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別行動

「こっちは順調に作戦が進んでいるの。黒羊の洗脳の魔導具を壊せば解決なの。」ルナが虚空に向けて話しかけている。

「そうですか。わかりました。作戦を急ぎます。」エリーもルナと一緒なって誰もいない空間に話しかけている。

「みんなにも頑張るように伝えて欲しいの。」


 ルナとエリーは今、遠く離れたルスリーと会話をしている。

 感覚共有のスキルだか魔法だかだそうな。

 二特のみんなは今戦場にいるらしい。

 ぴーちゃんも俺たちが城に入った後、二特の援軍に飛んでった。速いからもう到着してるだろう。


「すまない。待たせた。」

「戦争が始まったみたいなの。苦戦してるみたい。」

「エヴァーレインの兵たちの様子がおかしいらしい。コルドーバの時に襲ってきた連中と同じように痛みや死を恐れずに向かってきているようだ。」

「ルスリーちゃんはこの戦争も黒羊のせいじゃないかって言ってる。」


 たぶんそうなんだろうな。

 オールコーン山はアアルとエヴァーレインの境界に位置していて、エヴァーレインの首都から割と近い。

 もしかしたらエヴァーレインの首都がソウルプリズムの効果範囲に入っているのかもしれない。


「早く黒羊を倒さないといけないね。」ルナが言った。

「二特のみんなも心配だ。こっちが上手くいけば戦争が終わるのかはよくわからないけど。」俺も頷く。

 みんなの無事のために俺ができることがある。

 全力でやるだけだ。

「とにかく先を急ごう。」ヤミンが声をかけた。「私たちにできるのはそれだけだよ。」


 俺たちはミュールからの情報を頼りに城の中に侵入し、城内にあるはずの遺跡への入り口に向かっていた。

 俺たちが侵入した辺りには人の気配はない。

 俺たちは誰とも会うことなく、城の中央あたりにある大広間へと到着した。

 大広間の直前で、前方から声が聞こえてきた。


「外の襲撃者の中にケーゴもリコも見えねえ。」


 まじかよ。

 マッゾの声だ。


 通路の陰から先にある大広間を覗くとマッゾと何人かの信者と共に大勢の信者に向けて大声で話をしていた。

 話を聞いている信者はすごい数だ。100人くらい居そうだ。

 ただ、全員が黒い衣装というわけでもないし、武装しているわけでもない。


「小ズルい奴のことだ。絶対に城の中にこっそりやってくるはずだ。大使徒を守りたきゃ、この城の中をくまなく注意しろ。」

 マッゾは信者を前に偉そうに言った。

 

 まいったな。

 遺跡の入り口が城のどこにあるのかはだいたい分かってる。

 だが内部に侵入した後のプランがまるでない。

 俺たちは魔導装置が遺跡のどこにあるのか知らないのだ。

 ミュールも遺跡の中の情報までは持っていなかったのだ。


 うっかり遺跡内でこの信者たちと追っかけっこになることだけは避けたい。


「二手に分かれよう。」エリーが言った。「陽動と本体だ。」

「じゃあ俺が囮に・・・

「ケーゴとルナで魔導装置を目指せ。」エリーは俺の提案をかき消して言った。「最大戦力を目標にぶつけたほうが良い。」

「私もケーゴを魔導装置に向かわせるのには賛成。現地で何が起こるかわからない。でもケーゴならなんとかしてくれそうな気がする。そうだとしたら、ケーゴを送り届ける役に一番相応しいのは悔しいけどルナルナだと思う。」ヤミンもエリーの案に乗った。

「私たちは逃げ回っていればいいだけだしな。」と、エリー。

「うん・・・。ルナちゃんとケーゴならきっと何があっても大丈夫だよ。」リコも俺を安心させるようにニッコリと笑った。


 俺はルナと目を合わせる。

 ルナは困ったように俺を見た。

 判断するのは俺だ。


「分かった。陽動を頼む。時間を稼いだと思ったら無茶しないで撤退してくれ。」

「ああ、心配するな。お前が育てた私を信じろ。」

「頼りにしてる。」

「ケーゴこそ気をつけてね。【ウィークポイント】をかけてやれないから、無理するなよ。」ヤミンが俺の胸を小突く。

「そっちこそ、怪我とかすんじゃないぞ。」

「・・・気をつけてね。」リコがうつむいたまま言った。

「? ねえ、リコ? どうしたの? 元気なくない?」


「ホントは私がケーゴの背中を守れたら良かったなって。」


 なんだよそれ、嬉しいこと言ってくれるじゃない。

 なのに、そんな元気ない顔しないでくれよ。


「無茶しないで。約束だ。」

 俺はリコを見つめるけどリコが目を合わせてくれない。

「ルナちゃん。ケーゴのことお願いね。」リコはルナに歩み寄って手を握った。

「うん。」

「あちらさんが散開する前に始めるぞ。」エリーがリコを急かした。

「はい。」「おう。」

 リコとヤミンが返事をする。


「リコ。気をつけて。」

「ばいばい、ケーゴ。」

「リコ?」


 なんだろう。

 リコの返事に胸がざわざわする。


 エルマルシェがワザと音をたてて一歩広間に踏み出した。

 俺とルナは慌ててもと来た道を引き返し、別れ道の陰に身を隠した。


「音がした!」

「誰か居る!」

「逃げたぞ。」

 広間から声が響いてくる。


「やっぱり来やがった!! ほら見ろ!俺の言ったとおりだろ!」マッゾの勝ち誇るような大声が聞こえてきた。


「追え!」

「残りは回り込め! 男は捕まえろ。生きたまま大使途のもとに連れ出す。他は殺してしまえ!」


 リコたちを追って、俺たちの隠れている横を大勢が通過していく。

 最後の一人が城の大広間から駆け出していったのを確認して、俺とルナは遺跡の入り口に向けて城の中を進み始めた。


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