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ギルドの英雄

 しばらく部屋で休んでいると、用があるからと言ってちょっと前に出て行ったヤミンが帰ってきた。


「行くよん。」


「行く?」

「はい! リコも起きる!!」

 ヤミンが俺の質問にはなんの回答もなくリコのお尻をひっぱたく。


「ん? なにぃ? ごはん~?」


 うへぇぇぇぇ。

 寝起きリコ殺傷力たけぇぇぇええ!!


「そうそう、ごはん! ごはん! 準備して。」


 ヤミンに急かされて俺と寝ぼけ眼のリコは街を歩く。


 リコが道中、俺の服の後ろをずっと掴んでいたのでとても恥ずかしかった。

 互いに気まずくて話もそぞろだったのに、リコの手は俺の服の裾をしっかりと掴んで離さない。

 手を離したら俺がどこかに飛んでいくとでも思っているのだろうか。


 ヤミンは俺たちを冒険者ギルドの近くの酒場に連れて来た。

 リコとヤミンと三人でギルドの近くの酒場に入ると、歓迎が待っていた。


「「「「お疲れ! ケーゴ!」」」」


 俺が酒場の入り口から入るなり、中で飲んでいた冒険者たちから歓声が上がった。

 酒場の中には20人からの冒険者たちがいた。酒を飲みながら俺たちのことを待っていたらしい。

 酒場の前までは俺を引っ張って来たヤミンが、いざ、中に入る段になって先に入るよう促したので何かと思えば。

 てか、「お疲れ」と言われたものの、知らん人ばっかなんだけど・・・。


「えーと。これはどういった?」

「新人狩りを追い詰めた新人冒険者を労いにな。報酬も何もなしじゃ可哀そうだろう。」

 大斧を背負った戦士が話しかけてきた。


 誰?

 ギルドの人かな?


 いきなり距離詰められて人見知り俺、困惑。

 でも、嫌な気分はしない。


「ケーゴだったっけか? よく、新人狩りをつきとめてくれた。今日はお前が主役だ。ここは俺たちのおごりだから酒も飯も好きにやってくれ!」


 酒場のテーブルにはこの世界ではまだ見たことない旨そうな料理が並んでいた。

 もう、半分以上ない皿もある。

 こいつら、俺関係なく飲みたいだけ何じゃないだろうか?


「俺、あいつにぜんぜん敵わなかったんですけど・・・。俺なんかがこんなのいただいちゃっていいんですか?」

「当たり前だ。お前とリコとヤミンが解決・・・とまではいかなかったけど、なんとかしてくれたようなもんだ。」大斧の戦士は言った。


「強さや勝った負けたなんて関係ねえんだ! 冒険者がデカいことをやるのはハートよ!」

「そそ、大活躍だと思いなさい。」

「新人一発目でドデカい仕事をやったってよ、ギルドのクエスト履歴には残らなくても俺たちの心に残しとくぜ!」

 戦士が言うのに合わせて、近くにいた冒険者たちが俺をほめそやかす。


「良かったね。ケーゴ。」

 リコが自分の事のように喜んでくれる。

「まあ、あんまり気負うな。みんな何かにかこつけて飲みたいだけだ。ちょうど大金も入ったことだし。」

 横から魔法使い風の男が出てきて言った。


 はて?

 この人も何か見覚えのあるような?


「すまんが、新人狩りは取り逃がしちまった。さすがに、あの人数を殺れる相手を一人で追いかけるわけにも行かなくてな。」


 今度は軽戦士? スカウト? っぽい人が出てきた。

 この人も見覚えがある気がする。


「なにはともあれ、『クライアント』が無事でよかった。」


「あっ!」


 そうか!

 この人たち、ユージと戦ってた時に俺を助けに来てくれた冒険者だ!


 リコたちを助けに行く前、

 ギルドにも衛兵にも協力を断られた俺は、冒険者ギルドに有り金全部叩きつけて、上位冒険者向けに大地の裂け目で俺かリコたちを見つけてもらうよう、依頼を出した。


 依頼ならギルドは受けざるを得ない。

 そして、その依頼を受けてくれたのがこの人たちなのだ。


「戦闘もなかったし、新人たちはほとんど守れなかった。依頼をこなしたとはいえさすがに全額懐に入れるのもどうかなって事になってな。お前さんの活躍祝いってことにして少しだけ還元させてくれ。」

「俺の依頼を受けてくれたんですね! ありがとうございます。助かりました。」

「なに言ってんだ、大地の裂け目の底を見てくるだけで銀貨3000なんて破格にも程があるぜ。」

「本当は新人狩りを倒せれば良かったんだが、金額に見合う仕事をできなくてすまない。」

 スカウトが頭を下げた。


「ケーゴ、そんなことしたの!?」


 リコが俺のそばに来て耳打ちする。

 近い。少しドキドキする。


「うん。」

「そっか。」


 リコは俺の横に居座ると、そっと俺の手を握った。

 あの・・・リコさん??

 そっと手を引こうとするもリコの手が逃がしてくれない。

 とても恥ずかしいんですが。


 ていうか、リコは自分がもう恋愛対象になりうるかわいい女性だということを理解したほうがいいんじゃないだろうか?

 幼馴染だって恋愛対象にはなりうるのだぞ?


「あの後どうなったんですか?」

 リコは赤面しないよう必死に堪えている俺の事なんて気にもとめない様子で戦士の人に訊ねた。

「その・・・俺も一方的にやられて気絶しちゃったんでどうなったか知りたいです・・・。」


 俺たちの問いかけに、戦士はあの後の顛末を話してくれた。


 結局、ユージの行方は分からないまま。

 先に目覚めたヤミンがギルドにいきさつを説明し、ようやくガラドが新人狩りの仲間だったことがようやく信じてもらえた。

 他の裂け目の底に今まで行方不明になった冒険者たちの死体があるかもしれないと、ギルドも重い腰を上げて探し始めた。

 ユージについては手配書が回され、他の街のギルドにも情報共有をしていくとのことだ。


 これで新人狩りが収まってくれると良いが、仮に、新人狩りが無くなったとしても、ユージがこの世界の人々をがゴミでも捨てるかのように殺し続けることは変わらない気がする。

 ボロボロにやられた悔しさもあいまって胸糞が悪い。


「それにしても、みなさんがすぐに駆けつけてくれたおかげで助かりました。」

「おうよ。」大斧の戦士は答えた。「でも、それは俺たちじゃなくてヴェリアルドに礼を言ってやってくれ。」

「ヴェリアルド??」

「ヴェリアルド! ちょっとこい!!」

 戦士の人は後ろを振り返って酒場の奥で叫んでいた冒険者に声をかけると、奥で酒を飲んでた冒険者が何やら気まずそうにやって来た。


 こいつ知ってる。

 ギルドにガラドの事を伝えた時に、文句を言ってきた奴らのうちの一人だ。


 ヴェリアルドは俺と目を合わせないようにそっぽを向いている。


「コイツが駆けまわって俺たちのこと探し出して、クエストに行くように急かせたんだよ。」

「べ、別にお前たちが心配だったっていうか、同じギルドの面子として当然のことをしたまでなんだからなっ!」


 真っ赤になるヴェリアルド。

 ツンデレかよ。

 それされるなら女子が良かった。


「ガラドの事はヤミンから聞いた。悪かった。あいつは何度かいっしょに冒険した仲だったんだ。」

 ヴェリアルドはうつむいたまま静かな声で謝った。


 きっと、この人は仲間思いのいい人だっただけなんだろう。

 だから、俺のことも助けてくれた。


「ありがとうございます。ヴェリアルドさん。おかげで命拾いしました。」

「すまねえな。俺にもっと力がありゃ、最初っからついて行ったりもできたんだろうけどな。」

「そんなことないです。ヴェリアルドさん。私たちのためにありがとうございます。」リコもヴェリアルドに礼を言う。

「俺、助けてもらってばっかで、何もできませんでした・・・。」


 結局、俺はボコられるだけで、みんなに助けられて、リコを救って貰ってホッとしてるだけ。

 二人が助かったことは嬉しいことだけど、俺が助ける側になれる力があったなら、谷底で死んだたくさんの人たちも救えたかもしれない。

 俺が弱いせいで誰も救えなかった。


「私もケーゴに助けられただけで何もできなかった。」リコも谷底の惨状を思い出したのかうつむいた。

「なに言ってる。新人狩りの人相も掴んだし、手引きしてたらしいガラドも死んだ。お前らのおかげで新人たちも安心ってもんだ。」

「でも・・・。」

「でももカカシもあるか。救えた奴の事を考えろ。人ひとり救うってのは死ぬほど大変な事なんだ。自分の手の大きさを過信するなよ。お前のおかげでリコもヤミンも、タキニオって冒険者見習いも助かったんだ。」

「タキニオ?」

「あっちで、ヤミンに媚びてる情けないやつだ。」


 ヴェリアルドの指差すほうを見ると、いつの間にか奥に行っていったヤミンの隣に同い年くらいの冒険者が居た。


「ヤミン姉さんが助けに来てくれたおかげで僕の命はあるようなものです!」

「うむ、お姉ちゃんをいつでも頼ってくれたまえ。酒!」

 酔って気持ちの大きくなっているヤミンにタキニオがヘコヘコしながら酒を継いでいる。

 どうやらヤミンが助けたことになってるっぽい。


「アイツは今のお前らの小さな手ですくったには充分な成果だ。お前がいなきゃアイツも死んでた。お前が助けた。だから、もっと胸を張れ。」ヴェリアルドは俺たちを元気づけるかのように言った。


「はい。」


 俺は自分の小さな手の中に、リコの小さな手のぬくもりがあるのを感じていた。


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