瓦礫に沈む
俺は瓦礫の中で目を覚ました。
遺跡が崩れたのだろうか。
仰向けに転がっている俺の視界をいくつもの大きな岩が塞いでいる。
岩の隙間からは夜空に浮かぶ大きな月が覗いていた。
首を回そうとするが、それすら叶わない。
体を岩が押しつぶしている。神経が死んでしまったのかもしれない。
寒い。
直感的に分かった。
俺はこれから死ぬのだ。
やりきった。
それは良かった。
それでも無念だ。
もう、瓦礫からはみ出した右腕しか動かない。
下半身に至ってはあるのかも分からない。
絶望が心を埋め尽くしていく。
クリムマギカで蹴られた時とは違う。
意識はあの時よりもある。
でも、動かしていないのに体が重い。
重りのような体が大地の海の底へと意識を沈めようとしているのが分かる。
沈む意識から這い上がろうともがいても、意識が大地に溶けていくのを抑えられない。
それでもなにかないかと探る。
もがく。
右手で周囲の物を探る。
少しでも、何か・・・
右手はただの辺りの石を掴むばかりだ。
都合の良い奇跡なんて転がっている訳がない。
これはただのあがきだ。無駄なあがきだ。
それでも俺は諦めたくなかった。
別に一回無くした命だけどさ。
俺はもっと生きたい。
だって、絶対にリコが泣くんだ。
リコを泣かせたくない。
ランブルスタを出発したあたりから、ずっとおかしかったし。
戻って話を聴いてあげないといけない。
だって、俺はリコが泣かないように、寂しくないように、『世界に誰もいなくなっても俺だけはずっとそばにいる』って約束したんだ。
大事な約束なんだ。
神託の後、俺はリコを泣かせた。
リコは俺を置いて行ってしまった。
もう二度と嫌なんだ。
瓦礫の隙間から輝く夜空の月が見える。
俺はもう地べたに潰されて足掻くことすらできない。
沈みゆく意識の中、
溢れてくる涙を拭うこともできず、
空を見上げて俺はただ思う。
ああ、畜生。
なんて綺麗な月なんだ。
・・・・リコもどこかで見ているだろうか。
だったらいいな。




