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相談

 昨日からリコともヤミンとも顔を合わせていない。

 てか、互いに避けてる。

 昨日の夕食も別々にした。

 俺は今日の朝ごはんも食べに降りずにやり過ごしている。

 ぶっちゃけ昨日やらかして恥ずかしいので、もうこの宿の食堂は使いたくない。


 ホントはリコのこと考えなきゃいけないんだけど、ヤミン泣かせちゃったのもあって全然頭が働いてくれない。


 布団の上で悩んでいると突然部屋の扉がノックされた。

 恐る恐る扉を開けると、そこには宿のボーイが立っていた。彼は王城から来客が来ていることを告げて去っていった。


 俺は何事かと、着替えて下に降りていく。


 宿の一階に降りていくとエイイチが待っていた。

 そうか。ルスリーの言っていた快気祝いの迎えだ。

 エイイチが迎えに来るまで完全に忘れてたよ。


 こんな時にとは思ったが約束してしまったものは仕方ないので行くことにした。どうせ宿に居たって考えなんてまとまらない。

 それに、エイイチはモテそうだから相談してみたら良いアドバイスをくれるかもしれない。


「どうしたの、元気ないねぇ。」降りて来た俺を見るなりエイイチは言った。

 俺、そんなに顔に出てる?

「ミロクさんのところに行く前に、ちょっと相談したいことがあるんだけど良いかな? あと、正直ちょっと腹減ったから小腹に入れたい。」

「早く着くつもりで迎えに来たから余裕はあるけど、遅れるとルスリーがうるさいから少しだけだよ。」エイイチは頷いた。


 俺はエイイチと連れ立って、近くにあるカフェっぽい食堂にやってきた。

 昨日、晩ごはん食べれる場所を探して見つけた。

 エイイチは飲み物を頼み、俺はパヤパヤっていうスパゲッティみたいな王都名物の麺料理を注文する。


「この後、ケーキ食べるんだからね。」

「朝からなんも食べてないんだよ。ちょっと食べさせて。」

「どうしたのさ。今日すごく暗いよ。」

「そう。」

 俺はぐってりと机に突っ伏した。

「本当にどうしたの? 君、黒い羊を壊滅させて戦争を止めた英雄でしょ? マジックアイテムの件でそんなに怒られたの?」

「1週間勾留された。」

「うは、まじか。王家の秘宝使ったからそりゃそうか。」

「話したいのはそんなことではなくてね。」俺はそれて行きそうな話を修正する。

「まあ、そうだろうね。」

「その、リコに・・・リコ憶えてる?」

「憶えてるよ。モンスター育成上に一緒に行った時にいた可愛い子でしょ? 猫耳じゃないほう。」


 やっぱ、可愛いよな、リコ。

 なんで俺の事好きなんだろ。


「なんか、告白された。」

「おお、ついに。」エイイチが嬉しそうに声をあげた。

「ついに?」


 どういう事?

 もしかして、リコ、エイイチに相談とかしてたん?


「いや、見るからに丸わかりだったんだけど。てか、あの時の馬車の中でも告白されてたようなもんだったよ。」

「えぇ? そんな話してないよ。」

「プロポーズ級の発言だったと思うけどな。こりゃあリコちゃんも大変だ。」

「お、おう?」

 マジで何の話だ?

「で、悩みってなに? ひょっとしてリコちゃんよりエデルのほうが良いとか?」エイイチは尋ねた。

「何故、またルナの話がでてくんのか?」

「え? だって、エデルが君にすごくなついてるって聞いたよ?」

「誰によ?」

「いや、ルスリーとエルマルシェ。」

「それ、その二人が適当な事言ってるだけだよ。」

「そうかなあ?」なんかエイイチがものすごい目で俺のことを見た。

「どうして、そこまで疑いの目で人を見ることができるのか。」

「君だけは特別だよ。」

「失敬な。」

「エデルって、君と会うまであんまり、普段の格好でいることってなかったらしいんだ。俺もこの間のエデルの快気祝いの時までエデルガルナがあんな娘だったなんて知らなかったし。」

「そうなの!?」

「君とクリムマギカに冒険に行ってから、普段の自分の格好で人前に出るようになったみたいだよ。ルスリーもエリーも喜んでた。」


 そうだったのか。

 じゃあ、二特もエリーも普段着のルナとはこないだまでほぼ面識なかったってことか。

 エリーがルナを邪険にしてたように見えた理由が今更分かる。

 そりゃ、今までエデルガルナしか見たことなかったのに、突然怪我した普段着のルナが帰ってきたらビビるわな。


「それはリコとヤミンのおかげだよ。それにそれって関係あるの?」

「そりゃそうだよ。君が普段の格好のほうがフランクに話してくれるから、普通の格好するようになったってエデルが言ってたよ。」

「そうなの?」

 心当たりがないわけでもない。

 でも、エデルガルナの格好だとルナ自身口数減って堅物になるからそのせいやぞ。

「えーと。何ひとつ言ってること伝わってなさそうなんだけど。」エイイチが眉を潜めた。

「ん? ルナが話しやすい格好に気づいたって話だよね?」

「うん。違うよ? 君は自分が思っている以上にモテてるって話。」

「なんで、そんな話に・・・。」


 あれ? そういや、こないだちゅってされたぞ?

 いや、まさかな・・・。


「リコちゃんに告白されたのは分かったけど、何を相談することがあるのさ?」エイイチが話を戻した。

「俺、どうしたらいいかな。その、結構迷ってる。」

「え゛っ!? 嘘でしょ!? 」エイイチが驚いて立ち上がった。「君、リコちゃんの事好きでしょ? なんでOKしなかったの?」

「何故、みんなそんなに驚くのか?」

「みんな?」

「ヤミンにも同じ反応された。」

「えっ!? ヤミンちゃんにも話したの!?」エイイチが絶句する。

「えっ!? あ、はい。」

 しまった。これは言うべきじゃないやつだった。

「それは流石にまずいよ・・・。」エイイチの視線がすごく冷たい。

「反省してます。」


 エイイチも分かってたの?

 なんで? ヤミンとも一回しか会ったことないでしょ?


「君って前世で・・・いや、やっぱいいや。」

 エイイチは何か言おうとしてやめた。

「で、僕にリコちゃんにどう返事したらいいかを相談したいわけ?」

「うい。」

「そこまで君のこと知ってるわけじゃないからね。君が何を悩んでいるのかもよく分からない。そういう相談事をする相手はいないの?」

「そういう相談? こんなん二度の人生で初めてっす。」

「いや、普段真面目な相談事は誰にしてるの?」


「リコとヤミン。」


 エイイチが頭を抱えた。

 聞いといて何やねん。


「他にはいないの?」

「他。」

 俺は黙ってエイイチを指差す。

「俺以外で!」

「ルナかな。後エリー?」

「お前、その二人にも絶対相談しちゃダメだぞ?」


 ルナは万にひとつの可能性があるのかもしれんけど、エリーはなんでだ?


「あ、そういえば、もう一人いた。ルスリー。」

「う、う〜ん・・・その選択肢だとやっぱ俺なのか・・・まいったなぁ。」エイイチは頭を抱えた。


 注文の品がが運ばれてきたので、少し会話を中断する。

 エイイチは少しだけ運ばれてきたドリンクで喉を湿らせると俺に尋ねてきた。


「リコちゃんの見た目は好きなの?」

「うん。好き。可愛いと思う。」

「・・・・そういうのは堂々と言えるのな。」

「?」

「中身は? 実はリコちゃんにはちょっと嫌なところがあるとか?」

「とんでもない。すごい良いやつだよ。たまに怒るけど俺が悪いし。リコが悪いことなんて一度もないよ。」

「じゃあ、他に好きな子がいるとか?」

「うんにゃ。」

「リコちゃんの行動にイラッとするところがあるとか。」

「う〜ん? 訊かれるとないなぁ。その時々ではあるのかもしれないけど。」

「それで何故、付き合うくらいせん。」エイイチは憮然として言った。

「いや、今の関係が当たり前過ぎて。家族みたいに大事というか。恋人として考えたくないというか。」

「別にそれでも試しに付き合ってみたらいいんじゃないの?」

「その、でも、なんてか、俺、転生者なわけじゃん?」

「なんで、転生者が出てきた?」

「リコのことそう見てるのって、前世の自分なんじゃないかって。それって、なんか気持ち悪いっていうか。」エイイチと無理やり話したせいか、自分の中で一番気になっていた部分が輪郭を帯びてきた。「なんての? もともと家族だと思ってたのに外から前世の俺が半分混じっちゃったから、女として見るようになったんじゃないかななんて・・・。」

「・・・・思ったより根深くってびっくりしてるよ。悪かった。もっとダメな感じの人かと思ってた。」

「お、おう・・・?」


 エイイチはひとつため息をつくと、ドリンクをゆっくりと飲んで、そして俺に言った。


「でも、そんなのはどうでも良いことだよ。君は自分がかっこよくなりたいなんて思わないほうがいい。転生した自分が混じったもなにも、話を聞いてる限りじゃ、僕には君の気持ちなんてひとつしか見えないもの。」


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