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祭りの日

 祭りの日。


 まだ日が沈み切っていないにもかかわらず、村の広場にはすでにたくさんの灯りがともっていた。

 すでにいくつかの露店が開店している。

 隣村や街からも人が集まってきいて広場は滅多に見ない大賑わいだ。

 うちの店は魔導力の手配だけで露店は出さないので割と暇だ。


 この村では滅多に見られることのない大勢の人の流れと騒がしさをなんとなく見守る。

 村の人たちは参加者も運営もみな楽しそうだ。


 昔はリコと来てたんだよな。

 今思えばまるでリア充のようだ。傍から見たら俺、完全な陽キャじゃん。

 リコもせっかく可愛いのに好きなやつとかおらんかったんだろうか?


 一人で祭りを彷徨うのも何だったので、俺はにぎやかな広場から少し離れた。

 手持ち無沙汰なので、さっき祭りの受付で貰ってきた闘技会で使う木刀を振って手へのなじみ具合を確認する。

 タオルと違って振りにくい。

 素振りしながら【命中】スキルの上昇具合を確認。

 やっぱ効率が悪いな。

 【剣】にもレベルが流れちゃってる感じだ。


 タオル装備時との違和感みたいのを消すために、俺はいろんな方向に剣を振ってみる。

 重さと柔軟感がタオルと違うので、左手をぎゅっと閉めとかないと剣がすっぽ抜けそうだ。

 昔はリコと剣の稽古をしていたわけで、それほど時間をかけることなく剣を振ることに慣れ始めた。

 この感触なら問題ないかな?


 ある程度剣の振り方が身体になじんできたころ、職場のお姉さま方が俺を発見して近寄って来た。


「ケーゴ、頑張ってね! 私たち応援してるからね。」

 両手に屋台の食べ物を持ったマリアナさんがありがたい言葉をかけてくれる。

「ありがとうございます。頑張ります。」

「スライムいっぱい叩いてたもんね!」

 ヌサさん、それは言わんでください・・・。

「大丈夫よ、去年よりは絶対強くなってるから。きっと勝てるわ!」

 クロエさんも俺を元気づける。


 ちなみにクロエさんの言ったように去年も俺は出場しいてる。

 一回戦でリコに血だるまにされて終わった。

 なので、去年の途中から一本取ったら終わりってルールになった。


「おう、お前ら、こんなところで雁首揃えてなにやってんだい。」


 と言って現れたのはスージーとカムカ。

 カムカ、こんな時までスージーの太鼓持ちやってんのな。


「どうだい、ケーゴ? 優勝できんのか。」スージーがニヤニヤとしながら訊ねてくる。

 俺が優勝できるわけないと思ってやがるな、コレ。

「まあ、見ててくださいよ。優勝してみせますよ。」

 俺は力こぶを作るができない。

「貧相な腕で何言ってんだか。」

「その代わり、優勝したら約束守ってくださいよ?」

「おうよ。商人は信用が命だ。約束は守るさ。まあ、頑張りな! 明日の業務に響くほど無理はすんなよ。」

 そう言ってスージーはカムカと一緒にどっかへ行ってしまった。


「やっぱ、優勝したら、ケーゴは出て行っちゃうの?」ヌサさんが訊ねてきた。

「ごめんなさい。俺、冒険者になりたいんっす。」

「そっかぁ。それだとちょっと応援しづらいなあ。」

「大丈夫よ。さすがにリックとレックには敵わないでしょ。」マリアナさんが言う。

 前評判的に正しいご意見。

「それにマッゾ君も結構強いらしいわよ? 【剣】7レベルなんですって。」


 クロエさんから耳寄りな情報。

 今、あいつそんなに強いのか。

 こないだまで5レベルとか言ってなかったっけ?

 注意しておこう。


「じゃあ、安心して応援するね!」

 それはそれで、どうなんすか。ヌサ姉さん。

 先輩たちは俺に一通りの応援の言葉をかけ終えると、祭りに戻って行った。


 また一人になった俺は、木刀を腰紐に刺すと、闘技会のトーナメント表を確認しに行く。

 広間の片隅にある運営のテントにむかう。

 テントの前にはトーナメント表が張り出され、俺の名前も書き込まれている。


 今回の参加者はたったの7人。

 俺は3回勝てば優勝だ。


 俺の一回戦はロカっていう俺より2つくらい年下の男の子。

 闘技会の第一戦目だ。

 ここはまあ問題あるまい。


 問題は次の準決勝。

 リックとレックの勝者が俺と対戦だ。

 ここが山場だろう。


 マッゾは反対側の山のシードだ。


 村長息子パワーで1回戦からマッゾと戦うことになるんじゃないかと思ってたから肩透かしだった。

 一回戦で優勝候補のリックとレックが当たちゃったあたり、厳選にクジ引いたっぽい。

 こんなちっちゃな闘技会なんて、盛り上がるようなヤラセがあってもいいと思うんだけどねぇ。


「おい、役立たず。俺と当たらなかったからってホッとしてるんじゃねえぞ。」


 俺の後ろから低い声で脅すように言ってきたのはもちろんマッゾだ。

 マッコもオマケのようについて来ている。

 俺にかまってないで祭り楽しんどれよ。

 友達おらんのか?


「お前が一回戦で負けても、絶対に引きずり出してみんなの前で死んだ方がマシな目に会わせてやる。俺は約束は守らせるし、俺を舐めた奴を許さねえ。今更どんなに泣いて詫びたってもう無駄だから。」

「そうだ! そうだ! 覚悟しておけ!」

 なんか企んどるのだろうか?

「そっちこそ、決勝まで勝てるの?」

「はっ! リックもレックも逆の山だ。当然だろ。」

「そうだ! そうだ! リックやレックもやっつけて兄者が優勝だ!」

「そうさ、 優勝は俺だ。」

 マッゾは自信満々で言い放ったが、リックとレックに対しては強がってる感がなんとなく伝わってくる。

「そんなことより、一回戦で負けたからって逃げるなよ。 大会後にお前との決着をつけるためのエキシビションを用意しておいてやるから。お前が言い出した事なんだから逃げ出すなんて許さねえからな。」

 マッゾはそう言って不敵に笑うと弟を連れて去って行った。

 エキシビジョン?

 やっぱ、何か企んどるらしい。


 まあ、優勝して、そのままバックレるけどな。


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