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レモンさん、ことの重要さに気づく

 俺たちが街まで戻ってきたのは、夜中だった。

 唯一人残っていたレモンさんに急ぎ感知器の数値のことを報告した。


 ここから、レモンさんはパニックだ。


「99%なんて発生直前じゃない!!」

 レモンさんが大声を上げた。


 あれって『%』表示だったのか。

 何で%の概念があって小数が知られてないんだ?

 

「どうしよう。ピンチだわ。ピンチだわ!」

 最初から言っとろうに・・・。

 さては、今まで、俺たちの話、本気にしてなかったな?

「ギルマスに連絡を・・・ああ、今、王都だ! 早馬でも間に合わない。急いで連絡しなきゃ!」

 連絡するの? 間に合わないんじゃないの?

「そうだ、ケーゴ君、市長呼んできて!」

「俺っすか!?」

「私、他のギルド運営を集めなきゃ。衛兵にも守ってもらわなきゃ!」

「でも、俺が市長のとこ言っても相手にしてもらえないと思いますよ。」

「それもそうね。」

「じゃあ、リコちゃんお願い。」

「ええっ!? 私?」


 おい。

 完全にパニクってるな?


「落ち着いてくださいって。」

 完全にまともな判断ができてないレモンさんをなだめる。

「感知器があるってことは、感知器が反応したときの緊急要項があるんじゃないですか?」

「そうだわ、そうだわ! ナイス、ケーゴ君。きっと市長なら知ってるはず。ケーゴ君、呼んできてちょうだい!」


 駄目だこりゃ。


「どうしましょ・・・。」

 俺は助けを求めて、カシムとヴェリアルドを見上げる。

「すまんが、99のヤバさが分からんのでなんとも。」ヴェリアルドが言った。

「99なんてレイド直前の数値よ! あああ、何も準備してない!」

「じゃあ、すぐにも来るってことか?」カシムが尋ねる。

「そんなの分かんないわよ!」

「ともかく、できることをしろ。いまさらジタバタしてもしょうがねぇだろ。」カシムが怒鳴るでもなくおちついた様子で言った。「まず、市長に連絡だ。市長が街の仕組みを一番解ってるはずだ。レモン、お前が言ってこい。他の人間じゃ無理だ。まずはそこからだ。」

「解った!」レモンさんが立ち上がって駆け出す。

「おいっ!」カシムが静止するがレモンさんは逃げ出すように駆け出していってしまった。「ったく、話の途中だってのに。」

「俺達は北と西の衛兵に知らせてこよう。」ダダマルが言った。「俺は北に行く。ダダウは西へ。」

「おう。任せた。」

 俺たちに手をふって、ダダウとダダマルは出ていった。

「俺たちは、ギルドの他の執行役を起こしてこよう。」ヴェリアルドが言った。「カシム。お前、誰かの家わかるか?」

「エルペインしか知らん。」

「じゃあ、そっちを頼む。俺はシラタを呼んでくる。あとは二人に呼ばせよう。」

「あの、俺たちは?」

「お前たちは、ここで待機していろ。特にケーゴ、お前は一日大八車を引いてたからんだから休息を入れておけ。」ヴェリアルドが言った。

「そうしろ。いつ襲撃があってもおかしくねえ。その時に使いもんにならんのは困る。」カシムもヴェリアルドの案に賛同した。「すぐに戻る。先にレモンが戻ってきたら俺たちがギルドの役員を呼びに行ったことを伝えといてくれ。」

 そう言って二人は出ていった。


 俺はギルドの長椅子に腰を下ろす。

 とりあえず、人は集められそうだ。まだ5日あるはずだし、多分大丈夫だろ。


「ケーゴ。よかったね。やっと信じてもらえたね。」リコが俺の隣に腰を下ろした。

「まだまだこれからよ。」ヤミンも反対側に座る。

「襲ってくるモンスターが今日の大ムカデみたいなのばっかりだったらやばいわよね。」

「・・・まさかぁ。」

 イベントボス以外はそんな強いのは来なかったはずだ。アルファン最初のイベントだし、たぶん、弱い敵のはずだ。むしろさっきのムカデがイベントボスまであるかもしれない。

「俺たちの話もようやく信じてもらえたし、ある程度人が集まればきっとなんとかなるでしょ。」

 アルファンのイベントだと、どのくらいプレイヤー居たのかな?

「でも、本当に8万匹にいっぺんに来られたら大変よね。」リコが不安そうに言った。


 1000人居たとして一人80体か・・・。

 俺たち弱いし、衛兵も弱いからなぁ。


「この街ってどのくらい冒険者居るの?」ふと、気になって尋ねる。

「100人くらいじゃない?」ヤミンが答えた。


 全然足らんやんけ。


 あれ?

 冷静に考えるとヤバない?


 アルファンだったらリスポーンできたからいいけど、俺、たぶん死ぬと死ぬんだよね?

 リコとヤミンは死んだら間違いなく死ぬんだよね?


 俺、レモンさんのことなんて何一つ言えなかった。

 俺こそが事態を甘くみてた。今になってこの出来事を本気に捉えて震えが止まらない。


「ケーゴ?」

「どうしたかね?」

「いや、なんでもない。」俺は平静を装って言った。


 これは、ゲームじゃない。


 イベント時のリスポーンなんてゲーム内での当たり前だった。

 ここでは、それは許されない。

 俺たちは死ぬ。


 俺は、なんてことを始めてしまったのか。


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