッとしたような、少し残念なような。


 女騎士さんは今度は前を向くと、今度はリコとヤミンをじっと見始めた。

 リコとヤミンがにらみ返す。

 特にヤミンは表情にも尻尾にも感情出しすぎ。


 なんかにらみ合いが始まった。


 怖い。


「そ、その、エデルガルナさんは偉い騎士なんですか?」この沈黙に耐えられない俺、再びエデルガルナさんに質問。

「第2特殊騎士大隊、大隊長だ。」エデルガルナさんが答える。


 大隊長って大物やんけ!


 リコが俺の驚いた表情を見て取って少し圧を引いた。

 ヤミンは空気を読まずに尻尾を逆立てている。


「構えるな。大隊と言っても名目上だ。王女殿下直属となる20名程度の騎士隊の長だ。通常の指揮系統の外の存在だ。」

「王女直属ってことは、女性騎士団なのですか?」

 なんか、そんなんアルファンの設定にもあった気がする。

「そうだ。みな、王都に居る。私だけ殿下の命を受けてここに飛んできた。此度の王立騎士団の遠征は王女殿下の下命によるものなのだ。そのため私が立ち会う必要があった。」


 おっと、カリストレムを助けてくれたのは王女様だったのか。

 なんで王女様はそんな事してくれたのだろうか?


「なんで、俺は王女殿下に呼ばれたのでしょう?」この流れなら訊ける。

「・・・・。」


 くそう。

 口かてえな。


「その、ケーゴはどうなっちゃうんでしょうか?」リコが不安そうに訊ねた。

 昨日も訊ねていたが答えてはくれなかった質問だ。

「・・・心配するなとだけ言っておく。王女殿下は寛大な方だ。」


 おおう、朗報。

 リコとヤミンと顔を見合わせてホッとする。


 でも、「寛大」って、やっぱなんか俺が粗相したってことだよな?


「俺は本当に何をしてしまったんでしょうか?」

「・・・・。」


 くっそう。

 なんともやもやする!


騎士数こっそり変更 4/9

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