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ケーゴにかかる世界

「で、お前たちはここに乱入してきたと?」

 ルスリーが正座して下を向いているリコとヤミンの前に仁王立ちして、二人を問い詰めている。


「ごめんなさい。まさか王女殿下と大事な話をしてるなんて思わなかったんです。」ヤミンが青い顔で言い訳をした。

「勝手にルナちゃんとケーゴが二人きりで逢引してるなんて酷いこと思い込んで・・・本当にごめんなさい。」リコも真っ赤な顔で謝った。

 俺もなんかすごく申し訳ない。

「違うんです。もともとリコは関係なくて私が勝手に勘違いして・・・。」

「でも、私もルナちゃんを信じなかったのはいっしょで・・・。」

「お前ら、そんな事どうでもよい。」ルスリーが苛立った様子で怒鳴った。「いったいエリーは何をしておったのか!!」

「「ごめんなさい。・・・」」リコとヤミンは同時に謝った。


「二人とも気にしないでいいの。」ルナがルスリーの隣に出てきて二人の前にしゃがみこんだ。「だって、二人の言う通りだもん。」

「「え?」」 リコとヤミンがルナの発言に顔を上げた。


「私、ケーゴの弱み握って、私とつき合って欲しいってお願いしたところだったし。」


 え゛っ?


「ね? ケーゴ。そう言えば返事がまだなの。」

「今っすか?」

「うん。」ルナはニッコリ笑った。

 なんか、ちょっと怖い。

「今、聞きたいの。」


『うん、エルナちゃん、ごめんね。後にしてもらえるかな?』


 ナイス! 神!!


「神様は黙ってて欲しいの!」

『そうも行かないんだよ。そういうのは世界を救ってからにしてくれない。』

「ちょっとの時間だけだから待って!」

『それもあるんだけど、今ケーゴくんが使い物にならなくなると世界が間違いなく滅んじゃうのよ。』

「?」ルナが突然の神の言葉にキョトンとする。

 てか、俺もどういうことか知りたい。


「す、すみません・・・その喋るトーテムポールは何ですか?」ヤミンが恐る恐る割り込んできて尋ねた。


『あ、僕、神。』

「「えっ?」」

『今、神託中。』

 リコとヤミンが困ったようにこっちを見た。

「本当だよ。今、みんなで神託受けてたところ。」適当にアサルに話を合わせて答える。実際にそうだし。

「「えええ!!」」

 リコとヤミンの顔がどんどんと蒼白になっていく。

「そ、そう言えば、露店の人が世界を救う神の依代だみたいなこと言ってた・・・。」

「たしかに、世界の終わりから守ってくれる守り神だって言ってた・・・。」


 リコとヤミンがかってに納得し始めた。

 すげえな、【天啓】。

 アサルの言うこときちんと聞いてトーテムポール買ってきておいてよかった。


(いや、僕もきちんと手続き踏んでおいて良かったと冷や汗かいてる。)

 アサルがトーテムポールからじゃなく俺の心の中に直接話かけてきた。

(いま、マジで世界のピンチだから適当に話し合わせてね?)


『ところで君たちは今までの話、何か聞いた?』

「すみません。何も聞いてないです。」

「それどこじゃなかったもので・・・。」

 リコとヤミンはトーテムポールに向かってうやうやしく土下座をしながら答えた。

『それは良かった。悪いけど、ちょっと神様、ここの人たちにお願い事があるから君たち出ていってもらえるかな?』


「それは危ないことなんでしょうか?」

 リコが顔を上げて神に尋ねた。


「リコ!」

 思いもよらずリコが居座る気満々で答えたので焦る。

『ん。彼らには世界を滅ぼす邪竜と戦ってもらう戦ってもらわねばならぬ。』アサルは怒る様子もなく告げた。


「ケーゴが危ない目に会うんだったら、私も手伝います。」リコが言った。

「私も。」ヤミンも追随した。


『え゛』アサルから神っぽくない驚きの声が漏れた。

「ダメだよ! 邪竜だよ! 危ないんだよ!」俺は慌てて二人を止める。


「私たちはケーゴの仲間です。だから、その、ケーゴを・・・ケーゴの隣で一緒に戦います。ケーゴを守るのは私たちです。」リコは俺を無視して神に直訴した。

「みんなの中に【ウィークポイント】を使える人はいますか? 弓を使える人は? 私たちはケーゴの仲間です。絶対に力になってみせます。」ヤミンも神に向かって言った。

「お前ら、勝手に乗り込んできておいて、ようそんな大きい口が叩けたもんじゃのう。」ルスリーが二人のわきまえない行動に怒り心頭の様子でリコとヤミンを見下ろした。

「二人が参加できないなら私も参加しないの。」突然、ルナが言い出した。

「おい、ルナ!」ルスリーが驚いてルナを振り返る。

「ルナまでそんな事言い出さないで!」俺も焦ってルナに抗議する。


『・・・・まあ良いよ。その代わり死んでも知らないからね?』

「アサル!」


(名前呼ぶなし!)頭の中に声が響いた。

(でもリコとヤミンは俺達ほどは強くない。)俺は頭の中でアサルに文句を言った。

(悪いけど、時間もなくなってきて背に腹は代えられないんでね。)アサルは心底焦った様子で答えた。


「覚悟はできてます。私はケーゴと一緒に戦います。」

 リコは神相手にも引かない構えで言い切った。


『時間がないので手短に説明するね。』アサルはリコの決意に満ちたセリフなど聞こえていないかのように話し始めた。『君たちはこれから3時間後、王城の前に復活する邪竜を倒さないといけない。』


「「「3時間後!?」」」


 この場にいた全員が異口同音に叫んだ。


「なんで、そんな急性なんじゃ! もっと時間があっても良かったろうに!」ルスリーが大声で文句を言った。

『もともとは時間には余裕があったんだよ。それをそこのお嬢ちゃんたちが乱入したから、一気に世界の終わりが近づいたの。』

「ちょっと! そんな言い方ないでしょう!」俺は思わず叫ぶ。

『でも実際そうなんだ。この世界は微妙なバランスで成り立ってる。彼女たちは本来関わってはいけない人たちだったんだ。』

「「ご、ごめんなさい・・・。」」アサルの思わぬ宣告にリコとヤミンが青い顔で謝った。

「二人は何も悪いことなんてしてない! その邪竜を俺たちが倒せばいいだけの話だろ!」

 勝手に神託に来たくせに好き勝手に言いやがって!


『そんな怒らないでよ。僕は訊かれたから事実をただ答えただけだよ。それに、もとより君になんとかしてもらわないといけない。』

「さっき、神様、ケーゴが使い物にならないと世界が滅ぶって言ってたの。そのこと?」ルナが尋ねた。

『そ。邪竜を倒すのはケーゴくんでなくてはならないんだ。』

「どういうことじゃ?」ルスリーが尋ねた。

「僕やエデルじゃダメなの?」エイイチも不思議そうに首をかしげた。


『邪竜は世界崩壊時計が0になった瞬間にたった一箇所だけある弱点を攻撃しないと倒せない。』

 

 さっきアサルが言ってた「神が作業終えた瞬間にスイッチを押す」って話か。

『言っとくけど凄くシビアだからね。小数点以下までピッタリ合わせてくれないとダメだから。言っちゃ何だけど失敗する可能性のほうが全然高い。』

「やりますよ。」俺はリコとヤミンを見た。「俺がリコとヤミンと一緒に世界を救います。だから、二度と二人が悪いかのようなことは言わないでください。」

『分かったよ。』

「ちょ、ちょっと待ってください。それは世界崩壊のカウントダウンがあと3時間で0になるって言ってます?」エイイチが泡を食った様子で訊ねた。

『うん、そう。これから邪竜復活に向けて分刻みカウントが進むようになっていくからね。まあ、戦わない事を選べば、三十分くらい世界が終わる時間は伸びるかもしれないけど。もちろん、ケーゴくんが失敗した場合も世界は終わる。』

「分かりました。俺が世界を救います。」俺は答えた。

「随分と余裕じゃな。」ルスリーが心配そうに俺を見つめた。「大丈夫か? 強がってるだけじゃないだろうな?」

「さっきまで別ジャンルに迷い込んで手も足も出ない感じだったんで。それに比べたらよっぽど気が楽です。」

 リコとヤミンは俺が何を言ってるのか分からない様子だったが、転生者のルナには通じてしまったらしくものすごく睨まれた。


「それに、ぴったりタイミングを合わせられるのは【ゼロコンマ】を持ってる俺だけですから。」

 


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