目覚め
目覚めると見覚えのある天井が目に入ってきた。
茅葺き亭の俺の部屋だ。
「ケーゴっ!!」
ベッドの上に身を起こしたとたん、リコが抱きついてきた。
「よかった! ケーゴ! ケーゴ!!」
リコが泣きながら俺にしがみついて、俺の胸に顔を擦り付けてくる。
気絶する前にエロい目にあわされそうだったのを見せつけられてたせいで、ちょっと変に意識をしてしまう。
「ケーゴ、ケーゴ生きてた! 生きてるよ!」
「うん。」
「私、私! ケーゴが助けてくれて! ずっと会いたくて、ずっとごめんなさいしたくて、でも、助けてくれて。生きててくれて。ごめんなさい、ごめんなさい!」リコは泣きながら叫ぶ。
言ってることが支離滅裂だ。
「私、ケーゴ置いて出ていったのに、私のこと助けてくれて。ケーゴいつも私の英雄で! だから、なのに、私、私!」
リコがこんなに泣いてるのって何年ぶりだろう。
少年ケーゴのころの記憶が幼くして親をなくしたリコの小さな姿を思い出す。
俺はその時のようにリコをやさしく抱きしめる。
「大丈夫。もう大丈夫だからさ。」
「うえぇぇぇぇん!」
泣いてる。
柔らかい。
温かい。
ああ、リコだ。
ずっと、俺のそばに居てくれた大事な幼馴染。
ずっと、俺のことを待っていてくれた素敵な幼馴染。
こんなにも小さくて、華奢な存在だったのか。
手の中で彼女が生きているのが伝わってくる。
本当に良かった。
リコは生きてる。
プログラムのわけがない。
無事で良かった。
ずっと会いたかった。
ちょっと安心して、はっと思い出す。
「ヤミン! ヤミンさんは!?」
「んにゃ~。せっかく感動の再会なのに私の事まで心配してくれるんだ~。」
ヤミンが俺の後ろからもたれかかって来た。
首に腕を巻き付けてきて締め付ける。
甘噛みならぬ、甘ヘッドロックみたいな。
「ありがとね。」
ヤミンがギュッとしてくる。
固い。
何か、APCがどうこう悩むのってバカらしいよな。
可愛い子は可愛いねん。
このカワイイ子達をただのデータだって思えるわけがない。
「びっくりしたよん。君は結構強かったんだね・・・。」
「いや、あの後めっちゃぼこられましたが。」
ホントに。
あんなん見られてたら、ヤミンの態度は全然違ってたに違いない。
「ほんと怖かった。君は私の恩人だよ。本当にありがとう。」
背中に顔を埋められたのを感じる。
「君の事、役に立たないみたいな扱いしてごめんなさい。君がいなかったら私たちはここには戻ってこれなかった。」
ヤミンは俺の背中にピッタリとくっついたまま、尻尾を伸ばして俺のお腹をそっと撫でた。
なんか照れくさい。
と、リコが寝息を立てているのに気が付いた。
泣きつかれて寝てしまったらしい。
起こさないようにゆっくりと俺の太ももを枕にするように寝かせる。
「大人しくなったと思ったら・・・。」
「安心したんだよ。ケーゴの事が心配でずっと起きてたんだもの。」
ヤミンは俺から離れると、ベッドわきの椅子に腰をかけた。
「そっか・・・。」
リコの髪をなでる。
柔らかい長い髪がするりと指の間をぬけ、くすぐったい感触が指をなぞる。
「あの後どうなったかなんて分かんないっすよね?」
「後で知ってる人に話を聞きましょ。今は、ゆっくり休んで。」
「いや、充分休んだから・・・いえ、そうします。」
俺は充分に元気だったが、眠っているリコを見て、ヤミンの言葉に甘えることにした。
俺の膝の上で眠っているリコの目尻が真っ赤だ。
それでも、とても安らかに眠ってる。
良かった。
リコが無事で本当に良かった。
ようやく、追いついた。




