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カリストレム

 お腹減った。


 今日は村を出発して4日目。

 カムカが用意してくれた携帯食は二日分しかなかったので、カリストレムに到着する前に食い切ってしまった。

 本当は多少遅れても二日で着けるはずだったんだが、途中で狼に襲われた。

 狼はアルファンではそこまで強くないが、群れで狩りをするので初級レベルには少し不安な相手だ。

 だけど、一応こちらは現在【回避】10レベル持ち。

 簡単にはやられない。

 倒せないけど。


 そして、簡単にはやられないとなると、俺の中のレベルアップ効率の悪魔が囁くのだ。


『これは、スキルレベルを上げるチャンスだ。』


 と。


 そして、タオルで一晩中やってもうた。

 最後のほうはちょっと本気でヤバかったけど、危なくなればなるほどレベルアップ効率が上がるのよ。

 そうなると、燃えちゃうよね?

 狼たちが疲れて撤退するまでレベル上げしちゃった☆


 そんなわけで、日中はゴリゴリに寝て、そして夜は狼をタオルで叩いてで、4日目の夕方にようやく傷だらけでカリストレムに到着した。


 カリストレムは広かった。

 ランブルスタの村より大きい城壁を持っているにもかかわらず、その外側にまでカリストレムに出稼ぎにきた移民たちの住まいが広がっていた。


 ファンタジー世界によくあるアノ街だ。


 草原の真ん中に城壁に囲まれた円形。

 川が街を横切って流れている。

 街からは街道が3方に伸びている。

 散々アニメやゲームでよく見かける形状の街だけれど、こうして現実のものとして見ると感慨深い。

 モニター越しにずっと見てきた街だったからこそ、いっそう感慨深いのかもしれない。


 アルファンのカリストレムにも来たことがあるが、ゲーム内のカリストレムはここまで広くはなく、ゲーム用にデフォルメされたコンパクトな街だった。

 まさかこんなに大きな街だったとは思わなかった。


 城門で兵士たちのチェックを受け、街の中へと入る。

 特にめんどくさい揉め事が起こるわけでもなく、街の中へすんなり入れてもらえた。


 ランブルスタと違って、城壁で囲まれたカリストレムの街の中はとても綺麗だった。

 道は石畳で、建物も壁の中の物は石造りだ。

 行きかう人もまた貴人のようだ。

 代官山に初めて出たときの感じ。


 真っ先に冒険者ギルドに行くつもりだったが、もう日が傾いてしまっている。

 今日はまず飯と宿だ。


 スージーが銀貨をくれたおかげで余裕はある。

 ほんと助かる。

 スージーありがとう。


 アルファン知識で知っていた『茅葺き亭』という一番安い宿を目指すことにする。

 宿にはこだわらん。

 ランブルスタの俺の寝床にくらべたらどんな板の間も快適な寝床だ。

 ここ数日の仮眠レベルの野宿でも特に身体は痛くない。

 少年ケーゴの不遇時代をなめんな!

 って、よく考えたら、前世も結構な頻度で椅子で寝てたわ。


 街の人たちに聞いて、茅葺き亭にはすぐにたどり着くことができた。


「いらっしゃい。」

 カウンターで本を読んでいたでっぷりとしたおばちゃんが顔を上げてこっちを睨んで来た。

「突然、すみません。今晩、部屋、空いてますかね・・・。」


 窓口で直接宿を予約するのって初めてなんですけど・・・。そんなやり口、テレビの旅番組くらいしでしか見たことないのでめっちゃ緊張する。


 おばちゃんの座っているすぐ後ろの壁には強盗撃退用になのか、大きなバトルアックスが掛けられている。

 ちょーこわい。


「空いてるよ。先払いで銀貨8枚ね。飯は別だよ。」

 やっす!

 俺は、腰の袋から銀貨を取り出して支払う。

「2階の一番奥を使っとくれ。」

 そう言って、おばちゃんはカウンターの脇の階段を示した。

 チェックインとかは無いんだろうか?

「あんた、冒険者志願?」おばちゃんが訊ねてきた。

「え? 分かります?」


 ひょっとして、俺、冒険者らしい風格でもあるんだろうか?


「わたしゃ、ニキラってんだ。もともと冒険者だったんだよ。だからこの街に来てでっかい夢つかんでやろうって冒険者は見りゃすぐわかる。」

「そんな俺、ギラギラしてますか?」

 思わず訊ね返す。


 俺の中の熱いパトスが漏れ出てしまっているのだろうか?


「はっ!ギラギラはしてないねぇ。」

 してなかった。


「でも、ワクワクしてるだろ。」


「あー。」

 そっちが漏れてるのはなんだかとても恥ずかしい。

「新人冒険者は大歓迎だよ。」

「あ、はい。しばらくお世話になります。」

「うちは安いからね。若手の子らがたくさん・・・いや、何人か泊ってるよ。」

 ? 何か含みのある言い方だな。

「あんたから左の方の仕切りの向こうが軽食の食べれるスペースになってる。簡単なもんでいいんなら作ってやる。ただし、銀貨1枚。外で食べたほうが安いってのは憶えとき。」


 そういうのわざわざ言わないほうが良いのに。

 マディソン商店でのお金にギスギスな生活が長かったせいで、条件反射的に業務改善項目を提案したくてしょうがない。


「あと、別に飯を頼まなくてもそのスペースは使って良いからね。よく宿泊中の若手たちが情報交換をしてる。若手同士だとギルドで話すより話しやすいこともあるだろうしね。」

「そうなんすか。」

「今も先輩がいるから挨拶しとくといい。」

「あ、はい。」


 先輩冒険者・・・。

 挨拶しとかんと今後に響くよな。

 ちょっと緊張する。

 いい人だと良いのだけれど・・・。


 ニキラさんに礼を言うと、階段を上がらずに共用のスペースへ入る。

「こんにちは・・・。冒険者のかたが居ると聞いてご挨拶にきたのですが・・・。」


 仕切り板をまわって中に入ると、いくつかあるテーブルの一つにぼんやりと酒を飲みながら座っていた小柄な女性冒険者が俺のほうを見て驚きの声を上げた。


「ケーゴ!?」


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