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ゼロコンマ道場爆誕

 さて、朝から戦っていたのと、こっちのレベルが上がってきてグリーンキラーを圧し始めたので一旦休憩。

 倒したグリーンキラーから魔石を回収して、ちょっと距離を取って遅めの昼休みにする。

 その間に、キラー君たちはまた増えてくれ。


 みんなで車座になってリコの持ってきたサンドイッチを食べながら今日の成果を話し合う。

「なぜか【集中】とか取れてしまったのだ。」ヤミンが言った。「だけど【遠距離】と【スナイプ】はどっちも取れなかった。」

「もともと、【スナイプ】は高いから上がりにくいし、仕方ない。でも【遠距離】は何で取れなかったんだろ? もっと離れてみようか?」

「これ以上遠くなったらダメージいかんよ?」

「いいんじゃない?」

 別にかならず倒さにゃならんわけじゃないし。

 リコもごきげんだ。表情がニッコニコでリスのようにサンドイッチに夢中だ。

「私、【回避】と【受け】と【命中】と【打撃】と【剣】と【盾】と【三段突】が上がった!」


 あがりすぎぃい!

 しかも、あんだけ動いてなお元気。


「ぬぬ、お姉ちゃんがリコに追い抜かれてしまう。」

 リコもヤミンも職業レベルは5だったが、多分現時点でリコは6判定になるんじゃなかろうか。

「【遠距離】【スナイプ】【命中】あたりが今日中に上がれば良い。【集中】で精度が上がるはずだから、午後はちゃんと上がるよ、きっと。」

「ケーゴは?」

「【パリィ】【援護防御(鞭)】【命中】あと【クリティカル】が2レベル。」

「うぇええん。あたしだけあんま上がってない!」

 ヤミンが声を上げて拗ねだした。

「でもスキル一つ上がるのだってすごいことなのよ?」

「まあ、上がったばっかだと次上がりにくいし、午後はヤミンさんばっか上がるんじゃない?」

「ケーゴは【クリティカル】2レベルも上がってるじゃん!」

「いや、俺は【ゼロコンマ】あるから。」

「ずるい!」

「いいなあ。」

「えーと、一応どういうのが伸びやすいかくらいはわかるよ?」

「そうなの!?」リコとヤミンが我先にと身を乗り出して俺の目を覗き込んでくる。


 二人とも近い!

 両目がどっちの胸元に向かうか悩む。


「その、冒険者カード見せてくれる。」

 俺はふたりのどちらとにも目を合わせないようにして言う。

「「はい。」」

 二人が同時に。

 先にヤミンのを取った。

 リコがほっぺたを膨らませてむくれてみせた。

「ヤミンは・・・


 冒険者カードの表示をスクロールしながらヤミンのステータスを見る。ちなみに小数部は省略。

才能は【俊敏】と【筋力】

一般スキルが【打撃】5【命中】7【回避】4【弓】4【短剣】4【長弓】2【軽業】【ケーキ(食)】【集中】


【ケーキ(食)】ってなんだ?

 説明を見る。『ケーキは別腹が可能。』

 ・・・レアスキルなのか?


 技は【スナイプ】6 【応急処置】【隠蔽】


 そして、例の才能スキルを確認。


 【速さの才能】0.72897088、【力の才能】0.95450252、【魔法の才能】0.36978855


 てか、実はパワー系じゃねえか。


「【強打(矢)】とかは取ってないのか?」

「うんにゃ? か弱い美少女なのよ?」技とらしくしなをつくるヤミン。

「お前、【筋力】あるじゃねえか。あと、弓、本気で引いてないだろ?」

「壊れたら困るから引いてないよ。」

「ヤミンよ。弓はきちんと本気で引け。ヤミンはダメージを与える系がよく伸びるはずだ。【強打】と【強弓】がすぐ取れる。」

「ニッシッシ。壊れたら責任取れよ?」ヤミンが笑いながら減らず口を叩く。

「解ったから、ギリギリまで本気で引いて?」

「うむ。」


 ヤミンはさっきまですねて居たのは何だったのか、なんかとてもごきげんだ。

 と、リコが口を尖らせている。さっきまでのご機嫌は何だったのかちょっと不機嫌が見えかくれしている。


「リコのも見せて?」

「はい。」

 リコがそっけない感じでカードを突き出した。

 順番ってそんな大事?


 さて、まず、リコの才能系スキルは【炎魔法】【体力】【持久力】【忍耐】

 

 多いな。いいなぁ。


 スキルは【剣】6【命中】7【回避】6【受け】5【打撃】4【盾】3【パリィ】1【応急処置】3

 技は【牙突(剣)】2 【応急処置】【ファイア】【ライト】【ファイアボルト】【ヒール】


 あと4日でいろいろレベル10にしときたいとこだ。


 【速さの才能】0.69897088【力の才能】0.78450252【魔法の才能】0.76978855


 まんべんなく良い。


「リコは万能型だね。どれを上げても伸びる。やっぱり【体力】に物を言わせてめいっぱいまで頑張れ。」

「ヤミンのときのほうが具体的だった。」

 リコがほっぺたを膨らませてむくれる。

「どうしてもっていうのなら、【閃(剣)】がリコには向いている。【打撃】の活かしにくい【牙突】より有効なはずだし取得フラグも満たしている。」

「ん。」


 まだ不機嫌。

 なんなの? どうしたの?

 さっきまで機嫌良かったのに。


「なんで、急にヤミンのこと・・・」

 と、リコがなにか俺に文句を言おうとした瞬間、横からタキニオが割り込んできた。


「俺たちもケーゴさんにアドバイスをもらうわけには行かないでしょうか?」


 気づけばタキニオの後ろにパーティのメンツが直立して並んでいた。


「「「お願いします!!」」」


 後ろの連中も頭を下げた。

「か、構わないけど・・・。」

 俺は突然の彼らの態度の変化に困惑しながら首を縦に振った。




 その後も訓練は順調に進み、日暮れまで俺たちはみっちりグリーンキラーと戦い続けた。

 この日も街へのモンスターの襲撃は始まらず、俺たちは充実した訓練を終えて無事街へと帰ってきた。


「師匠! 今日はありがとうございました!! 」

「あ、はい。」


 これでもかと頭を下げるタキニオたちに俺、困惑。

 朝の嫌な感じからどうしてここまで礼儀正しくなった?

 恥ずかしいので止めて欲しい。


 なんか、昼に彼らのスキルを見ながらしたレベル上げのアドバイスがめっちゃハマってしまったらしい。


 特に魔法使いが、炎魔法が得意とか言ってたくせに、【風魔法】0.99883694とかだったので【そよ風】って風吹かせるだけの基本魔法を試させてたら、【風魔法】が上ってしまったのがったのが大きかった。

 基本、【風魔法】は才能スキル扱いなので普通は上がらない。上がることがあっても神託とか奇跡とか呼ばれてしまうくらい激レアな現象だったので、その瞬間に俺の立場が猛烈に上がった。

 他にも、彼らのスキルがタイミングよく次々と上がってしまったもんだから、もう俺は今、教祖のようなあつかいです。


「師匠! 明日もよろしくお願いします!」

「あ、はい。」



 そんなこんなんで、満月の日まで4日間みっちり俺たちはグリーンプラントを殴り続けた。



 その結果、リコは基本技能である【剣】や【受け】あたりが10レベルを超え他の技スキルや特殊スキルも相当伸びた。

 ヤミンはここに来て急にパワー系に切り替えた割には、【強打】や【強弓】がすでにどちらも9レベル。【遠距離】や【スナイプ】も上がった。【鷹の目】【風よみ】なんかの弓士として一人前として認められるのに必要なスキルも軒並み憶えた。

 俺も、【クリティカル】8レベルを皮切りに、【鞭】5レベル、【命中】も10まで上がった。あと、【牙突(鞭)】【乱舞(鞭)】なんて技スキルも獲得できた。


 正直、リコもヤミンも職業レベル10は超えてると思うが、冒険者カードを書き換えないと職業レベルの更新ができない。

 さらに、冒険者カードの更新はクエストの達成時にしかできないルールなので、二人とも職業レベルは5のまま。

 俺に至ってはカード作ったときの2レベルのままだ。


 例の6人の新人パーティーもこの4日で様々なスキルが6、7レベルまで上がったらしい。


 今日でようやく修行は終わりだ。

 みんなが挨拶のために俺の前に整列した。

 俺、こんなん求めてないよ?


 それの前にはタキニオたち6人が並び、そして、その後ろに噂を聞きつけて増殖した弟子たちが25人、ずらりと並んでいた。

 俺、こんなん求めてないよ?


「師匠! 一言お願いいたします。

「え゛!? あ、はい。ええと。えー、み、みなさん、お疲れ様でした。」


「今日までありがとうございました!」

 初期メンバーの6人が率先して大声を上げる。


「あっした!」

 彼らの後ろの25人の弟分が6人の兄弟子に続いて俺に頭を下げる。


 どうしてこうなった?


 ギルド100人くらいしかおらんのだろ?

 3分の1来てるじゃん。


「明日の本番、頑張らせていただきます!」

 総勢30人くらいが、再び俺に頭を下げた。

 ほんとやめてください、通行人がめっちゃ見てます。


「師匠の教えのおかげで俺は壁を超えることができました。尊敬します。」

 あなた、結構な先輩ですよね?

 俺、まだ冒険者カードが青色のまっさらな新人っすよ?


「師匠のスキル上げ効率への論理的な考察、甚く感動しました。」

「師匠のおかげでスキルの上げ方に関する新たな視点を得ることができました。」

 ダダウさんとダダマルさん? あなたたち完全に俺より強いですよね? こないだ一回仕事しましたよね?


「・・・・。」

 カシムさん。

 遠くの物陰から羨ましそうに見てないでください。


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