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カリストレム攻防5

 突然の暗転にあちこちから驚きの声が聞こえた。

 一応は昨日から織り込み済みの事態ではある。


 魔術師たちがすぐさま【ライト】を飛ばして、あたりを照らしていく。


 しかし、魔導機の照明ほど明るさではない。


 辺りが少し暗くなったことで虫型のモンスターたちの動きが勢いづいてきた気がする。

 もちろんこっちの視野も狭くなる。

 防壁をどのようなモンスターが登ってきているかが暗闇過ぎて分からない。

 明かりの中に入ってきてからの対処になるので必然対応は後手後手だ。


 魔法支援も無くなった。

 魔術師たちが【ライト】をかけて回っているせいだ。

 魔術師が【ライト】をかけて回ってる間は火力が下がる。効果時間があるのでかけ直しも必要だ。

 【ライト】とはいえ、各所にかけてまわれば相当のMPを消費する。

 現に【ライト】用のMP温存のため、カシムからの【ウィークポイント】は今日は無かった。

 そもそも、今は【ライト】をかけにどこかに行ってしまっている。

 せっかく、【クリティカル】のレベルが上って、【ウィークポイント】さえあれば、余裕になってきたところだったのに残念だ。


 ここから明るくなるまでの数時間が死線だ。


 魔導機の灯りが切れてからも俺たちは善戦した。

 だが、連戦の疲れも絡んで、周りで戦死者が多数出始めた。


 支援の要請の叫び声が各所で響く。

 時が進むに連れて戦線の維持が困難になってきている。

 

 ついに、俺の隣の兵士が落ちた。

 昼、俺が外してる間に俺のスペースを埋めていてくれた兵士だ。


「南の兵をギリギリまで北に回す! それまで耐えろ!」


 どこかで声がする。

 昨日の夕方にも同じセリフを聞いた。

 すでに南はギリギリまで兵を削ってるはずだ。


 カッセルからのやけに強い冒険者たちの援護もない。彼らにしても全方向同時に手助けできるわけではない。

 北門を挟んで反対のほうも激戦だ。そっちで手一杯なのだろう。

 こっちに来てほしいが、向うにはリコが居るはずだ。

 ならば、向うにいてほしい。


 もう無理だ。

 このままではいつか崩れる。

 イベントボスだってまだ現れてない。


 ここまでか?

 後は少しでもスコアを伸ばすための時間稼ぎでしかないのだろうか?


 まだ暗い大地は、敵がどのくらい残っているかを明らかにしない。

 魔術師たちの灯してくれた光の向うに、もう敵が居なければいいのに。


 そんな願いは虚しく、次々と多足のモンスターたちが明かりの中に這い出してくる。


「 【乱舞】!」


 人員の欠けた防衛線の穴を埋めるため、鞭を振り回す。

 だが、そこまでの広域を俺の鞭はカバーしない。

 全部の敵を倒せるだけのダメージもない。


 何匹もの虫が【乱舞】を抜けて這い上がってくる。


「【牙突】!」

 抜け出てきたモンスターを鞭の先が貫き、一匹倒す。


 だめだ。

 手数が足りない。


 さらにたくさんの虫が這い上がってくる。


 防壁上に這い上がって来た虫たちが俺を囲むように迫り来る。

 ダメージソースの少ない俺では、防壁から這い上がるの阻止することはたやすくても、防壁の上に上がられた敵を一斉に倒すのは困難だ。


「【乱舞】!」


 無駄と解っていても、少しでも相手を押し留める。

 この鞭のラッシュが終われば、敵は再び俺に向かって走り出すだろう。


 絶望はない。

 とっくに底にたどり着いている。


 絶望ってのは変化量だったのだと気がつく。

 希望が失われる速さなんだ。


 少しの安堵と猛烈な無念が襲ってくる。

 俺にできることはその安堵に必死にしがみつくことくらいだった。


 最期を覚悟した瞬間だった。


「ドォーーーンン!」


 地響きとともに何者かが俺の目の前に着陸した。


 俺の目の前には、ゴツいフルアーマー騎士が立っていた。

 今、背中からジェット出てなかった?


「【ガード】」

 

 無機質な声が聞こえた。

 

 俺に来た攻撃がすべて、目の前で弾かれる。

 他人への攻撃に割り込んで、全部自分が肩代わりするタンクの基本技だ。

 

 俺の前に現れたフルアーマーの救世主は、前世で見たようなスマートで人の形にそった甲冑ではなく、ロボットかのようにごてっとしている。

 アニメとかで出てきそうなデザインだ。兜にはおしゃれな感じで髪の毛のような長い房がついている。

 更に背中に噴射孔みたいなのがついたバックパックを背負ってる。


 フルアーマー騎士は腰にぶら下げていた刃のついていない二本の柄を両手に持った。

 するとブヲンという音とともに、柄からぶっとい紫の刃が伸びてきた。

 騎士はその二本の刃を闇雲に振り回す。

 その瞬間、目の前の虫たちが防壁の先の闇の中へ吹き飛ばされていった。


 かっけえ!!

 ロボか? ロボなのか!?


「大丈夫ですか?」


 意外な声!

 女の子だろうか? 少年だろうか?


 彼? それとも彼女? は言った。


「もうすぐ援軍が来ます。それまで耐えてください。」


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