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面倒のいいおっさん冒険者

「何で冒険者ギルドに来ないのよ!!」

 宿に帰ってくるなりヤミンに怒られた。


「えぇ・・・。」


 俺、何で怒られてるのか解らない。


 神殿に行った後、武器屋が空いてる時間になってたので先に武器を買いに行った。

 そしたら、そこで訓練場を教えてもらったので、早速行ってスキル上げしてたら夢中になって冒険者ギルドに行くのを忘れた。


 忘れてしまったのは仕方ないとして、何で冒険者ギルドに行かなかったのに怒られてるのかが分らない。


「ニキラさんにギルドの場所訊いたって聞いたわよ!」

「聞きましたよ?」

「じゃあ、何で冒険者ギルドに来なかったのよ!ずっと待ってたんだからね!」

 ヤミンはプンプンだ。

「昨日、冒険者ギルドには行くなって言ったじゃないですか・・・。」

 俺はチンプンカンプンだ。

「何わけわかんないこと言ってるのよ!」

 理不尽かな?

「武器屋に行ってもいないし。」

「訓練場に行ってました。」

「どんだけあちこち探したと思ってんのっ!!」

「その・・・冒険者ギルド行ったほうが良かったですか?」

「いいわけあるかっ!!」


 俺、どうしたら良かったの?


「俺、冒険者じゃないですし、街くらい出歩いてても大丈夫ですって。ヤミンさんのほうこそ冒険者なんだから危ないっすよ?」

「なま言うな!」


 ヤミンが俺の鼻を全力でつまむ。

 痛い。


「こっちは1年間以上冒険者やってんのっ。一緒にするないっ!」


 慣れてきたあたりがアルファンって一番死ぬんだよな。

 一番楽しい時期だけど。


「いい? 勝手に出歩いちゃだめよ!」

「ふぁい。」

 ヤミンは俺の鼻を解放すると、肩を怒らせながら自分の部屋へと階段を上がっていった。

「さすがに、ちょっと遅かったから心配したよ。」

 ニキラさんが特に叱りつけるわけでもなく穏やかに言った。

「すみません・・・。」

「あいつ、仲間と別れてからリコと二人でいろんな新人冒険者に声かけたり仕事サポートしてたりしたんだけど、次々といなくなっちまってさ。あいつにしてみりゃ、アンタは大事な弟分なんだろさ。」

 あっちのほうが見た目幼いけどなあ。

「あんまり、困らせてやんなよ。」

「はい。」





 というわけで、舌の根も乾かない次の日の朝一番。

 俺は誰にもばれないようこっそりと宿を抜け出して冒険者ギルドにやって来た。


 ヤミンが心配してくれるのはありがたいが、こっちとしてもリコとヤミンが心配なのだ。


 新人狩りをしているくらいだから敵は新人よりは間違いなく強い。

 ヤミンの強さはよく知らないが、新人1年目が二人だけで勝てる相手ではなさそうな気がする。


 俺はギルドの扉を開け中に入る。

 始めて入った冒険者ギルドは意外と小さかった。

 村の役場っぽい雰囲気だ。事務所って感じ。

 カウンターから離れたスペースに大きな掲示板があって、たくさんの紙が貼ってある。

 多分あれがクエストなのだろう。


「すみませーん。」

 誰もいない受付から、奥の方に声を掛けると、ショートカットのお姉さんが出てきた。

「冒険者ギルドに登録をしたいんですけど。」

「はいはい。新人くんね。私はレモン。これから時々会うことになると思うからよろしくね。ここに入会手続きを書いてね。」


 そう言って、レモンさんは俺に紙を手渡した。

 名前と年齢と性別くらいの簡単な記入欄だ。

 さらっと、記入して紙を返す。

 レモンさんは手際のよい手つきで、俺の冒険者カードを作成する。最後にカードを何かの魔導機械に挟むと、つやっつやの青いクレジットカードみたいのが出来上がった。

 レモンさんは俺にできたばかりの冒険者カードを渡した。


 これが、冒険者カードか。

 青いカードは新人の証だ。


 カードには俺の色々な情報が載っている。


 ケーゴ:ランク外

 軽戦士 Lv2.36070985

 

 才能スキル 【ゼロコンマ】 8.00000000

 能力スキル なし

 一般スキル 【命中】8.98334976

 【回避】10.06997744

 【バランス】1.00000023

 【数学】12.20075997

 【暗算】1.59789002等々・・・・

 技 なし


 って、この数字も小数点が見えるのかよ!?


 カードから小数点以下がはみ出している。

 どうなってるんだ俺の目は。


 と、朝一番乗りしてきた冒険者に声を掛けられた。


「おっ! 新人か?」

「あ、はい。」

 俺は丁寧に頭を下げる。


 相手は、ベテランっぽいオッサン冒険者だ。

 無精ひげで、大剣を担いでいる。

 鎧が結構良い。中堅どこだろうか?


「あら、ガラドさん。早いですね。ちょうど今登録したばかりの出来立て冒険者のケーゴ君です。」

 レモンさんが俺のことを紹介してくれた。

「ケーゴです。今日からこのギルドでお世話になります。」

「俺はガラドだ。」

 気さくそうなオッサンだ。

「で、どんな感じの強さなの? ズブの素人?」

 ガラドは容赦なく訊ねてきた。

「ズブの素人です。」

「あらま。最近、帰って来ない新人が多いらしいから気をつけなよ?」

「あ、はい。」


 と、ガラドの目線が俺の腰に下がっている武器に止まった。

 昨日武器屋で買ったやつだ。


「珍しい武器使ってんな。」

「はい。昨日買ったんです。」


 俺は腰の『鞭』を持ち上げた。


 鞭。

 戦闘用の鞭で、先っぽに、先端の尖ったおもりがついている。


 鞭は【受け】スキルが要らない。というかできない。

 直接攻撃系の武器では一番長い射程の武具だ。

 【回避】とも【命中】とも相性がいい。


 実は、アルファン内では全然強くないネタ武器だった。


 敵に効果的にダメージを与えることのできる『技スキル』がないのだ。

 【束縛(鞭)】と【足払い(鞭)】という鞭ならではの技スキルがあるが、どちらも、成功率は低く、大型モンスターには無効。

 そして何といっても、どちらの技スキルも相手にダメージを与えることができない。


 以上が鞭をダメ武器と言わしめる大きなポイントだ。

 

 戦闘において、技スキルの占める役割は大きい。

 同じくらいの強さなら何かの技スキルを1レベル持ってるだけでも戦局を簡単に覆せる。技レベルが10なんてあったら脅威だ。

 いわゆる必殺技に相当するもんだ。


 そんな戦局を左右するような技スキルが鞭には【束縛】と【足払い】しかない。

 なので鞭はアルファンでは人気も実績も無いネタ武器だった。


 ちなみに俺のスキルリスト。


 【パリィ(鞭)】 0.74989655

 【閃(鞭)】 0.59878752

 【牙突(鞭)】 0.66987987

 【旋風(鞭)】 0.22559797

 【竜巻(鞭)】 0.11524587

 ・・・


 鞭の技スキル、山ほどあんねん。


 しかも、どれも微妙に高いし。

 タオル振ってたからか?

 これって、多分アルファンにもあったんだよな?

 500万DLあって、誰も見つけられんかったのか? 店売りの武器のスキルやぞ?


「鞭なんて良く扱えるな。」

 ガラドが俺の鞭をまじまじと見ながら言った。

「それが、まだ関連するスキルを1つも持って無くて。」

「ありゃ、そうだったか。」

「昨日も訓練場に行ったんですけど、【鞭】を教えられる人は居なくって。ガラドさん、【鞭】系のスキル教えられる人知りませんかね?」

 この手の情報は冒険者から得るのが一番早い。

「お前が行ったのって、すぐそこの訓練場だろ? 街の西にある訓練場には行ってみたか?」


「西の訓練所!?」


「訓練所と言ってもスカウト系の技術を教えるところだから、戦闘系の技術がどのくらい教えられるか分らんが、【鞭】ならワンチャンあるかもしれないぜ。案内しようか?」

「お願いします!!」

「ガラドさん、ついでに必要な所案内してあげてくれませんか? 最近新人の行方不明が多いですから、どういうのが危ないかも仕込んであげてくれません?」と、レモンさん。

 訓練場だけで良いんですけど。

「了解。俺も可愛い後輩がこれ以上居なくなるのは嫌だもの。きっちり護衛して、いろんなところにこいつの面通してやるよ。」

「お願いします。」

 いや、訓練所教えてくれるだけで良いんですけど・・・。




 というわけで、冒険者登録を済ませてカードを受け取った後、俺はガラドに案内されて街を巡っている。

 訓練所まだかな?


「この酒場も、冒険者たちがたむろってる。さっきの酒場がメンツ的に飲みにくい時はこっちに来な。他は冒険者のなりだと敬遠される。あ、親父、コイツ、ケーゴ。今日から冒険者だ。憶えておいてやってくれ。」


 こんな感じで、いろんな店をもう8件目。


「あの・・・訓練場はまだでしょうか?」

「ああ、もうすぐもうすぐ。」

 さっきもそんなこと言ってた。

「ここだ。ここが言ってた訓練所だ。」

「おお!」

 やっと着いたぜ!


 ガラドの後について訓練場の門をくぐる。

 中は受付だけの小さな部屋だった。受付の脇には地下に続く階段がある。

 受付で手続きをして使用料金を払うと、階段を地下へと降りる。

 地下には掘りぬかれた広いスペースがあり、すでに何人かの冒険者らしき人たちが何かしらを教えて貰っていた。


 地下で少し待っていると後ろから声を掛けられた。

「【鞭】を習いたいってのはお前かい?」

 何かヤバそうな女の人出てきた。


 ボンテージっぽい服を着てるけど、中身がおばちゃんだ。

 ふとましい。ってか太い。

 手に鞭を持っている。


「【鞭】スキルを教えてくれるんですか?」

「ああ、そうだよ。」


 おっしゃ!

 こんな簡単に【鞭】を憶えられる訓練所が見つかるとは。


「あたしゃ、レイチェリオンだ。嬉しいねえ、久しぶりだ。【鞭】を使いたいなんて奴が来るなんて。」

「えーと、ケーゴです。よろしくお願いします。」

「任せな! アンタを完璧な女王様にしてやるよ!!」


 いや待て。

 戦闘用の【鞭】スキルを教えてくれるんだよな? ここ。


「そろそろ、俺、帰るわ。」

 脇で座って俺の様子を見ていたガラドが腰を上げた。

「あっ。今日は色々付き合っていただいてありがとうございました。」

 と、その場を去ろうとしたガラドがふと思い出したように俺を振り返った。


「そうそう。ところで今日、午後ヒマ? ちょっと手伝って欲しい事があるんだけど。」


「え・・・まあ、特に訓練以外にすることないのでいいですよ。」

「知り合いの頼み事で、荷物を運んでもらう人足が居るんだ。ちょっと力を貸してくれない? 飯奢るからさ。」

「もちろん。色々付き合って貰いましたし協力します。」


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